Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
154 / 786

第154話

しおりを挟む
 ソルジャータイプ、キマイラタイプ、エンジェルタイプ。
 スペックの低い順に並べるとこうなるが、プレイヤーによってはやりたいプレイ、必要なスペックとの兼ね合いもあって必ず上位機種である必要はない。 フカヤの話は非常になるほどと思える内容だった。

 彼は隠密戦に特化している以上、過剰なパワーもスピードも必要ない。
 求められるのは気配を相手に悟らせないステルス性だ。 その点で言うのであればキマイラタイプの派手な起動音もエンジェルタイプのエネルギーウイングの光も自身の求めるプレイを阻害するノイズでしかない。
 
 ふわわのような例は少ないが、このゲームにおいて上位機種を扱っているからイコール強いの図式が必ずしも当てはまらない理由の一つといえる。
 ヨシナリとしてはこのゲームを楽しむ上で強さは必須とも言えるが、勝ち方、戦い方にこだわるスタイルは個人的に好感が持てた。 どんなゲームでもプレイヤーによっては求めるもの目指す場所は違う。

 ――なるほど。

 得る物の多い戦いだった。 
 その後、似たようなミッションを数回こなしてその日はお開きとなった。
 誰もいないユニオンホームへと戻り、ヨシナリは椅子に座って小さく息を吐く。

 やはり他人と組むのはいい刺激になる。 ツガルやフカヤは敵としてかなり力を入れて分析した相手だが、こうして味方として組むと違った見え方がして面白い。
 特に彼等はラーガストと違ってヨシナリにも理解できるレベルの挙動をしているので猶更だった。

 ツガルは味方としてみると非常に頼もしい。 最初に戦ったときはソルジャータイプだったから分からなかったが、彼の本領は機動力を活かした遊撃戦だ。 
 とにかく戦場を飛び回って味方に足りない物を補おうとする。 後衛が危機なら率先して前に出て敵を引き付け、フカヤの隠密行動の助けになる為に必要以上に派手に動いて敵の目を引いているのもわざとだろう。 戦績で見るなら同ランク帯では平均よりやや下ぐらいだろうが、団体戦での貢献度で言うならトップクラスだ。

 マルメルと同じで居てくれるだけで非常にありがたい存在だ。
 フカヤは隠密特化と言う変わったビルドで正面切っての戦闘では決して強いとは言えないが、彼の存在は知らなければ敵にとって大きな脅威だ。 奇襲が成功すれば確実に一機は葬れる。

 知られた後もいるだけで敵は奇襲を警戒しなければならないので圧をかける事は可能。
 やや癖のある戦力ではあるが、運用次第では非常に強力だ。
 ただ、プレイヤー特化ではあるのでエネミー相手だとやや厳しい印象だった。
 
 ――気配の消し方は参考になったな。

 ステルス装備で電子的にも視覚的にも消えているだけでなく、いかに音などの気配を出さないコツのような話も聞かせてくれたのでそういった意味でも実りのある時間だった。
 ヨシナリはうーんと小さく伸びをして立ち上がる。 時計を見るとまだ少し時間があるのでまた適当にミッションを回してGを稼ぐかと考えていると緊急ミッションが出ているのを見つけた。

 「お、ラッキー」

 他に取られる前に即座に受注。 お決まりの注意が書かれた文面に同意して開始する。

 ――それにしてもこの警告文にも近いのは何なんだ?

 受けると終了まで拘束される事、失敗した場合は二度と受注できない。
 NPCの指示には絶対に従う事など細かなルールが記載されており、末尾にこの文面に納得して遵守しますと同意ボタンを押して完了となる。

 移動する際に妙に重い読み込み時間を経て目的地へと到着。
 機体は以前にも使用した作業機。 重量のある機体なので動きが重く、やや使い辛いが単純作業を行う分には何の問題もない。 空を見上げると以前と同じ巨大な惑星――恐らくユーピテルだ。

 ぐるりと周囲を見回すとあちこちで工事が行われており、何やら施設のような物があちこちで出来上がっていた。 物資の集積場のような物もあれば宇宙港のような施設も見える。
 空を見上げれば以前は綺麗に見えた星空だったが、今は無数の宇宙船が行き交っていた。

 居住区のような物も見えたので建築中の都市といった様子に見える。
 これは一体なんなんだろうか? 改めて見れば見るほどに疑問しか浮かばない。
 シミュレーションの一環なのだろうか? ここ最近は宇宙開発に力を入れているというニュースはよく目にするのでもしかしたらこの仮想空間を実際の環境に見立てて都市開発を行い、本番の作業に反映する。 そんな所ではないのだろうか?

 最初は新マップのテスト運用ぐらいに思っていたがここまで力を入れているのであれば何らかの実利も絡んだ実験か何かではないかと思ったからだ。
 実際、このゲームはとんでもない長さの同意書にサインする事以外は無料でプレイできる。

 課金要素はほぼ皆無だ。 なら運営資金はどうやって捻出しているのだろうかといった疑問を持っている者は非常に多い。 もしかするとこのようなシミュレーションを無数に行い、その結果を企業などに提出して利益を得ているのかもしれない。 資金源の噂としては兵器メーカーからの提供がまことしやかに囁かれている。 トルーパーと同等の機動兵器は現状では難しいだろうが実は武器類に関してはエネルギー系の兵器を除けば実は既存の兵器などをそのままゲームに落とし込んでいるとの事。

 ゲームと現実は違うがある程度の再現は可能。 その為、トルーパーに兵器類を扱わせる事で実戦データを取っているのではないか? 噂の内容はそんな感じだった。
 そんな事を考えながらNPCの指示に従って移動。 今回は建築資材の運搬が仕事のようだ。

 建材を慎重に運びながら思考をこの緊急ミッションへと戻す。
 実際の宇宙開発のシミュレーションであるならそれはそれで面白いとヨシナリは考えていた。
 何故なら将来、本物のユーピテルにこの施設ができるのだからその風景をこうして先取りできるのは少しだけ得をした気分になれる。 

 ――それにしても本当にリアルだ。

 まさかとは思うが本物のユーピテルじゃないだろうな?
 それこそまさかだ。 こことユーピテルの距離を考えれば遠隔で機体を操るなんて真似は不可能。
 ヨシナリのような学生でも分かる常識だった。 そんな事情でヨシナリの結論は宇宙開発シミュレーションだ。 割と国家的なプロジェクトかもしれないので同意書にサインさせるのも頷ける。

 一つすっきりしたとヨシナリは作業に集中するべく余計な思考を頭から蹴り出した。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【なろう490万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて490万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき90万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す

みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための 「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した 航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。 航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。 そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...