Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第354話

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 「く、クソッ」

 完全に待ち伏せされていた。 恐らくホーコートが突出しているのを見て数を減らしに来たのだろう。 武器も取り落としてしまい、足がやられて直立ができない。 
 脳裏に浮かぶのは敗北の二文字。 終わり? こんなにあっさりと?

 始まってまだ十分も経っていないのに? 敵に何の損害も与えずに無意味に脱落?
 驚きと焦燥、屈辱感で頭の中がぐちゃぐちゃになる。 上手く物が考えられない。
 理不尽に叫びそうになったが、それよりも早く別の事態が発生し、彼の思考を強制的に切り替えた。

 銃声。 音から狙撃銃だ。 
 それは狙いを過たず、短機関銃持ちのコックピット部分を撃ち抜く。
 喰らった敵機は即死。 機体はガクリと膝から崩れ落ちるが、それよりも早く背後から現れた別の機体が短機関銃を奪って散弾銃持ちに向けて連射。 ホーコートにとどめを刺そうとしていた敵機は反応が遅れ、咄嗟に向けた頃には無数の銃弾を喰らって穴だらけになる。

 残りのブレード使いが斬りかかりに行くが、味方機――ヨシナリは弾が切れた短機関銃を投げつけ、足元のメイスを拾って掬い上げるように一撃。 投げつけた短機関銃を打ち払ったタイミングで拾って相手の反応を微妙に遅らせた上でメイスを振るったのだ。

 メキリと嫌な音を響かせ敵機がくの字に曲がって吹き飛び、近くの樹に叩きつけられる。
 瀕死ではあるがまだ生きていた。 ヨシナリは無言で拳銃を抜いてコックピット部分に連射。
 敵機は一度だけ大きく痙攣して動かなくなった。 ヨシナリがマガジンを排出し、空になったそれが地面に落ちたと同時に試合が終了。 決着となった。

 
 「いやぁ、お疲れでした。 遠距離、微妙とか言ってましたけど、全然いけるじゃないですか」
 「あ、ありがとうございますぅ。 そちらも凄いです! あっという間に二機倒すなんて……」
 
 場所は変わって待機室。 まんまるはヨシナリの活躍を凄い凄いと褒め称える。
 ヨシナリはちらりとホーコートを一瞥。 彼は呆然としていた。
 
 ――今回は上手く行ったけど、次以降は微妙だな。

 ホーコートとの連携が期待できないと判断したヨシナリは彼を囮にする形で戦術に組み込む事にしたのだ。 突き放せば勝手に突っ込んでいくのは目に見えていたので、ヨシナリとまんまるは少し離れた位置から後を尾ける形で移動。 敵を釣りあげて仕留めようという手で行く事にしたのだが、三機全部釣れるとは思わなかったのでこれは嬉しい誤算だった。

 装備も見たので脅威度の設定も容易く。 仕留める順番を決める判断も簡単だった。
 機体性能は同じなので、Ⅰ型のスペックを意識すれば回避させない、できない間合いとタイミングは良く分かっている。

 ホーコートが痛めつけられている間に背後に回り、まんまるの狙撃を合図に一番厄介な短機関銃持ちを仕留めて武器を強奪。 次に脅威度の高い散弾銃持ちをそのまま仕留め、最後にブレード持ちだ。
 正直、出来すぎなぐらいに上手く行ったが、まんまるのバックアップもあったので比較的、気楽に突っ込めたのも大きい。 

 「て、テメエ、俺を囮にしやがったのか?」 
 「そうだけど?」 

 ホーコートの声は震えていたが、ヨシナリはまったく気にせずに事実をそう返す。
 
 「ふ、ふざけんな! 他人を利用してばっかりかよ! それでも男かよ!?」
 「……はぁ、勝負の場で性別を持ち出すのはナンセンスだとは思わないか? それに利用した事は否定しないけど、お前が突っ込んで全員仕留めていれば俺達がそんな事をする必要はなかったんだけどそれに関してはどう思う?」
 「そうですぅ。 撃破数ゼロのゴミに発言権はないですぅ。 お前は囮にしか使えないから分際を弁えて黙ってろですぅ!」
 「……あの、まんまるさん? 俺が話してるんでちょっと静かにして貰ってもいいですか?」
 「ひ、ひゃい!? 失礼しましたぁ……」

 ヨシナリは内心でまんまるってこんな奴だったのかと思い、少しだけ心の距離を取りつつホーコートの返事を待つ。 
 
 「だ、だからって味方を囮にするなんてダサい真似――」
 「え? お前って味方だったの?」
 「あ!? ざけんな! 識別見えてねぇのかよ!?」
 
 絞り出すような返答にヨシナリは心底どうでもよさそうにそう返し、ホーコートは瞬間湯沸かし器のように怒りを吐き出す。 

 「あぁ、ごめん。 味方のつもりだったのか。 俺は正直、敵じゃないだけで味方とは思ってなかったから、勘違いしてたわ。 ――次からはお互いにステージギミックとして利用し合おうな」

 ヨシナリは協力的でないホーコートには早い段階で見切りをつけ、ステージギミックとして割り切る事にしたのだ。 その結果が、囮として利用する事だった。
 不利な戦いには慣れている上、まんまるという協力的な味方がいる以上、ホーコートの協力は必須ではない。 付け加えるなら、さっきの戦闘での動きを視る限り、技量面でもあまり期待できそうにないので別に居なくても問題ないとすら思っていた。

 いつだって今ある手札でやらなければならないのだ。
 足を引っ張りかねない要因は可能な限り有効利用して処分すればいい。
 どうでもいい奴、非友好的な奴は情ではなく、合理で処理すればストレスも感じないので、メンタル的にも楽でよかった。

 「よし、次の試合も決まったみたいだし、お互いに頑張ろうぜ」
 「お前はフィールドの隅で小さくなってろですぅ。 黙って見てろですぅ!」

 ヨシナリが黙ったと同時にまんまるがホーコートを煽り始めたので、内心できっついなこのメンバーと思いながらウインドウを操作して次のフィールドへと移動した。
 
 移動した先は深い霧が特徴的な峡谷。 あまり見ないステージだ。
 新しく支給された武器はまんまるは突撃銃。 ヨシナリはブレード、ホーコートは散弾銃だった。
 
 「まんまるさん。 どちらか貸して貰えますか?」
 「ど、どっちがいいですか?」
 「……では突撃銃でお願いします」

 まんまるはどうぞと突撃銃と弾薬を差し出し、それを受け取ったヨシナリは軽くチェックして構える。 レーダーは霧の所為で完全に機能していない。 
 知覚範囲はかなり狭いので狙撃は難しそうだ。 ヨシナリは拳銃をまんまるに渡し、小さく手招き。

 「ど、どうしますかぁ?」
 「機体の条件は同じなので相手も見えないと判断したい所ですが、支給される装備が外付けのセンサーシステムの可能性もありますので慎重に行きましょう」

 マップを見る限り、ここは谷底だ。
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