Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第353話

 決定方法は投票――つまり、過半数の支持でリーダーになれる。
 三人なので自分ともう一人の票を獲得できれば条件はクリアされるのだが、ヨシナリとしてはこいつの指揮下には入りたくないなと思ってしまう。

 明らかに人を引っ張る魅力を感じなかった。 

 「いや、だったらまんまるさんでいいんじゃないか? 彼女はBランクだ。 強い奴がいいって言うのなら彼女じゃないか?」
 「あ? ランク高いだけだろ? こいつからカリスマを感じねぇよ。 やっぱり俺だろ?」

 ホーコートは俺、俺と譲らない。 
 ヨシナリはもう面倒くさいからこいつでいいかなと思い始めていたが、まんまるの意見を聞いていないので「どうします?」と視線を向けると――

 「わ、わたしはヨシナリさんがリーダーやってくれると嬉しいですぅ……」
 「あぁ!? こんな奴のどこがいいんだよ? 節穴かぁ?」
 
 ホーコートは瞬間湯沸かし器みたいに即座に沸騰するが、まんまるは小さく首を傾げる。

 「お前みたいなゴミに指揮官は無理ですぅ。 実力も指揮能力もあるように見えない上、この中で最低ランク。 口だけの雑魚は大人しくイエスマンやってろですぅ」
 
 ――おいおい、思った以上に言うなぁ。

 ポンポンの陰に隠れて自己主張が薄い印象だったが、そうでもなかったようだ。

 「んだとてめぇ! 俺がこのコバンザメ野郎より下だってのかよ!?」
 「実力差も理解できない時点で上下以前に比べる価値もないですぅ。 イキりのゴミはすっこんでろですぅ」

 ヨシナリは逃げ出したくてたまらなかった。 
 何故ならこの事態を収拾する為に能動的に動かなければならないからだ。
 取り敢えず、ウインドウからはさっさと決めろと催促が来ているので、ヨシナリは無言で自分に投票した。 残りの二人にも警告音と共に投票を促すメッセージウインドウがポップアップ。

 ホーコートは舌打ちして操作。 まんまるはヨシナリを一瞥して投票。
 結果はヨシナリ二票、ホーコート一票でヨシナリに決定した。
 ホーコートは結果に納得がいかなかったようでブツブツと文句を言っているが、構ってられないので無視。 最初は三対三の集団戦。 

 機体は告知されていたようにⅠ型。 
 装備に関してはフィールドへ移動した時点で決定されるようだ。
 そして一度手に入れた武器は次回の戦闘に持ち越す事ができるらしく、戦闘毎に装備が増える仕組みらしい。 

 ――最悪、敵から装備を奪うのもありか。

 「まんまるさん。 Ⅰ型の扱いはどうです? 俺はここ一週間でキマイラの感覚は抜いてきましたが……」
 「わ、私もですぅ。 ここ最近はⅠ型で練習してました」

 よし、なら問題はないな。 そもそも彼女は『豹変』のメンバーでポンポンの仲間なのだ。
 対戦もしたし、共同ミッションで組んだ事もあるのである程度の実力は把握している。
 
 「武装はどうです? 俺は中~遠距離戦はそこそこ以上にやれますが、近接戦になるとややランクが落ちます」
 「私も中~遠距離戦ですぅ。 接近戦はニャーコちゃんに任せてたのであんまり自信ないですぅ」
 「了解。 後はどんな武器を引き当てるかか……」

 話している内にマッチングが決定し、フィールドへと移動。
 移動先は森林ステージ。 木々が深く、視界はあまりよろしくない。
 シックスセンスもないのでさっぱり見えない状態だ。 装備は――

 自動拳銃のみ。 
 他を確認するとまんまるはボルトアクションの狙撃銃、ホーコートはメイスだった。
 
 「まんまるさん。 扱う自信は?」 
 「何とか行けますぅ」

 まんまるは支給された弾と銃を確認しながら頷く。
 なら問題ないな。 問題は残りの一人だ。
 
 「で? そっちは協力する気があるのか? ないなら別行動しよう。 別に指図する気はないから、お互いに好きにやろうぜ」
 「は、言われなくてもそうさせて貰う。 精々、俺抜きで頑張るんだなコバンザメ野郎!」

 そう言ってホーコートはさっさといなくなった。 
 

 ――気に入らねぇ。

 何もかもが気に入らなかった。 ホーコートは肩を怒らせて森を進む。
 Ⅰ型を使わされるのも、まんまるとかいう奴に馬鹿にされた事も、そして何より、ヨシナリの存在自体が気に入らなかった。 ランクはE、自分と同じこのゲームでは知名度など得られる訳もないちっぽけな存在だ。 

 だが、ここ最近になってイベントなどで目立つようになってきた。 
 前回の侵攻イベントではボスにとどめを刺しており、ユニオン対抗戦では強力なAランクプレイヤーやSランクプレイヤーを擁して優秀な成績を収めている。

 気に入らなかった。 どうやったのかは不明だが、Aランクプレイヤーの力を背景に本戦出場。
 いなければ予選で死んでいるような雑魚がだ。 身の程を弁えろと思った。
 ホーコートの考えを肯定するように本戦では途中で脱落している。 恐らくは足を引っ張ったのだろう。

 侵攻イベントでも誰かに取り入って手柄を横取りしたに決まっている。
 そんな奴と組まされた時点でホーコートは今回のイベントをほぼ投げていた。
 だから、自分がリーダーになって負けても仕方がないと思えるようにしたいと思っていたのだが、それすらも思い通りに行かなかったので、彼の苛立ちは深い。

 少なくとも彼の目にはヨシナリは他人に小狡く取り入る卑怯者でしかなかった。
 そんなまんまるもヨシナリの手にやられた愚かな奴なので、組むに値しない。
 奴らが俺を見限ったんじゃない。 俺が奴らを見限ったのだ。
 
 そう言い聞かせて森を進むが、途中で道を塞ぐ巨木があったので苛立ちに任せてメイスを叩きつける。 メキメキと大きな音を立てて巨木が圧し折れた。
 この苛立ちをどうにかする為に敵を叩き潰したい。 ホーコートはそんな気持ちで進んでいたのだが――不意に突っ込んで来た敵機に思考が真っ白になる。

 「う、うおぉ」

 敵の装備はブレード。 横薙ぎの一撃を咄嗟にメイスで受ける。
 金属が接触し火花が散った。 驚きはしたが好都合だとホーコートは目の前の敵機を睨む。

 「上等だ、ぶっ潰してやらぁ!」

 武器の重量を利用して上手く押し返す。 メイスとブレードでの鍔迫り合いならこちらに分がある。
 そう判断したホーコートは強引に押し込もうとしたが、森の奥から現れたもう一機が短機関銃を構えていた。 

 ――ヤベぇ……。

 咄嗟に目の前の敵機に蹴りを入れて射線から離れようとしたが、そこも読まれていたようだ。
 更に現れたもう一機が水平二連の散弾銃を構えて待ち構えていた。
 ホーコートは咄嗟に身を捻って回避を試みるが、散弾が脇腹と足を抉り、直立が出来ずに転倒する。
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