Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第458話

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 ステージは渓谷。 『星座盤』は南側に配置、『思金神』は北だ。
 開始と同時に奇襲を警戒。 何か飛んでくる気配はない事を確認してほっと胸を撫で下ろす。
 
 「マルメル、ホーコートは地上から真っすぐ。 ふわわさん、シニフィエは左右から。 グロウモスさんは後方で援護。 タヂカラオさんは俺と、ベリアル、ユウヤは予定通りに」
 「よっしゃ! 行くぜ後輩!」
 「うっす!」
 
 マルメルは正面から突っ込んで行き、ホーコートはそれに続く。
 グロウモスは観測用のドローンを飛ばした後に狙撃位置に向けて移動。 
 ふわわ、シニフィエも動き出した。 ベリアル、ユウヤは既に姿がない。
 
 「あの二人、もういないよ……」
 「はは、やる気があっていいね。 さて、僕らも行こうか」

 ヨシナリとタヂカラオは空中に上がってフィールドの中央へ向かう。
 反対側からも敵機が上がって来る。 警戒しているのか三機だけ。
 特徴的な形状の機体。 一機はエンジェルタイプだが残りはジェネシスフレームだ。

 「いやぁ、事前に聞いてましたけど、本当に出てこられるときついものがありますね」
 「厳しくはあるけど、何とか頑張ろうじゃないか」

 敵チームの機体と向かい合う形となる。 資料で見たが、見るからに強そうな相手だった。 
 まずは先頭の白い機体。 全体的に細身で腰にはエネルギーウイング。
 長い耳を模したセンサーパーツが特徴的な頭部。 モチーフはウサギらしい。

 『思金神』第二軍のリーダー。 Aランクプレイヤー『ヤガミ』だ。
 
 「こんにちは。 『星座盤』の皆さん、とタヂカラオ君。 まったく、一時的に抜けると聞いて何を考えているのかと思えば他所に入って参戦とは思い切った事をする」

 女性の声。 よく通る声なので、感情の起伏が分かり易い。
 特にタヂカラオに対してはやや呆れが混ざった様子だった。

 「はは、ここで当たるとは思いませんでしたよヤガミさん。 僕としては返り咲く為のチャンスは自分で取りに行こうかと思いまして」
 「三軍から落とされた事は仕方がないじゃないか。 だって君、負けたんだから。 ――でも、その負けた相手の下に入るとは思わなかったよ」

 タヂカラオは小さく肩を竦めて見せる。

 「いや、自分でも意外だったんですが、思った以上に居心地がよくてですね。 そんな訳で、ここは勝たせて貰いますよ」
 「へぇ、私達に勝てるつもりでいるんだ?」

 ヤガミは鼻で笑う。 タヂカラオは何も言わない。
 
 「ふん! 一度負けたぐらいで逃げ出した腰抜けな上、敵に尻尾を振る裏切者が!」

 別の女性の声。 そう言ってタヂカラオを指さしたのはヤガミの隣にいた別の機体だ。
 フォーカスするとプレイヤーネームが表示される。 『アベリア』。  

 淡い赤が特徴的な機体。 突撃銃に短機関銃と中距離戦を意識した構成だ。
 
 「裏切者は酷いな。 一応、タカミムスビさんとヤガミさんには話を通して円満に移籍したつもりですが?」
 「はっ、笑わせるな! 話を通したからと言ってもお前が敵に寝返ったのは揺るぎない事実だろうが! 負け犬の上、裏切者とは救いようがない愚かさだな!」

 ヨシナリは内心で小さく嘆息。 アベリアの言う事も分からなくはなかった。
 確かにタヂカラオは形だけ見ればイベントで敵対するユニオンに属し、情報を流したので裏切者と言われても否定はできないだろう。 

 だが、筋を通している以上、ここで責めるのは少し違うと思ったからだ。
 ヤガミはタヂカラオから視線をヨシナリへ移す。 
 ホロスコープを上から眺めた後、背中に吊っているイラで止まる。

 「君が噂のヨシナリ君か。 話は聞いているし、イベント戦での反応炉撃破は少し距離はあったが見ていたよ。 大した活躍だな」
 「いえいえ、偶々が重なっただけですよ」
 「タカミムスビさんが随分と君を気にしている様だったので、私も少し興味があるんだ。 頼むからあっさりと落ちてくれるなよ?」
 「それは勿論。 頼りになる仲間が居るので簡単にやられる事はないと思いますよ?」

 ヤガミはタヂカラオを一瞥。

 「なるほど、君はそういう人間か。 まぁ、口だけではない所を見せて貰うとしよう」

 アベリアともう一機が即座に戦闘態勢に移行。
 僅かな間が空き――全機が一斉に動き出した。


 ――まずは想定通り、か。

 目の前の二機のジェネシスフレームを見てヨシナリは思考を巡らせる。
 タヂカラオの情報はかなり詳細なものだった。 
 ヤガミというプレイヤーとその傾向に関しても含まれていたのでこうして前に出ると話をしにくるのは読めていた。

 次に釣れた二機のジェネシスフレームについて。
 一機目はヤガミの機体『ネザーランドドワーフ』。
 ウサギをモチーフにしているらしく、垂れた長い耳が特徴的だ。

 接近戦特化の機体で二本のエネルギーブレードをメインに使い、機体の各所に仕込んだブレードでの斬撃は読み辛い事もあって要注意だ。 
 戦い方はツェツィーリエに近いが、彼女の場合はその腰部に搭載されたエネルギーウイングにあった。 瞬発力に振っているらしく、旋回性能と瞬間的な加速が特徴だ。

 要はツェツィーリエやベリアルのように近距離でラッシュをかけるのではなく、瞬間加速によって矢のように敵に突っ込んで行って一撃を入れた後に離脱というスタイルを取っている。
 その為、捉えるのが非常に難しい。 特にベリアルとは相性が悪く、当人も捉えるのが難しいとの事。 

 逆にユウヤの電磁鞭のような機能を阻害する武装が有効なので相性は悪くない。
 こちらの感想は『跳ね回るだけが取り柄の雑魚』との事。
 残りの一機はアベリアの機体『ツクバネウツギ』。

 こちらは汎用性を重視しした機体で突出した強みはないが、目立った弱点もないオーソドックスな構成と言える。 
 戦績としても勝率を四割から五割をキープしているのでそう言った意味でも堅実な印象を受けた。

 ただ、ベリアル達からの評判はあまり良くなかった。
 ベリアルは「紅き野草」と呼んでおり、決して弱くはないが目立った脅威とも感じないと事。
 ユウヤは「ヤガミの腰巾着、死ぬほどつまらねー女」で片づけた。 

 ちなみにタヂカラオもアベリアにはいい感情を抱いていないのかユウヤの感想に大笑いしたのはまた別の話だ。  
 ユウヤの表現は割と的を外しておらず、アベリアは常にヤガミの近くに居るので出てくるときはセットの可能性が高い。 

 ――取り敢えず二機ははっきりした。 
 
 最低でも後二機は居るはずだ。 姿を見せないのはベリアルとユウヤにぶつける為だろう。
 ズシンと少し離れた場所で衝撃が走る。 どうやら始まったようだ。
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