Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第457話

 「ちなみにその支援ってどんな物なんですか?」
 「あぁ、一番下の十軍なら装備とパーツの貸与かな? キマイラやソルジャータイプのパーツなら余程の代物でもない限り貸してくれるよ。 在庫がなくても買って貸してくれる。 三軍以上になるとP必須の装備や現物支給もしてくれるから皆、三軍以上を目指しているという訳さ」

 ちなみにタヂカラオは三軍所属だったのだが、ヨシナリ達に負けて落ちた。
 
 ――なるほど。

 誰も彼もが入りたがる訳だ。 
 タヂカラオのジェネシスフレームもその三軍である事の恩恵によって得た物なのだろう。
 
 「――というか、ジェネシスフレームの面倒まで見てくれるとか凄いですね。 だったら二軍以上は何を貰えるんですか?」
 「あぁ、あのレベルになるとジェネシスフレームのアップグレードの面倒まで見てくれるよ。 知らないかもしれないけど、Aランクプレイヤーの多くが『思金神』所属なのはこの辺が理由だね」
 
 三軍はほぼBランク以上しか居らず、二軍は半数以上がAランク、一軍は全員Aランクらしい。
 
 「昇格とかはどうしてるんですか?」
 「週に二回、昇給の考査を兼ねた大規模演習があるからそこでいい成績を残せたら本人に昇格の話が行く」
 「判断は誰が?」
 「各軍を束ねているリーダーが試験官を兼ねているので彼等の判断次第だね」

 聞けば聞くほどに『思金神』の強さが理解できる構造だった。
 基本的にユニオン資産はメンバーの獲得したミッション報酬で増加していくので、頭数が居れば居るほどに効率よく溜まる。 

 あんな大都市のようなユニオンホームが出来上がっている時点で溜まっているGは億どころか兆は行ってるかもしれない。
 溜まった金をメンバーに惜しみなく放出すれば恩恵を得たいと群がってくるのは考えるまでもない。
 タヂカラオの口振りからサポート体制も確立しているのだろう。 

 右も左も分からない初心者であったならかなりのスタートダッシュを決められるし、中堅クラスのプレイヤーも新しい装備などを獲得するチャンスとなる。
 ユニオンとしても初心者は早めに囲い込んでおけるし、仮に使い物にならなかったとしてもミッションをやらせれば最終的には黒字になるので損はない。

 ――息苦しいな。

 そこまで聞いてヨシナリの抱いた感想はそれだった。
 徹底して管理された体制、個々の技能向上を促す格差を作る為の階級。
 淘汰圧とはよくいったものだ。 

 タカミムスビというプレイヤーはとにかくユニオンのメンバーを競わせる事で常に緊張感を与え続け、降格という圧をかける。 
 タヂカラオがジェネシスフレームを没収されている点からもそれは明らかだ。

 彼等は苦労して得たランクを守る為、更なる力を求める為に上を目指す。
 そして頂点に至ればそれを維持する為にまた研鑽の日々。
 完全にこのゲームの運営と同じやり口だ。 それをユニオン単位で行っているのだから恐ろしい。

 そう、恐ろしいのだ。 普通は思いついて実行に移してもまず成功しない。
 だが、タカミムスビはこんな短期間で成功させている。 
 ヨシナリからすれば異様としか言いようがない。

 「うへー、メリットデカそうだけど、なんか息が詰まりそうだなぁ」
 「ウチもパスかなー。 好きにできへんのはちょっとなー」
 「……ひ、人多そうだし、しんどい」

 マルメル達の反応を見てヨシナリは苦笑。 
 そう、真剣にやるのはいいのだが、圧をかけるのはヨシナリとしては違うと思ってしまう。
 こういうのは自発的にやらなければ意味がない。 好きこそ物の上手なれだ。
 
 「はは、君達からすればあっちは息が詰まるかもしれないね。 ――さて、そんな厳しい競争を勝ち抜いていいポジションに居るメンバーだ。 中々に手強いぞ」
 「最低四人って話でしたが、三軍のAランクの数は四人って事でいいんですか?」
 「いや、三軍は総勢150名なのだが、Aランクは七人。 少なくとも二人は都合が付かないとかで不参加と聞いていて、一人はあまり乗り気ではなかったので恐らくは残りの四人は確実に出ると見てる」
 「つまり最大で五人って事ですか?」
 「あぁ、僕の見立てではね」

 ヨシナリがその根拠は?と聞き返すとタヂカラオは小さく肩を竦める。
 
 「三軍は二軍への通過点なんだ。 その為、Aランクは早い段階で次へと駒を進める。 ――にもかかわらず三軍に残っているプレイヤーは何だと思う?」
 
 考えると答えは割と早く出た。 
 分かり易い失態を演じると機体や装備の没収をという事実を踏まえれば簡単に見えてくる。

 「……要は二軍でやっていける自信がないから無難に三軍での地位を確立したいって感じですかね」
 「正解だ。 誰しも折角得たAランクの肩書を手放したくないだろうし、理解できなくはないだろう?」

 『思金神』は競わせる事で向上を促すのが基本方針だ。 
 ――にもかかわらずイベントに消極的なのは降格を恐れての事だろう。
 
 ユニオンとしては参加させたい所だろうが、本人にその気がないのならどうにもならない。
 普段なら降格する所だろうが落とす為の理由がないので、放置という結論に落ち着いたといった所だろう。 
 
 「Pの換金レートは知っているだろう? ランク報酬は生活の質に直結する」
 「あー、要は金の為にやってるから下手な事して降格になるような状況を嫌がってるって感じですかね?」
 「その通りだよマルメル君。 ユニオンからの評価はかなり落ちるが、没収するだけの理由もないので放置という形になる」

 嫌な話だった。 タヂカラオも似たような事を考えていたのか、映像を切り替える。

 「さて、そろそろ個別の対策を練るとしよう。 なに、こちらにはAランク上位の猛者であるベリアル君とユウヤ君が居るんだ。 総合力的にはそこまで見劣りしないさ」
 「頼りになるAランクならもう一人いるじゃないですか」

 タヂカラオは少し意外だったのか僅かに沈黙し、ははと声をあげて笑う。

 「任せてくれ給えよヨシナリ君。 機体を失ったとはいえ僕はAランクだ。 君の味方は中々に心強いぞ! では相手のフォーメーションについてだが――」

 

 「――以上が僕の知る限りの相手の情報だ。 決して勝てない相手ではないが、簡単に勝たせてくれる相手でもない。 気を引き締めて行こう」
 
 タヂカラオがそう締めると同時に時間が来た。
 ウインドウには入場可能と出ていたので、もうフィールドへ移動できる。
 敵のジェネシスフレームと参加しそうなBランクプレイヤーの情報、敵のフォーメーション等と多岐に渡ったが、彼は分かり易く簡潔にヨシナリ達に披露した。

 可能な限りの準備も行った。 後は行くだけだ。
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