Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第559話

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 ――やったか!?

 と思ったのが良くなかったのかもしれない。 
 エーテルの砲は確かに敵機を捉えた。 
 だが、闇の奔流は敵機を焼き尽くさずに抵抗されているかのように拡散している。 

 何が起こっているのかとシックスセンスで確認。 敵機の前面に強力なフィールドが展開されている。
 空間歪曲だ。 エーテルの砲はそれに阻まれて敵機を破壊できずにいた。
 それがどうしたとこのまま押し切ってやりたいところだが、これ以上の照射はプセウドテイはともかくホロスコープが限界だ。 

 「これに耐えるか!」

 ベリアルも押し切るのは無理と判断してエーテルの供給を切る。
 視線の先に居た敵機は無傷どころか違った姿になっていた。 
 胴体が甲冑のような強化装甲に包まれており、機体の出力も大きく上がっている。

 「最初見た時から妙にすっきりしたデザインだとは思ってたんだよなぁ……」

 どうやら装備を最低限しか持ってきていない状態だったようだ。
 ジェネレーター搭載型のようで空間歪曲のような燃費の悪い武装でもそれなり以上の時間を維持できる。 
 対してこちらはそろそろ限界だった。 機体のステータスをチェックするとあちこちにエラー。

 理由は簡単でホロスコープがこれ以上の戦闘に耐えられないのだ。
 出力のバランスを取る為に常に200%以上の出力を使用し、畳みかける為に400まで上げた。
 お陰で機体のあちこちが悲鳴を上げているのだ。 

 この瞬間にも細かなダメージが蓄積されており、システムはいい加減に合体を解除しないと死ぬぞと警告を続けているが、そんな真似できる訳がなかった。
 こいつはここで止めておかないと中枢にいった仲間を危険に晒してしまう。

 どうやらマルメル達は何かと遭遇したらしく、マルメルは落ちたがグロウモスはまだ健在。
 彼女がやり遂げるまではここで膝を折る訳には行かないのだ。
 
 ――それにしても。

 まさかキマイラ+になってフレーム強度に不満が出るとは思わなかった。
 使い始めた当初は何の不満もなかったのだが、パンドラを使い始めた辺りから脆さが目立つようになってきたのだ。 

 それだけベリアルから譲り受けた闇の叡智が素晴らしすぎたという訳だが――
 敵機がゆらりと動く。 周囲に独鈷が出現、手を軽く持ち上げて下ろすと殺到するように飛来。
 即座にアシンメトリーを構えて連射。 ベリアルもエーテルの弾幕を張る。

 独鈷自体はそこまでの強度はないので撃ち落とす事は容易だった。
 だが、問題はそれに混じって例の短剣が飛んで来た事だ。 弾幕を物ともせずに突っ込んで来る。
 これはどうにもならないと横に躱すが、回避に意識を取られた瞬間に敵機本体が転移で間合いを潰す。

 手には剣。 真っすぐに切りかかって来る。
 ヨシナリは敵機が手放した長剣を軽く放り投げるとベリアルがエーテルで作った腕で掴み、弾切れになったアシンメトリーを投げ捨ててイラを握った。 

 この距離でアシンメトリーは荷物でしかない。 
 ヨシナリは意識を集中。 攻撃はベリアルに任せて自身は防御に専念する。
 横薙ぎの一閃をイラを立てて受け止め、お返しとばかりにベリアルが長剣を振るう。

 敵機はベリアルの斬撃を腕でいなし、僅かに下がって刺突。 
 強化装甲は随分と頑丈な代物らしく、いなされた事もあるが明らかに刃が通っていない。
 
 ――相当硬いな。

 伊達にファンタジーみたいなデザインをしていないようだ。 
 ヨシナリは冷静に繰り出された刺突の切っ先を見ていなす。 
 受け止めるのではなく、切っ先を剣の腹に滑らせて流したのだ。

 かなり速いので何度もできる手段ではないが、制限時間が限られている事もあって勝負を決めに行かなければ不味い。 
 刺突、斬撃、蹴り、どこからか呼び出した独鈷の射出。 
 斬撃と打撃を織り交ぜ、その隙を縫うように独鈷を飛ばしてくる。

 斬撃をヨシナリが、独鈷をベリアルが弾き、余ったリソースで長剣で反撃しているのだが、中々捉えきれない。 ヨシナリは必死に敵機の斬撃を捌きながら思考を回す。 
 まずは強化された敵機についてだ。 

 強化装甲はジェネレーター搭載型で、装備するだけで単純に出力が増加している。
 使える出力が増えた事で攻撃の回転も増していた。 とにかく手数が多い。 
 相当な代物のようで独鈷を気軽に呼び出している点からも本体と同等近い出力が出せるようだ。
 転移か精製かは不明だが、呼び出すまでは使ってこなかった点からあの数の操作と呼び出しは燃費が悪いと見るべきだろう。 

 強化装甲に内蔵されているジェネレーターの位置は背面だが、狙える気がしないので正面からどうにか突破しなければならない。
 次に強度。 こちらの攻撃が碌に当たっていないので正確な所は不明だが、長剣が当たっても碌にへこみも傷もついていない点から強度が高い事が窺える。 

 ――上手にいなしているのもあるけど、簡単に貫けないか。

 上手く纏まらない思考で打開策を探るが、現状では明らかに手詰まりだ。
 どうする? ヨシナリの両手はイラを振り回す事で塞がっている。 
 下手にアトルムとクルックスを抜くと片手では防御のクオリティが落ちるので食い破られかねない。
 
 ベリアルも独鈷を捌きながら長剣を振り回している事もあって手数が足りないのだ。
 機体のダメージ蓄積もそろそろ深刻なレベルになってきた。 
 特に足回り――推進装置がかなり痛めつけられており、そろそろ爆発しかねない。

 ――これはもう賭けに出るしかない。

 ヨシナリは小さく息を吐く。 覚悟を決めたからだ。

 「闇の王よ。 後を頼む」
 「征くのか?」

 あぁと頷く。 チャンスは一度だけだ。
 やる事はもう決まっていた。


 やってしまった。 
 ジョゼは事態の深刻さに対して若干の焦りはあったが、精々が後で怒られるか謹慎を喰らうぐらいだろうと思っていたのでまぁいいかと流す。
 
 理由は単純で彼女が使っている追加装備はイベントでの使用を禁じられている代物だったのだ。
 それを自身の権限を使って強引に呼び出して使用したのだが、そろそろ気付かれる。
 他のオペレーターは彼女ほど砕けた性格はしていないので、ルールを破ったジョゼをゲームから排除するだろう。

 だから、その前にこの美味しい獲物だけは頂く。
 想像以上だった。 まさか機体を強引に接合して足りない差を埋めてくるとは思わなかった。
 単純にくっ付けただけならここまでの戦闘能力は発揮しない。 

 あの二人は互いの機体から放出されるエーテルを必要に応じて使用する事で攻防に利用しているのだ。
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