和製切り裂きジャック

九十九光

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#3-3

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そべる遺体と目が合っていた。黒いレディーススーツを着た、会社員か就活生と思わしき若い女性の遺体だった。植え込みは大輔から見て上がっていく形の斜面に作られており、遺体は頭を下にした状態で、素人が手にした操り人形のような体勢をしている。瞳孔が開かれた二つの眼球は、下の大輔を怒りとも恐怖とも言えない様子で睨みつけていた。遺体のすぐそばには彼女のものらしい黒い厚手のコートと右のパンプスが放置されているが、それ以外の衣服は一切脱がされていない。ただ上半身のシャツは、腹とともにみぞおちから股の近くにかけて裂かれており、その傷口からは赤とピンク色がメインの腸が、大量のミミズが絡まったような形で露見している。
 大輔はすぐに好代との電話を切り、警察へと通報した。
 その二日後の午前十時半、愛知県警の捜査一課に話は移る。
「被害者は高宮詩織。現場近くで両親と暮らす、中区鶴舞にあるスーパーマーケットチェーンの本部で総務部に所属していた三十一歳の女性です」
 捜査一課の関係者がほぼ全員揃っている会議室で、刑事の橋本は自作した読み上げ原稿を片手に事件の概要を話していた。
「死因は背後から首を紐状のもので首を絞められたことによる窒息死。腹部の傷は絞殺した後に裂かれたものでした。死亡推定時刻は当日午後七時半頃。当日六時五十二分に地下鉄一社駅を下車したのを最後に目撃証言は途絶えています。財布、現金、クレジットカード、携帯電話、各種身分証明証、鞄などは見つかっていません」
 橋本が原稿から顔を上げると、席についていた捜査官たちは、皆一様に顔をこわばらせていた。
 ついこの間、名東区の西に隣接する千種区で惨殺された女性の遺体が見つかったばかりのこの状況で、絞め殺した後で腹を切り裂いて内臓を丸出しにされた女性の遺体が見つかれば、同一犯による女性ばかりを狙った連続殺人事件が起きたと考えるのは当然のことだった。そして、自分がここまで凶悪な犯行の捜査に関わるとは思いもしなかったと、この場にいたほぼ全員が考えていた。
「で、ほかには何か分からないのか?」
 通路側の席の最前列、老眼鏡をかけて頬杖を突く湯浅警部補が質問をする。
「……。あったらもう言っています」
「もう少し想像とかできるだろ! 犯人像とか! 候補とか!」
 橋本が自分の質問にぶっきらぼうに答えたのを受けて、湯浅は机を叩いて立ち上がった。
「指紋はおろか、下足跡、毛髪、皮膚片も見つかっていません。帽子や手袋をしてたんでしょう」
 そう橋本が言い返すと、そこから湯浅と彼の、温度差の激しい言い争いが勃発する。
「じゃあ周辺を聞き込みだ! そういう服装の不審人物を洗い出せ!」
「大勢出てくると思いますよ。今は真冬ですし」
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