マインハールⅡ

熒閂

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Kapitel 01

夢現の境界 02

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「え……どこ?」

 いつか何処かで聞いた覚えのある単語。アキラは無意識に聞き返した。

「〝ビヴロストの隔たり〟を越え、アスガルトへ」

 本能的に肌の表面がざわついた。自分の常識など通用しないであろう〝向こう側〟の世界を想像してにわかに恐怖心が湧き上がる。一度足を踏み入れてしまえば戻れない気がする。そこが地獄ではないなんて根拠なく信じられるほど、好奇心が恐怖心に勝るほど、無邪気な楽観主義者ではない。未知のものに対して純粋に恐怖した。

(前にティエンが言ってた気がする。ティエンたちの世界のことだ、たぶん)

 白の心臓はドクッドクッドクッとひとつずつ大きく鼓動を打って体を叩いた。
 白は声が震えそうなのをどうにか制御して口を開いた。

「どうしてわたしがそんなところに行かなくちゃいけないんですか」

「質問は無意味だ。人間エンブラに我々を理解することは不可能」

「何の目的で連れて行かれるのかも分からないで、おとなしく言うこときくわけないでしょッ」

 白は、ジリジリと躙り寄るロングコートの男に向かってスタンガンを真っ直ぐに突きつけた。
 バチバチバチッ。――スタンガンが目映く閃光を放った。
 先ほど一撃を喰らっている男は、警戒して一瞬その場で足を停めた。
 白はその隙を突いてビルとビルとの隙間に逃げこんだ。

 大きな室外機やダクトに阻まれ、人ひとり通るのがようやくの狭い道。真正面に細い光が見える。あれを目指して通り抜ければ大通りに出るはずだ。

「はあッ、はあッ、はあッ……」

 白は障害物に脚や腕をぶつけながらも懸命に前に進んだ。痛がっている暇はない。制服が埃まみれになって汚れても構う余裕はない。少しでも前へ、少しでも遠くへ、あの手の届かないところへ。非日常の入り口に吸いこまれてしまわないように逃れて。

「ぐっ……ぬ!」

 白の少女らしい体格でこそ障害物を避けて通れる。ロングコートの男は大柄な肉体であるが故に難渋だった。白よりも時間をかけざるを得なかった。

 白はビルの壁面と壁面との狭間を縫って進む途中、放置された異形鉄筋を見つけた。廃棄されたものなのか誰か意図を持って安置したものなのか分からない。結束も固定もされておらず、少女の力でも一本くらいは持ち上げられた。
 しかしながら、たとえこれを持って立ち向かったところで万に一つでも勝ち目はない。追っ手は人智を越えた存在。紛れもなく常人である白では、あれを打倒することは到底不可能だ。
 異形鉄筋を一本拾い上げてみたが、やはりズシリと重たかった。振り回すことはできなくはないが、何の武道の心得もないのにこれを得物として戦うことは無謀だ。
 白は持ち上げたそれを地面に突き立てた。グッグッと力いっぱい押し、できる限り深く突き刺した。追っ手が迫るなか、また一本拾い上げ同じように地面に突き刺した。

 白が異形鉄骨から離れて前進を再開すると、すぐに再び牆壁に阻まれた。

「また……ッ」

 ジャリッ、背後から足音が聞こえた。振り返ると当然、ロングコートの男が迫っていた。

「抵抗をするな、ヒキドーアキラ。お前はもう――」

 グンッ。――男は何かにロングコートを引っ張られた。
 足を停めて確認すると、コートの裾が異形鉄筋に引っ掛かっていた。その大きな体躯を捻ってどうにかようやく通れるほど狭い通路で細長いものが出っ張っていれば、くるぶしまである丈長の装束を引っ掛かけやすくなるのは道理だ。
 男はコートを力尽くで引き離そうとし、その瞬間、前方に気配を感じた。
 白はクッと唇を噛んで必死の形相で、男の腕にスタンガンを押しつけてスイッチを入れた。
 バチィンッ! バチバチバチンッ!

「ぐああああッ!」

 男は身体に電流が駆け巡り、苦悶の声を上げた。

「ごめんなさい」

 白はたった一言で許されるわけがないと思いながらも、咄嗟に謝罪が口から突いて出た。自衛の為とはいえ、他者を攻撃することは気が咎める。しかし、こうする以外に牆壁を解除する方法は思いつかなかった。
 男の集中が途切れれば牆壁は消失する。その仮説は正しかった。先ほど牆壁があったらしい箇所を手探りすると、そこにはもう何もなかった。
 白は光に向かって走り出した。一縷の望みのようなものを期待して。此処を抜け出せば大通り。夕暮れの時分とはいえ、大通りに出ればまだ人通りがあるはずだ。
 光に飛びこむように狭い隙間から飛び出した。瞬間、目を細めるほどの眩しさを感じた。
 残念なことに、通りを見渡しても都合良く通行人は見当たらなかった。




 ロングコートの男がビルの隙間から出てきた頃、白はすでに大通りの向こうに渡りきっていた。
 白は男に対して身体の正面を向けた。

「もう、これ以上追ってこないでください」

 そう言われて已めるなら、年端もゆかない非力な少女を埃だらけ傷だらけになるまで追いこみはしない。無論、男は歩みを停めなかった。白に向かって最短距離、直線で近づいた。
 白はロングコートの男を真っ直ぐに見据えてゴクッと生唾を嚥下した。鼓動が一段と激しくなり、肉の壁に叩きつけられているかのように心臓が痛い。
 ――――フ、ァアアンッ!
 中途半端なクラクションの音。
 視界の真ん中に自分を追う男。視界の先端に大型トラックが飛びこんできた瞬間、白は顔を背けた。前髪を掠めるように風が吹き抜けた。
 ドガッシャァアンッッ‼
 大きなものがぶつかった衝撃音。白はビクッと身体を撥ねた。
 この大通りが、信号が青である限り通行車がスピードを出す場所だということを、白は知っている。見ずとも分かる、トラックは白の視界を真っ直ぐに横切ったのだ。進行方向に立つものを撥ね除けて。
 ソッと目を開けた。顔の筋肉はガチリと固まったまま。視界にはもう何も無かった。トラックも男の姿も。夕暮れ時の無人の道路があるだけ。
 白は少々ぎこちない動作でトラックが突き進んでいったであろう方向へ目線を向けた。
 急ブレーキをかけて車線に対して斜めに停車したトラック。運転手らしき中年男性が「おいアンタ」とか「大丈夫か」とか慌てふためいてトラックの前方に走りこんだ。
 異界の住人は魔法のような力を使う、人智を超越した生き物。しかし、人間同様に肉の器に有限の生命を注がれ、苦痛も感情も持ち合わせ、死は等しく訪う。

「……ごめんなさい」

 白には男の生死を確認する勇気はなかった。他に術は無かったかと考え出しそうな脳内回路を強制的に停止した。そうするしかなかったのだと自分に言い聞かせる。そうでもしないと罪悪感で居ても立ってもいられない。
 一刻も早くこの場から離れようと、クルッと背を向けて早足で歩き出した。震える手でスカートのポケットからスマートフォンを取り出した。スマートフォンを取り落とさないように両手で支えた。

「ココに連絡……」

「待て。ヒキドーアキラ」

 白は身体ごとバッと振り向いた。
 ロングコートの男が、額を真っ赤に染めてトラックを背にして立っていた。
 片腕をぶら下げ足を引き摺るようにしながらも、一歩一歩ゆっくりと白に近づいてくる。ボトボトッとアスファルトに血が落ちた。

「まだ動けッ……⁉」

 白は信じられないという形相でカタカタと震えた。
 大型トラックと正面衝突してあの程度の負傷で済むなど考えられない。やはり只の人間とはまったく異なる生き物なのだ。白は智力と体力の持てるすべてを出した。思いつく限りの策は尽くした。トラックという運も味方した。しかし危難は去らない。今も変わらずジリジリと躙り寄ってくる。只人である白にこれ以上何ができるというのだ。絶対的強者に、どうやって抗えというのだ。

 ――そんなことは無駄だと頭では解っているのに、今さら助けてと願ってしまう。キミに――――

 白は正直、このとき絶望した。置かれた情況にも自分自身にも。
 眼前の脅威と比較して自身の非力は自覚しているが、いもしないものに縋りついてしまうほど弱いとは思っていなかった。自身をもっと強い人間だと思っていた。日々を努めて平穏に過ごし、ひとりで大抵のことはできると思っていた。事実、今日までそうやって過ごしてきた。だから、本当に自分の力ではどうにもできない事態に陥るとこんなにも安易に何かに縋ろうとするだなんて思いもよらなかった。

(ダメッ……考えて。何とかする方法を今すぐ考えなくちゃ。何かあるはず。じゃないと銀太に……! 銀太のところに早く行かなくちゃ……ッ)

 考えようとすればするほど愛する弟の姿が脳裏に浮かぶ。毎日見ている姿を、今朝見たはずの笑顔を、とても遠く感じる。それは、連れ去られまいと抵抗することを、すでに心が諦めようとしているからなのかもしれない。
 もっと必死になって考えを絞り出せと脳内で自身を叱責した。あの子に会えなくなってしまうなんてダメだ。あの子を失うなんて耐えられない。否、究極的には二度と会えなくなってしまっても構わない。あの子がつらい目や苦しい目に遭わなくて済むのなら。あの子が安全で笑顔で幸福でいられるのなら。
 ――神様。わたしのことはいいから、銀太だけは助けてください!

「停まれ」

 声は、唐突に降ってきた。
 空から頭上へと降り注いだそれは、一方的に命じているにも関わらず穏やかで優しさすら感じた。
 白と追っ手との間に薄黄金色の翼が降り立った。それは夕暮れ時のわずかな陽光を集めて散らし、神々しく光り輝いた。
 白はその大きな双翼に、後ろ姿に、見覚えがあった。こちらに背中を向けていても誰だが分かる。

「ロン……?」

 震える唇から独りでにその名前が零れた。
 地上に降り立った耀龍ヤオロン縁花ユェンファは、一目散に白に寄り添うことはなかった。白に背中を向けてロングコートの男と対峙した。
 男は、突如として登場した自分と同じアスガルトの住人に目を瞠って立ち尽くした。

「ニーズヘクルメギルの若君……? 貴方様がなぜミズガルズに」

「退け」

 耀龍は、困惑する男に向かって素っ気なく命令した。
 それまで何が何だか分からないという様子だった男は、耀龍の意思が自身の任務と相反すると悟った瞬間、表情を硬くした。

「それはできません」

「ここから去れ。その娘に触れることは許さない」

「貴方様が如何にニーズヘクルメギルの若君といえど、承服できかねます。これは私の任務です」

「だろうね」

 耀龍は男に反抗されても気分を害した素振りはなかった。
 対峙している人物が自分の使用人でも眷属でもないことは理解している。一声命じただけで服従するわけがないことは想定の内だ。

「彼女はオレの客人だ」

「若君。何を仰有います……!」

 男がにわかに表情を変えた。耀龍の発言の意図を瞬時に解したということだ。
 それにより、耀龍はこの者は命令に愚直なだけの無能ではないと推量した。だからこそ付け入る隙がある。損得勘定の駆け引きが成り立つ。

「オレはファ=ニーズヘクルメギルの族長の末子にして正統なる嗣子のひとり。このオレの重要な客人だ。貴様、その客人に怪我を負わせたばかりか、あまつさえオレに逆らうつもりか。それが何を意味するか理解しているか、一軍人。貴様だけではなく貴様の上官、部隊、家族、恋人、すべてが不利益を被る覚悟はあるのか。貴様に命を下した者共といえどもオレと敵対することを望まないだろう。この世のどれほどの者がオレと敵対することを選択できるかよく考えよ」

 ロングコートの男は、耀龍の言葉の意味を重々理解し、何も言わず立ち去った。彼は上官にこの場で起こったことを有りの儘に報告するだろう。しかし、そのようなことは耀龍にとっては瑣末な事柄だ。
 耀龍は肩から力を抜いて、はあーあ、と大きな息を吐いた。自由奔放な彼にとって身分に相応しく権力者らしく振る舞うのは、肩肘を張る疲れることだった。

「嫌だなー。こういう風に言うこときかせるの」

ファの嗣子らしい振る舞いでございました」

 縁花は耀龍に向かって頭を垂れた。

「そうやってお坊ちゃま扱いされるのが嫌なんだって。縁花ユェンファは分かってないな」

「貴方様が生まれながらの貴人で在られることは理解しております」

「…………。子ども扱いされた気がする」

 耀龍は不満げに眉をひん曲げた。
 それから、パッと表情を変えて身体ごと白のほうを振り向いた。

「アキラ。大丈夫だった?」

 白は茫然として耀龍を凝視するばかりで、かけられた言葉に反応する余裕はなかった。先ほどの男以上に何が何だか分からなかった。
 耀龍は白の目の前まで近づき、その姿を上から下までジロジロと観察した。

「うん。擦り剥いてるところはあるけど、大きな怪我は無いみたいだね。簡単に手当しよっか」

 柔らかそうな薄褐色の髪の毛、猫睛金緑石クリソベリル・キャッツアイの瞳、端麗な容顔。穏やかな眼差しをして微笑みを湛えた、絵画から抜け出てきたみたいな青年。目の前にいて喋っているのに現実感がない。薄黄金色の翼を背負っているからか、心底助けを求めてしまったからか、自分の脳内が作り出した都合の良い幻想かと疑った。

「本当にロン……?」

「本物だよ。来るのがギリギリになっちゃったね」

 薄黄金色の翼を背負った青年は、無邪気な笑顔を見せた。
 白は耀龍も縁花も本物なのだ、眼前の事象は現実なのだと実感した。するとドッと疲労感が押し寄せてきた。見知った人物の登場によって緊張の糸が切れた。

「何で、今頃……」

 白の身体がぐらり傾いた。言いかけた恨み言を最後まで紡ぐことは叶わず意識が途切れた。
 縁花が素早く腕を伸ばして白を抱き留めた。
 耀龍は、縁花の腕のなかで瞼を閉じた白を覗きこんだ。
 安堵して気を失ってしまうほど気を張っていたのかと思うと気の毒だ。何も持たない華奢な少女がたったひとり、摩訶不思議な力を使う屈強な男に追い詰められ、どれほど恐ろしかっただろう。耀龍には想像することしかできない。否、その想像力も恐怖の実体験には及ぶまい。

「今頃になって……ごめんね」

 耀龍は、危難にたったひとりで立ち向かった傷だらけの少女に向かって謝罪の言葉を口にし、頬に口づけた。




  § § §




 アキラが襲撃を受ける数日前――――。
 アスガルト・ニーズヘクルメギル領・暉曄宮きようきゅう
 アスガルト最古の歴史を持つ有力貴族・ファ=ニーズヘクルメギルの所領であり、そのほぼ中央に位置する宮殿は、族長が坐す居城。白磁の如き優美さと、高く反り立つ堅牢さを併せ持つ、見事な宮殿として高名だった。
 宮殿には一族のみならず、重臣・使用人・私兵団などゆうに千人を超える人々が暮らす。宮殿の食い扶持を満たす為に周辺には街が広がり、交易が盛り、アスガルト有数の繁栄した都市を擁するに至る。

 宮殿内部は、公務を行う表向きのエリアと、族長一族や眷属が私生活を送るそれとで、隔てられている。
 耀龍ヤオロンは当代の族長の末子であり、幼い頃よりこの宮殿が我が家だ。普段着でいようとも、気楽に振る舞おうとも、誰に咎められることもない。今日も、白磁のような豪華な内装に不釣り合いな薄いシャツ一枚を着て、長い廊下をスタスタと歩いていた。後ろには侍従の縁花ユェンファを付き随えていた。
 廊下で出会した使用人たちは、耀龍と目も合わさぬ内に廊下の端に寄って道を空け、恭しく頭を垂れた。耀龍はそのような彼らを特に気に留めなかった。彼にとってはこれが我が家での当たり前の風景だ。
 中庭を抜けて自室へ向かう渡り廊下の中程。耀龍様、と縁花が呼び止めた。
 耀龍は足を停めて「何?」と縁花を振り返った。

「兄君があちらに。ご挨拶なさいませ」

 縁花に促されて中庭へと目を向けた。
 芝生が青々と美しい中庭の中央には、白い屋根のガゼボ。丁度風が吹き、屋根から小鳥が飛び立った。そこにひとりの人物が座していた。
 愁いを帯びた伏し目がちの慈眼、艶やかな黒髪を肩から胸に垂らし、優美な麗人のような佇まい――――耀龍の同い年の異母兄・麗祥リーシアン。彼は紅茶を嗜みながら読書中だった。
 耀龍は中庭に足を踏み入れ、サクッサクッと芝生を踏んで麗祥に近づいた。
 足音に気づいた麗祥が顔を上げた。

リー。何でいるの?」

「今日は休みだ。溜めこんだ書物を読んでしまおうと思ってな。ロンは研究室の帰りか」

「帰ったの三日振りだよ、も~」

 耀龍は軽く首を左右に振った。
 麗祥は本を閉じてフフッと笑った。

「お前は変わり者だな。学院ビルスキルニルを卒業する学力などとうに有しているというのに、単位に関係のない研究室に入り浸りとは」

「教官たちに呼ばれるんだもん。まあ、オレも研究の手伝いは調べ物はキライじゃないし。卒業はいつでもできるしね」

 耀龍はテーブルの上に積み上げられた書籍の山に目を落とした。
 しようと思えば一生遊んで暮らせる身分なのに、定職に就いたりするから好きに読書を楽しむ時間もない。血を分けた同い年の兄弟であるのに、耀龍は学生身分を存分に楽しみ、麗祥はさっさと学業を修めて堅実な職――官吏になった。耀龍には麗祥の決断は少々勿体ないというか、生き急いでいるように見えた。

「オレから見たらリーだって変わってる。今の仕事さあ、自分からわざわざ人に命令される立場になるなんて。父様に言えばすぐにだって誰にも命令されない地位に就けるのに」

「そうだな。父様はそうなさるだろう。しかし、私は誰かに命令したいわけではない。父様や兄様たちの扶けとなりたいのだよ。そして私には、官吏になるより他に方法が無かった」

 耀龍は何とも言えない表情で口を噤んだ。
 麗祥は、この自由主義の弟には理解しがたいだろうな、と容易に想像ができた。

「これでも、私も己の好きなことをしているつもりだ。お前と同じようにな」

「まあー。リーがいいならいいけどさ」

 麗祥はカップを持ち上げ、やや温度の下がった紅茶を一口飲んだ。
 ねえ、と耀龍がやや潜めた声で麗祥を呼んだ。この広い宮殿の、身内以外いない中庭に在っても、誰にも聞かれたくない話題だった。

「ここのところずっと、言おうか迷ってたんだけど……天哥々ティエンガコの懲罰、長すぎない?」

 カササササッ。――風がわずかばかり木の葉を巻いて吹き抜けた。
 麗祥はカップをソーサーに置いた。片手で開いていた書籍をパタン、と閉じた。

「もう懲罰の期間は過ぎたはずだよね。それなのに終了とも延長とも何の音沙汰もない。天哥々ティエンガコいま一体どうなってるの?」

「司令本部地下施設、独居区画にて拘禁処分中」

「本当に?」

「…………。ミズガルズからアスガルトへ強制連行後、天哥々ティエンガコは速やかに独居区画へと移送・収容された。その後、審議が開かれることも弁明の機会が与えられることもなく拘禁期間が開始。滞在超過・帰還命令違反が生じた時点で360日間の拘禁はすでに決定していたそうだ。だが、通例を見るに滞在超過程度でその拘禁は長すぎる」

 耀龍は思わず背筋を伸ばして眉根を寄せた。

「だったら何で父様は天哥々ティエンガコの懲罰に対して何も言わなかったの」

「本部の決定は基本的に覆らない」

「そんなもの父様がその気になれば」

「できないことはないだろう。だが無理を押し通すことは何らかの歪みを生む。今回は天哥々ティエンガコを無罪放免とするよりも、拘禁360日間を受け容れるほうがデメリットが少なかったということだ。何より滞在超過と命令違反は事実だ。すべてを有耶無耶にすることは一大哥イーダーガが良しとなさらないだろう」

一大哥イーダーガリーも頭がカタイよ」

「そう拗ねるな」

 麗祥はフッと笑みを零した。この弟は未だに子どもの頃と変わらぬ仕草をするのだなと思って。同い年といえどやはり弟は弟だ。

「だが本部の決定が揺るがないものだからこそ、拘禁期間を過ぎて何の沙汰もないのは妙だ」

 耀龍は縁花のほうを振り返った。
 縁花は兄弟の会話に口を挟むことなどせず、ただ直立していた。

「司令本部地下施設って縁花ユェンファは行ったことがあるトコロ?」

「過去に何度か」

「独居区画にも?」

「はい」

 耀龍はへー、と短く零しただけだったが、麗祥はやや驚いた。そこへ足を踏み入れたことがあるというのは、兵士として処罰を受けたことがあるという意味であろうか。そのような人物が赫=ニーズヘクルメギルの当代の末子、つまりは最高位の貴族のひとりである耀龍の侍従を務めていることは、いささか予想外だった。
 ねえねえ、と耀龍は麗祥を呼んだ。テーブルに手を突いて顔を近づけた。

天哥々ティエンガコは本当にそこにいるの?」

「お前もやはりそう思うか」




  § § §




 暉曄宮きようきゅう・謁見の間。
 宮殿の執務を司るエリアは、いつも慌ただしい。名のある貴族が出入りし、請願を持った領民が訪れ、臣下や眷属が務めを果たす場だ。日々、数多くの人々が目まぐるしく行き交うのは、たったひとりの人物を中心とする。
 それは無論、有史最古の血脈にして最大の権勢をふるう一族、その頂点に立つ唯一にして生粋の存在、当代の族長――――赫暁ファシャオファ=ニーズヘクルメギル。
 彼は五人の男兒をもうけて尚、血気盛んな壮年男性のように雄々しかった。皺が刻まれた精悍な顔付き、広い肩幅、厚い胸板、背筋の伸びた長躯。左右に揺らして歩く長髪のその毛先まで自信に満ちる。居城や所領のみならず、世界中を我が物顔で闊歩した。誰もそれを咎めようなどとはしなかった。彼の威光に皆が当然に敬服した。

 謁見の間の大きな観音開きの扉が開いた。
 室内から赫暁が先頭を切って出て来て、長い足で廊下を突き進んだ。
 ほぼ横並びに長子・赫一瑪ファイーマが付き随った。ふたりの後ろにゾロゾロと数名が早足で続いた。

「シェルツ卿は人柄はいいが話が長い。卿との面会はしばらく予定に入れるなよ」

 赫暁は進行方向を向いたまま放言した。

「卿は御所様に謁見賜るのは三年振りでございましたから、ご相談が多くおありだったのです。本日はもう一件謁見のアポがございます。その後は部族間会議が」

「それはパスしろ」

「なりませぬ。前回ご欠席なさいました。今回は必ずご出席賜りますよう強く申し入れられております故」

 はあ~~っ、と赫暁は厭味ったらしく深い溜息を吐いた。
 息子は表情を変えなかったが、従者たちはビクッと身体を撥ねさせた。まだまだ重要なスケジュールがあとに控えているというのに、気分屋の族長に臍を曲げられては困る。
 御所様、何卒、何卒、と従者たちから何度も頭を下げられ、赫暁は仕方がなさそうにフラッと手を振ってみせた。

「分かった分かった。出てやるから少し休ませろ。仮眠する」

 赫暁の進行が居住エリアに差しかかり、従者たちは足を停めて頭を垂れて見送った。此処から先はプライベートなエリアだ。表向きの公務を支える従者たちは許しなく立ち入ることをしない。
 居住エリア内は、執務エリアとは別世界のように静かだ。赫暁をはじめとする族長一家の日々の世話をする使用人たちは、公務に仕える従者たちとは従事する務めがまったく異なる。主人が健やかに不自由なく快適に時間を過ごせるように計らうことが第一の目的だ。赫暁と赫一瑪の姿を見ると、或いは跪いて頭を垂れ、或いは微笑みかけ、外界とは分断された穏やかな時間が流れる。
 赫暁は自室へ向かう途中、使用人から耀龍と麗祥が訪問したことを伝えられた。




 族長の執務室が前室。
 耀龍と麗祥は、応接セットのソファに座して父を待っていた。黒檀のような木材を脚に大理石のように光沢のある滑らかな石を天板にした、市場ではそうそうお目にかかれない高級調度品。とはいえこの家にはその程度のものはゴロゴロしている。
 使用人がドアを開くや否や、赫暁が勢いよく入室してきた。

「どうした、リーロン。お前たちが揃って俺を待ち構えるなど久しいな」

 赫暁はふたりの息子を歓迎した。麗祥と耀龍の対面にドサッと腰を下ろした。
 赫一瑪――弟たちが一大哥イーダーガと呼ぶ長兄――族長補佐は、ソファにはかけずに後方に回り、父の後ろに立った。

「ねえねえ父様」

「いきなり失礼だぞ、ロン。ご公務がお忙しいことは存じておりますが、しばし話をするお時間をいただけますか、父様」

 耀龍は性急に口を開いたが、麗祥は弟を制して頭を下げた。同い年の兄弟でありながら性格は正反対と言ってもよい。

「いやいや、よいぞ。何だ。そう格式張るな」

 赫暁は白い歯を見せてニッと笑った。
 かなり長い時間を待たされた耀龍は、赫暁に前のめりになって口を開いた。

天哥々ティエンガコが捕まえられてから一年以上になるって、父様は知ってる?」

 赫暁は耀龍の態度とは対照的だった。ハッとした様子も失念していたという表情も見せず、ゆっくりとソファに沈みこんで肘掛けに頬杖をした。その沈着な眼差しは、耀龍と麗祥を観察しているようですらあった。

「ミズガルズにちょっと長居したくらいで懲罰一年なんて長過ぎだよ。そもそもミズガルズに行った目的の任務はちゃんと完遂してるのに、厳しすぎない? 天哥々ティエンガコはずっと仕事しっ放しだったんだからさあ、それぐらい大目に見てもいーじゃん」

天哥々ティエンガコが命令違反を犯したとことは事実。しかし、審議もなく長期間拘禁するのは理不尽です。ましてや拘禁期間は完了したにも関わらず身柄を拘束しているならば不当です」

「父様なら本部に掛け合って天哥々ティエンガコをどうにか――」

「お前たち」

 赫一瑪が一声発した瞬間、耀龍と麗祥はピタッと口を閉じた。ふたりして視線を赫暁から赫一瑪へ移動させた。

「そのようなことを請う為に父上にお時間を頂戴したのか。安易に父上のご威光に頼るなど愚昧なことを」

「でも一大哥イーダーガ、父様なら」

ファの男兒として恥ずべき行為は慎め。己の為すべきことは何であるか弁えよ。それを為す為に精進を惜しむな。ファの血族に生まれ、その名を笠に着て頼るばかりがお前たちの能か」

 厳格な長子の言は、弟ふたりの大凡想定どおりだった。父の権力を以てしてできるできない以前に、させないだろうと予想はしていた。実弟が地下深く拘束されているというのに、どうにかしてやろうという甘さはない。立場ある身でありながら拘束されるような事態を招いた行動自体が一族の不名誉だと、ならばその身を以て不名誉を雪ぐべきだと、この兄ならばそう考えるであろうことは想像に難くなかった。




 赫一瑪に要求を突っぱねられた麗祥と耀龍は、すごすごと部屋から去っていた。赫暁はふたりが出て行った扉を眺めてクッと笑みを零した。

「アイツらは昔からああだ。ひとりで俺に物を言う度胸は無く、何かあるときはふたり揃ってやってくる。まあでも、お前に口答えしかけたのはちょっとした成長か」

 赫一瑪は赫暁の揶揄い混じりの発言に、無表情のまま返事もしなかった。歳の離れた兄にとっては、あの程度では口答えした内にも入らない。

リーロン、同い年の兄弟というのはなかなか難しいモンだな。しばらく反目し合っていたようだったが、あの様子だと近頃は落ち着いたか。少しは成長したのか仲直りでもしたか」

「さて」

「うちの男共はどれもこれも妙にヒネくれてやがる。男ばっかりっつーのは難しいモンだな~?」

 赫暁は赫一瑪を横目でチラッと一瞥した。やはりピクリとも表情を変えなかった。朝から晩まで同じ表情で、仮面でもつけているのかと思うときがある。
 ――我が子ながら可愛気のない。

「その上、男なんかいくら着飾っても面白くもない。俺もひとりくらい娘を作ればよかったぜ」

「幸い父上はまだまだ男性おのことして壮健で在られます。今から励まれて子宝に恵まれることは充分に期待できるかと。無論、ご公務を優先していただきますが」

「自分じゃなくてお前たちに期待してェよ」




 赫暁の前室の外では、縁花が部屋付きの使用人を下がらせ、主人の帰りを待機していた。
 耀龍と麗祥が前室から出てきて、縁花は音を立てないようにドアを閉めた。
 耀龍は廊下をスタスタを進みながら、蟀谷こめかみに指を当てて若干首を傾げる仕草をした。
 麗祥は耀龍が何をしているのか分からなかった。その仕草を不思議そうに観察しつつ耀龍と廊下を歩いた。

耀龍ヤオロン様。首尾は」

「上々だよ。感度良好♪」

 耀龍は足を停めて縁花のほうを振り向いた。
 麗祥はその会話を聞いてピンと来た。

「まさか父様の部屋に盗聴器を仕掛けたのか?」

「人聞きが悪いよ。ちょっと荷物を置き忘れてきただけ。忘れ物するぐらい誰にでもあるでしょ」

 耀龍はまったく悪びれずに笑った。人差し指を唇の前に立ててシーッのポーズ。
 麗祥は縁花を見上げて細い眉を吊り上げた。

縁花ユェンファ。貴様がいながらロンを諫めもしないとは」

「申し訳ございません。耀龍ヤオロン様たってのお望みでしたので」

 まさか真顔でシレッと言い放たれるとは。麗祥は半ば呆れた。

「貴様の評価を改める。思っていたよりも厚顔だ」

縁花ユェンファを責めないでよ、リー。それに自分でがんばれって言ったのは一大哥イーダーガだ。だからオレはオレにできることをやる」

一大哥イーダーガのお言葉をそうとるか、お前は」

 麗祥は惘れながらも羨ましかった。
 この男は、同い年の弟は、兄である自分に決心しかねるような事柄を、いつも易々と乗り越える。自分がやりたくても思い留まってしまうことを、軽々とやってのける。そして、こちらに背中を見せつけ、まだそんなところにいるの、いつまでそうしているつもり、と焦らせる。
 耀龍にそのような考えはまったくないだろう。野心もなく楽天的な末っ子だ、本当に単純に自分のやりたいことをやるだけなのだろう。しかし、麗祥には自分の前を行く背中が、眩しく、羨ましく、妬ましかった。
 今度ばかりはともに行こう。肩を並べて進んでやろう。置いていかせるものか。お前が咎められて舌を出して笑うまで、隣を走ってやる。

「私にも」

 麗祥はスッと耀龍のすぐ隣に立った。
 耀龍は麗祥の蟀谷こめかみに人差し指をトンッと当てた。
 それは、同い年の兄弟が〝共犯〟を誓い合ったことを意味する。




〈本部と掛け合えと言われても、アレはどうせそんなところにはいやしない〉

 父の声で再生された内容に、耀龍と麗祥は顔を見合わせた。
 やはり考え至ったとおりだった。ふたりが何より敬愛する兄はいないのだ、いると言われた場所にも家にも何処にも。では何処に――――。




 麗祥と耀龍が去り、室内は赫暁と赫一瑪のふたりきりとなった。
 赫暁はソファに腰かけ、赫一瑪はその背後に控えて直立不動。プライベートな空間にいてさえ、血の繋がった父子らしい穏やかな雰囲気はなく、まるで上官と部下のような関係性だった。
 赫暁は人差し指でチョイチョイと赫一瑪を呼んだ。赫一瑪は腰を折って父に顔を近づけた。

「ところで一瑪イーマ。アレと直に会ったのは久々だったろうに、顔を見るなり直ぐさま受け渡したそうじゃないか。お前は冷たいヤツだなァ。再会の抱擁でもしてやればよかったのに」

 赫一瑪は、何だそんなことかと言わんばかりに頭をスッと元の位置に戻した。

「それがあのときの私の役目でした」

「兄のお前から見て、アレはどうだった」

「父上のご想像どおりかと。何ら変わりなく」

「変わりなくか。アレはそうだろうな。リーの一個小隊と対峙したと聞いたが、それでもまだお前と反目する気力は失せんか。……まあ、今も息災にしているとは限らんが」

 赫暁は足を組み直して頬杖を突いた。

リーロンが勘繰るのも無理はない。処罰の期間を過ぎても拘束し続けるなど、おかしいと考えて当然だ。アレの隊からの問い合わせも再三どころじゃあない。今にも乗りこんできそうな勢いだというじゃないか」

「そのようなことはさせません」

「まあまあ。うちとあそこが喧嘩しても得することはないんだ。そこはのらりくらり穏便にやるさ」

 麗祥と耀龍は純粋に天尊ティエンゾンが戻らぬことを案じたが、赫暁と赫一瑪の様子は異なった。天尊が現在置かれている情況を或る程度推定し、その上でなお、別の面での懸念があった。最も近しい身内でも、このふたりしか把握し得ない事情。それは下の弟ふたりを蚊帳の外に置いてまで隠したい秘密。

「で、本部から何か沙汰はあったか?」

 赫暁は赫一瑪のほうを見ずに尋ねた。

「いいえ。天尊ティエンゾンを正当に拘禁できる期間は経過したにも関わらず、未だ沈黙しております」

「だろうな。アレを押さえているのは本部ではなく《枢密院》だ」

「今しばらく静観を続けられますか?」

「静観なあ……。何にせよそろそろ事が動き出す頃合だ」

 赫暁はフンと鼻で笑った。

「アレが戻ってきて一年以上。何も進展がないことに業を煮やしているのは《枢密院》のジジイ共のほうだろうさ」




熒閂の最新話はクロスフォリオにて先行公開( https://xfolio.jp/portfolio/ke1sen/series/1023833 )
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