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2話 兄王子
そのまま待たせている馬車に乗り込んで邸に帰るというのもなんだか嫌で、王城内を特に目的もなく歩いていたエルヴィラを引き留めたのは先程彼女を追い返したアラン…ではなく、その兄王子であるヴェヴェルだった。
「まあ、ご婚約をされるのですか。お恥ずかしながら存じ上げませんでしたわ」
「当然だよ、アランにもまだ言えてないんだ。無謀な申し出なのは承知の上だったが何年も粘ったからね、楽しみだよ」
「お祝い申し上げます、わたくしも未来のお義姉様にお会いするのが楽しみですわ」
「ありがとう…そうだ、ランヴァルド侯爵が落馬したという報せは受けたが、その後はどうだ?」
「お父様はお医者様に絶対に安静にしているよう忠告されていたのですけれど、どうも落ち着かれないようで屋敷を歩き回ってはお母様に連れ戻されていましたわ。けれど、ご快復も早いようでもう乗馬をされてもよいのですって。またお怪我をされないか心配なので控えて頂きたいのですけれど」
「ははっ、侯爵に安静というのは無理だろう。夫人も苦労するな、もう時期エルヴィラの誕生パーティだし張り切っているのだろな」
「そうなんです、お母様より率先されて取り仕切られていらっしゃるんですの。困りますわ」
王太子の執務室という、普通の者ならば重苦しく緊張を覚える場所での談話となったが、昔からよく見慣れた部屋故にエルヴィラに特に緊張や違和感はない。しかし、大口を開けて王族らしからぬ笑い声をあげていたヴェヴェルはふと居住まいを正すと眉間に皺を寄せ、口を開いた。
「最近は、アランと上手くいってる?」
他愛のない世間話からいきなり核心をつくような話題に変わったことにエルヴィラはほんの少しだけ身体を揺らしたがすぐに落ち着く。手馴れたように自ら紅茶を注ぐヴェヴェルからカップを受け取りながら、エルヴィラは王太子の質問に曖昧な笑みを返した。
「アル様はいつも通りです、ご存知でしょうけれど先程もアルバムをご覧になっていらっしゃるだけなのに忙しいと追い返されてしまいました。ヴェヴェル様の所に行けと」
「困ったものだ、やはり反抗期かな…いい加減、俺からも言おう」
「御心配には及びません、少しお話したかっただけですもの…あら、もうこんな時間ですのね。そろそろご政務もあるでしょう? お話を聞いてくださってありがとうございました。御機嫌よう、ヴェヴェル様」
ちらりと時計を見上げ、少々長居が過ぎたことに気が付いたエルヴィラがそそくさとアランと話し合うために持参したのだろう自身の誕生パーティーに関する書類を抱えて簡易的な退出の礼をするとそのまま王太子の執務室を出ていく。
それをひらひらと軽く手を振りながら見送ったヴェヴェルは大きな溜め息を吐いた。弟王子の婚約者への態度の急変はちょうど一年程前から突如始まった。それまではエルヴィラを愛おしいと思っていることを欠片も隠そうとしなかった者が今では彼女を追い返すのだ、何かあったとしか思えなかった。
(反抗期ではなく、思春期か…? どうせそのアルバムというのもエルヴィラの肖像画と写真だろ、年々増えていってるのを知られていないと思っているんだろうが…)
「はあ…アランを呼んでくれ。拒んだら、多少無理やりに連れてきて構わん」
「まあ、ご婚約をされるのですか。お恥ずかしながら存じ上げませんでしたわ」
「当然だよ、アランにもまだ言えてないんだ。無謀な申し出なのは承知の上だったが何年も粘ったからね、楽しみだよ」
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「ありがとう…そうだ、ランヴァルド侯爵が落馬したという報せは受けたが、その後はどうだ?」
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「ははっ、侯爵に安静というのは無理だろう。夫人も苦労するな、もう時期エルヴィラの誕生パーティだし張り切っているのだろな」
「そうなんです、お母様より率先されて取り仕切られていらっしゃるんですの。困りますわ」
王太子の執務室という、普通の者ならば重苦しく緊張を覚える場所での談話となったが、昔からよく見慣れた部屋故にエルヴィラに特に緊張や違和感はない。しかし、大口を開けて王族らしからぬ笑い声をあげていたヴェヴェルはふと居住まいを正すと眉間に皺を寄せ、口を開いた。
「最近は、アランと上手くいってる?」
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「アル様はいつも通りです、ご存知でしょうけれど先程もアルバムをご覧になっていらっしゃるだけなのに忙しいと追い返されてしまいました。ヴェヴェル様の所に行けと」
「困ったものだ、やはり反抗期かな…いい加減、俺からも言おう」
「御心配には及びません、少しお話したかっただけですもの…あら、もうこんな時間ですのね。そろそろご政務もあるでしょう? お話を聞いてくださってありがとうございました。御機嫌よう、ヴェヴェル様」
ちらりと時計を見上げ、少々長居が過ぎたことに気が付いたエルヴィラがそそくさとアランと話し合うために持参したのだろう自身の誕生パーティーに関する書類を抱えて簡易的な退出の礼をするとそのまま王太子の執務室を出ていく。
それをひらひらと軽く手を振りながら見送ったヴェヴェルは大きな溜め息を吐いた。弟王子の婚約者への態度の急変はちょうど一年程前から突如始まった。それまではエルヴィラを愛おしいと思っていることを欠片も隠そうとしなかった者が今では彼女を追い返すのだ、何かあったとしか思えなかった。
(反抗期ではなく、思春期か…? どうせそのアルバムというのもエルヴィラの肖像画と写真だろ、年々増えていってるのを知られていないと思っているんだろうが…)
「はあ…アランを呼んでくれ。拒んだら、多少無理やりに連れてきて構わん」
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