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<22・休息>
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ぱち、ぱち、ぱち。
何かが弾けるような音が聞こえる。意識が浮上してきた時、ポーラが最初に思ったのはそれだった。まだ頭は痛いし、体はやけに怠い。それでも強引に瞼を持ち上げ、聞こえていた音が焚火とそれにかけられた鍋の音だったということを知る。
ヘキの町の道路の真ん中で、自分は倒れた筈だ。サミュエルと一緒に。しかし、明らかにここはどこぞのテントの中である。頭上をぐるりと緑色の布が覆っている。ポーラはその布の隙間から外を見ている状態だった。
明るい陽射しが、森の木々の間から射し込んでいる。自然に囲まれたテントの前で、誰かが食事を作っているのだ。霞む頭でなんとなく、“ユーリか?”と思った。それは多分、昨夜の出来事が夢か何かであってほしいという、希望的観測も含んでのことなのだろうけれど。
「あ……」
反対側に首を傾ければ、自分と同じく地べたに引かれたゴザの上で寝かされているサミュエルの姿が。額にはガーゼが貼られている。誰かが手当をしてくれたのだ。
「気付いた?」
「!」
いつの間にか、食事を作っていた誰かがこちらを見ていた。スープらしきものを持っててくてくと歩いてくる。テントの入口が大きく開かれた。眩しい陽射しが瞳を刺して、思わず呻くことになる。
「お、お前は……」
優理よりさらに小柄に見える黒髪童顔の少年。初めて見る顔だった。――まあ、見たことがあっても、一発で覚えられるほど特徴のある顔でもないというのも事実だったが。
「助けてくれた、のか?……ありがとう」
この状況、どうやら自分達は彼に助けられたのは事実であるようだ。銀色の器に入ったスープを受け取り、素直に礼を言うことにする。普通に考えるなら、目的を達成した時点で自分達はそのまま始末されていてもなんらおかしくはない。奴の能力で気絶させられていたのだから、煮るなり焼くなり好きにしろの状態だったはずだ。それが助かったのは、確実に彼等の功績によるものだろう。
「どういたしまして。……良かった、もっと怖そうな人かと思ってたけど、ほっとした」
少年はあからさまに安堵した様子でこう告げた。
「えっと、まず自己紹介かな。僕は岸本空一。クーイチでいいよ。その、園部優理君の、学校のクラスメートというか。同じ転生者なんだけど……聴いてる?」
「!お前、優理が探してた奴か……!」
空一と名乗る少年は、その言葉に頷いた。同じくこの世界に転生してきた筈なのに、その姿形が一向に見えないし情報も見つからない彼のことを優理は心配していたようだった。ひとまず行く宛てが他にないのでノース・ブルーを目指したものの、空一のことがずっと気がかりになっていたのは明白である。ヘキの町では、彼についても含めて情報収集をする予定になっていたのだ。
「嬉しいな、園部君、僕のことも探してくれてたんだ……」
彼は少し照れたように頬を染めた。
「とりあえず、此処はヘキの町の郊外。レジスタンスたちの集落。魔法結界も張られてるし、そうそう見つかることはないと思うよ」
「レジスタンス?」
「君達が来たシュカの町と同じような状況なんだよね、ここ。というか、ある意味ではシュカの町より酷いかも。大人の男の人達がみーんな魔石採掘の労働力に回されちゃってるから、それ以外のお店や会社、公的機関が回らなくてみんなすごく困ってるんだ。このままじゃいけないってんで、残った女の人達を中心に結成されたレジスタンスが村の外に集まってる。他の町から逃げてきた人もいるけどね。僕はこの場所に、三か月前から匿ってもらってるんだ」
「さ」
唖然とした。というのも、優理が言っていたのと時系列が合わないからだ。確か彼は、シュカの町に来た時点で“この世界に来たばかり”と言っていたはず。というか、その前日くらいに隣のグレンの町に来たばかりだったのではないか。
要するに、時間が合わない。優理と目の前の空一は、同時に異世界転生したわけではなかったのか。
「うん、なんか変だよね。……転移・転生の際に魂が落ちるポイントがズレたんじゃないかなーとか僕は考察してる。サトヤ……僕達をこの世界に寄越した魔女が、意図的にそうしたのかどうかはわからないけど」
とりあえずスープ食べてよ、と言うのでありがたく頂戴することにする。クリーム色のとろみがついたスープの中に、いくつものカラフルなキノコ類が浮いていた。見た目は少々派手だが、味は悪くない。この少年、元々料理が得意だったりするのだろうか。それともこの集落の人間達にいろいろ教えてもらったのだろうか。
「僕は、一人であちこち回る勇気なんかなかったから……ほとんどこの集落にいるか、あるいはレジスタンスの人と一緒に他の町を見て回るくらいしかしていないんだけど。そのおかげで、結構情報には詳しかったりするよ。なんといっても、ここの人達すごく情報通が多いんだ。元々新聞社で働いてた元記者さんとか、元冒険者さんとかが少なくないからなんだけど」
「ひょっとして、アタシらのことも予め知ってたりするのか」
「まあね。君達が思ってるより、シュカの町の出来事は広まってるんだよ。……魔女の手下の転生者に苦労させられてきた人達は多いからね。君達のことも知ってる。オーガの一族のハーフで武闘家のポーラさんと、グレンの町の町長の息子で魔導師の一族の子供であるサミュエル君でしょ?」
そこまで分かっているのなら、まあ話は早いだろう。同時に、少し渋い気持ちになった。シュカの町でぐずぐずしないで、翌日にはもう出発したつもりだったが――ここまで情報が伝わるのが早いとは。他の国や土地でも、自分達の顔は結構知られている可能性がある。既に隠密行動には向かなくなっているということだろう。
そしてもう一つ。この様子だと、自分達がヘキの町にやってきたことにも彼等は気づいていたようだ。それならそれで、罠にハメられる前に教えてくれればいいものを。
「助けに行くのが遅れてごめんなさい」
それは、空一本人も気に病んでいたことなのだろう。素直に頭を下げられた。
「まさか今夜中に襲われるとは思ってなかったんだ。それでもどうにか土壇場で襲撃を察知して、遠距離から仲間が狙撃で助けようとしてたんだけど、狙えるタイミングがなかったんだって。というか、途中から雉本光を撃とうにも撃てなくなっちゃった。ポーラさんがショック死する可能性があったからさ」
「あいつの能力か」
「そう。“激痛共有”。地味に見えて、あんなに怖い能力もないと僕は思ってる。あいつが生きている限り使用制限もないし、実は効果範囲も広いんだ。あいつが能力を使うと、あいつに今まで与えたダメージも含めて全ての痛みが周囲の人間に電波する。しかも、あいつ自身は驚くほどに痛みへの耐性が強い。僕は、あいつが自分で自分の腸を引きずり出したところまで見たことがあるよ。……そんな苦痛を与えられて、耐えられる人間なんかまずいない。一度それを経験してしまったら、次を想像するだけで震えが止まらなくなるってなもんだ」
「……そうだな」
あの時、ポーラはアバラを粉砕された痛みや、腕をナイフで抉られる痛みを同時に経験しただけだった。それでもあまりの激痛に、その場で蹲る以外できなくなったのだ。あれほど拷問に適した能力はないだろう。相手に一切血を流させず、苦痛だけをえんえんと与え続けることができるのだから。殺すことなく、生き地獄を与えられ続けるかもしれない恐怖に耐えられる人間などそうそういるものではないに違いない。
「あいつは逆らう人間には、容赦なく能力を使って恐怖を刻みこむ。……痛みを与えられ続けて廃人になってしまったり、それでショック死してしまった町の人もいるみたいだ。とにかく、そんなものを見せられたみんな従うしかないだろ。……あいつ自身の格闘能力もそこそこなもんだし、ましてや下手に攻撃したら痛みの共有を受けてこっちが酷い目をみる。そんな相手にうかつに手出しもできやしない。魔封じの腕輪でも嵌めれば対処できるのかもしれないけど、そこまで近づける状況にまずならない。……だからヘキの人達は怯えて、あいつに言われるまま魔石の採掘を手伝わされてるってわけだ」
なんとなく状況は理解した。地味なスキルだと思ったが、想像以上に厄介極まりないものだったということらしい。
同時に、一つ疑問も出る。さっき空一は言ったはずだ、光が己の腸を自ら引きずり出しているのを見た、と。普通はそんな怪我をしたら、よほど腕のいい医者に診て貰わない限りそのまま死んでしまうと思うのだが。
「あいつ、魔法も使えたりするのか?」
ポーラの言葉に、正解、と空一は頷いた。
「あのスキルに加えて、あいつは白魔法に関してはかなりの使い手みたいだよ。誰に教わったのか知らないけど、回復魔法だけはやけに手馴れてる。だから、自分でつけた傷は即座に自分で治せるんだ。だからこそコンボが凶悪なんだよ。やりすぎて死なない範囲で自傷して、周囲の動きを完全に止めてくるんだから。それで、致命傷になりそうになったら回復魔法で治して対処する。えんえんとそのループみたい」
「厄介だな」
「うん。だからみんな手を焼いてる。僕がこの場所に来る直前にヘキの町は占拠されたみたいだけど……三か月間、みんなが手も足もでなかったのはそういうことみたいだ」
「なるほど」
ならば、どうにかあのスキルを封じるか、回復させない方法を考えなければいけないということか。あるいは、光に自傷行為をさせないようにすることができれば対処が可能かもしれない。
問題は。現状その方法が、自分には全く思いつかないということだが。
――くそ、こんな時、ユーリがいれば……少しはマシな方法を考えてくれたかもしれないってのに!
その本人が現在囚われの身なんて、笑えもしない話である。想像していた以上に、自分は彼を頼りにしてしまっていたようだ。元プロの傭兵が、なんとも情けない話だ。素人の少年の作戦に、すっかり頼り切りになっていたのだから。
「ユーリ……早く助けないと。連れ去られたってことは、何か理由があるはずだし……すぐ殺されないのかもしれないけど……!」
ポーラの言葉に、その通りだね、と空一と頷いた。
「僕達の方も準備は整ってきたところだし、そろそろ仕掛けるタイミングだってみんなと話してたところなんだ。園部君は僕の恩人でもある。絶対に助けなくちゃ」
「方法はあるのかよ」
「君とサミュエル君が協力してくれるなら、勝率は上がると思うよ」
にやり、と笑う少年。なんだろう、同じ転生者だからだろうか、なんとなく優理に似ているように感じる。空気感というか、信念とでも言えばいいのか。困っている人をほっとけなさそうなところが特に。
「とりあえず、サミュエル君を起こしてくれる?ごはん食べたら、作戦会議するよ」
何かが弾けるような音が聞こえる。意識が浮上してきた時、ポーラが最初に思ったのはそれだった。まだ頭は痛いし、体はやけに怠い。それでも強引に瞼を持ち上げ、聞こえていた音が焚火とそれにかけられた鍋の音だったということを知る。
ヘキの町の道路の真ん中で、自分は倒れた筈だ。サミュエルと一緒に。しかし、明らかにここはどこぞのテントの中である。頭上をぐるりと緑色の布が覆っている。ポーラはその布の隙間から外を見ている状態だった。
明るい陽射しが、森の木々の間から射し込んでいる。自然に囲まれたテントの前で、誰かが食事を作っているのだ。霞む頭でなんとなく、“ユーリか?”と思った。それは多分、昨夜の出来事が夢か何かであってほしいという、希望的観測も含んでのことなのだろうけれど。
「あ……」
反対側に首を傾ければ、自分と同じく地べたに引かれたゴザの上で寝かされているサミュエルの姿が。額にはガーゼが貼られている。誰かが手当をしてくれたのだ。
「気付いた?」
「!」
いつの間にか、食事を作っていた誰かがこちらを見ていた。スープらしきものを持っててくてくと歩いてくる。テントの入口が大きく開かれた。眩しい陽射しが瞳を刺して、思わず呻くことになる。
「お、お前は……」
優理よりさらに小柄に見える黒髪童顔の少年。初めて見る顔だった。――まあ、見たことがあっても、一発で覚えられるほど特徴のある顔でもないというのも事実だったが。
「助けてくれた、のか?……ありがとう」
この状況、どうやら自分達は彼に助けられたのは事実であるようだ。銀色の器に入ったスープを受け取り、素直に礼を言うことにする。普通に考えるなら、目的を達成した時点で自分達はそのまま始末されていてもなんらおかしくはない。奴の能力で気絶させられていたのだから、煮るなり焼くなり好きにしろの状態だったはずだ。それが助かったのは、確実に彼等の功績によるものだろう。
「どういたしまして。……良かった、もっと怖そうな人かと思ってたけど、ほっとした」
少年はあからさまに安堵した様子でこう告げた。
「えっと、まず自己紹介かな。僕は岸本空一。クーイチでいいよ。その、園部優理君の、学校のクラスメートというか。同じ転生者なんだけど……聴いてる?」
「!お前、優理が探してた奴か……!」
空一と名乗る少年は、その言葉に頷いた。同じくこの世界に転生してきた筈なのに、その姿形が一向に見えないし情報も見つからない彼のことを優理は心配していたようだった。ひとまず行く宛てが他にないのでノース・ブルーを目指したものの、空一のことがずっと気がかりになっていたのは明白である。ヘキの町では、彼についても含めて情報収集をする予定になっていたのだ。
「嬉しいな、園部君、僕のことも探してくれてたんだ……」
彼は少し照れたように頬を染めた。
「とりあえず、此処はヘキの町の郊外。レジスタンスたちの集落。魔法結界も張られてるし、そうそう見つかることはないと思うよ」
「レジスタンス?」
「君達が来たシュカの町と同じような状況なんだよね、ここ。というか、ある意味ではシュカの町より酷いかも。大人の男の人達がみーんな魔石採掘の労働力に回されちゃってるから、それ以外のお店や会社、公的機関が回らなくてみんなすごく困ってるんだ。このままじゃいけないってんで、残った女の人達を中心に結成されたレジスタンスが村の外に集まってる。他の町から逃げてきた人もいるけどね。僕はこの場所に、三か月前から匿ってもらってるんだ」
「さ」
唖然とした。というのも、優理が言っていたのと時系列が合わないからだ。確か彼は、シュカの町に来た時点で“この世界に来たばかり”と言っていたはず。というか、その前日くらいに隣のグレンの町に来たばかりだったのではないか。
要するに、時間が合わない。優理と目の前の空一は、同時に異世界転生したわけではなかったのか。
「うん、なんか変だよね。……転移・転生の際に魂が落ちるポイントがズレたんじゃないかなーとか僕は考察してる。サトヤ……僕達をこの世界に寄越した魔女が、意図的にそうしたのかどうかはわからないけど」
とりあえずスープ食べてよ、と言うのでありがたく頂戴することにする。クリーム色のとろみがついたスープの中に、いくつものカラフルなキノコ類が浮いていた。見た目は少々派手だが、味は悪くない。この少年、元々料理が得意だったりするのだろうか。それともこの集落の人間達にいろいろ教えてもらったのだろうか。
「僕は、一人であちこち回る勇気なんかなかったから……ほとんどこの集落にいるか、あるいはレジスタンスの人と一緒に他の町を見て回るくらいしかしていないんだけど。そのおかげで、結構情報には詳しかったりするよ。なんといっても、ここの人達すごく情報通が多いんだ。元々新聞社で働いてた元記者さんとか、元冒険者さんとかが少なくないからなんだけど」
「ひょっとして、アタシらのことも予め知ってたりするのか」
「まあね。君達が思ってるより、シュカの町の出来事は広まってるんだよ。……魔女の手下の転生者に苦労させられてきた人達は多いからね。君達のことも知ってる。オーガの一族のハーフで武闘家のポーラさんと、グレンの町の町長の息子で魔導師の一族の子供であるサミュエル君でしょ?」
そこまで分かっているのなら、まあ話は早いだろう。同時に、少し渋い気持ちになった。シュカの町でぐずぐずしないで、翌日にはもう出発したつもりだったが――ここまで情報が伝わるのが早いとは。他の国や土地でも、自分達の顔は結構知られている可能性がある。既に隠密行動には向かなくなっているということだろう。
そしてもう一つ。この様子だと、自分達がヘキの町にやってきたことにも彼等は気づいていたようだ。それならそれで、罠にハメられる前に教えてくれればいいものを。
「助けに行くのが遅れてごめんなさい」
それは、空一本人も気に病んでいたことなのだろう。素直に頭を下げられた。
「まさか今夜中に襲われるとは思ってなかったんだ。それでもどうにか土壇場で襲撃を察知して、遠距離から仲間が狙撃で助けようとしてたんだけど、狙えるタイミングがなかったんだって。というか、途中から雉本光を撃とうにも撃てなくなっちゃった。ポーラさんがショック死する可能性があったからさ」
「あいつの能力か」
「そう。“激痛共有”。地味に見えて、あんなに怖い能力もないと僕は思ってる。あいつが生きている限り使用制限もないし、実は効果範囲も広いんだ。あいつが能力を使うと、あいつに今まで与えたダメージも含めて全ての痛みが周囲の人間に電波する。しかも、あいつ自身は驚くほどに痛みへの耐性が強い。僕は、あいつが自分で自分の腸を引きずり出したところまで見たことがあるよ。……そんな苦痛を与えられて、耐えられる人間なんかまずいない。一度それを経験してしまったら、次を想像するだけで震えが止まらなくなるってなもんだ」
「……そうだな」
あの時、ポーラはアバラを粉砕された痛みや、腕をナイフで抉られる痛みを同時に経験しただけだった。それでもあまりの激痛に、その場で蹲る以外できなくなったのだ。あれほど拷問に適した能力はないだろう。相手に一切血を流させず、苦痛だけをえんえんと与え続けることができるのだから。殺すことなく、生き地獄を与えられ続けるかもしれない恐怖に耐えられる人間などそうそういるものではないに違いない。
「あいつは逆らう人間には、容赦なく能力を使って恐怖を刻みこむ。……痛みを与えられ続けて廃人になってしまったり、それでショック死してしまった町の人もいるみたいだ。とにかく、そんなものを見せられたみんな従うしかないだろ。……あいつ自身の格闘能力もそこそこなもんだし、ましてや下手に攻撃したら痛みの共有を受けてこっちが酷い目をみる。そんな相手にうかつに手出しもできやしない。魔封じの腕輪でも嵌めれば対処できるのかもしれないけど、そこまで近づける状況にまずならない。……だからヘキの人達は怯えて、あいつに言われるまま魔石の採掘を手伝わされてるってわけだ」
なんとなく状況は理解した。地味なスキルだと思ったが、想像以上に厄介極まりないものだったということらしい。
同時に、一つ疑問も出る。さっき空一は言ったはずだ、光が己の腸を自ら引きずり出しているのを見た、と。普通はそんな怪我をしたら、よほど腕のいい医者に診て貰わない限りそのまま死んでしまうと思うのだが。
「あいつ、魔法も使えたりするのか?」
ポーラの言葉に、正解、と空一は頷いた。
「あのスキルに加えて、あいつは白魔法に関してはかなりの使い手みたいだよ。誰に教わったのか知らないけど、回復魔法だけはやけに手馴れてる。だから、自分でつけた傷は即座に自分で治せるんだ。だからこそコンボが凶悪なんだよ。やりすぎて死なない範囲で自傷して、周囲の動きを完全に止めてくるんだから。それで、致命傷になりそうになったら回復魔法で治して対処する。えんえんとそのループみたい」
「厄介だな」
「うん。だからみんな手を焼いてる。僕がこの場所に来る直前にヘキの町は占拠されたみたいだけど……三か月間、みんなが手も足もでなかったのはそういうことみたいだ」
「なるほど」
ならば、どうにかあのスキルを封じるか、回復させない方法を考えなければいけないということか。あるいは、光に自傷行為をさせないようにすることができれば対処が可能かもしれない。
問題は。現状その方法が、自分には全く思いつかないということだが。
――くそ、こんな時、ユーリがいれば……少しはマシな方法を考えてくれたかもしれないってのに!
その本人が現在囚われの身なんて、笑えもしない話である。想像していた以上に、自分は彼を頼りにしてしまっていたようだ。元プロの傭兵が、なんとも情けない話だ。素人の少年の作戦に、すっかり頼り切りになっていたのだから。
「ユーリ……早く助けないと。連れ去られたってことは、何か理由があるはずだし……すぐ殺されないのかもしれないけど……!」
ポーラの言葉に、その通りだね、と空一と頷いた。
「僕達の方も準備は整ってきたところだし、そろそろ仕掛けるタイミングだってみんなと話してたところなんだ。園部君は僕の恩人でもある。絶対に助けなくちゃ」
「方法はあるのかよ」
「君とサミュエル君が協力してくれるなら、勝率は上がると思うよ」
にやり、と笑う少年。なんだろう、同じ転生者だからだろうか、なんとなく優理に似ているように感じる。空気感というか、信念とでも言えばいいのか。困っている人をほっとけなさそうなところが特に。
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