社員旅行は、秘密の恋が始まる

狭山雪菜

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部長の独白2

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決断してからは、行動に移すのは早かった。
まず、1番良い大学へと進学し、時間ができたら彼女に会いに行った。
すくすく美しく育つ彼女に見惚れては、もっと頑張らなければ、と自分を鼓舞した。
大学卒業して就職すると、忙しくなり彼女に会いに行けない時期がながくなっていた。
流石に彼女を見ないと仕事も不調だと、仕事を切り上げ彼女の家の最寄りの駅に着くと、16歳になった彼女は、同じ高校の男子生徒と手を繋いでいた。
頭に雷を打たれたような激しい動揺と、衝撃が薄くなると沸々と怒りが込み上げてきた。

ーー瑠璃に触るなんてっ!

どうしようもない怒りに2人の手を引き離し、間に入ろうとしたのだが、思い留まった。
まだ、彼女の前に一度も出た事ない俺が2人の間に入ったら、確実に不審者になり初々しい彼女達の絆が深まりそうな気がした。

ーー耐えるしかない、耐えるしかない

ぐっと拳を握り、歯を食いしばった。

ーー俺に出来る事をしなければいけない

彼女の男を調べ、不穏な動きを見せるのを辛抱強く待った。
すると、男の方が女友達と出かけているのを知った。俺はこのチャンスを逃がさないと、写真を撮り浮気をしているとも、してないとも言えない微妙な写真を選び彼女のアドレスへと捨てアドで送った。彼女のアドレスは調査会社に頼み手に入れていた。
しばらくすると、彼女は付き合っていた男と別れた事を知った。きっと男も他にやましい何かあったのかもしれない。
それからといもの、彼女に男の気配が現れれば探偵を使い相手の弱点を調べ上げ、彼女の別れさせては早く彼女と一緒になりたいと強く思うようになった。

ーーだが、一番手強かったのは、最後の彼氏だな

名前は忘れたが、彼女のことを心底愛し彼女も強く惹かれていた。いくら調べようとも無害な男は、彼女との結婚を希望していた。そこで俺は彼の同僚を使い合コンを頻繁にセッティングしては、無害な男が掛かるのを待った。それでも落ちない男に苛々が募り始めた頃、男の同期の女が惚れているのに気がつき、すぐさま探偵を使い2人の仲を深め見事に瑠璃と別れさせる事に成功した。
ーー別れさせるのに、1年半掛かったが
その頃には瑠璃は軽い男性不信になったらしく、恋愛をする気配がなくなった。

別れの会話をして1人で帰る瑠璃が、涙を流している彼女を抱きしめたくてしょうがなかったが、ぐっと我慢した。

ーー彼女と結婚し生涯を共にするのは俺と決まっているから

それだけを信じてーー



*******************


ーー去年瑠璃が旅行に行けないと知ってどれだけ落胆したのか、君は知らないだろうな

彼女の頬に掛かる髪をどかしながら過去を振り返っていた。

ーーああ、やっと手に入れた…俺の…愛しい人
肩が露わになった彼女に口づけをする。先程よりも少し長めに触れ、ちゅぅっと音がする。
「んっ」
彼女の息が甘くなり、ゆっくりと目が開き俺を見ると微笑んだ。そのまま彼女に覆い被さるように彼女の左肩に顎を乗せると、彼女が左腕を上げ俺の髪に指を絡めた。
「起こしちゃってごめん」
ちゅっちゅっと肩にキスをする。擽ったそうに肩をすくめる彼女は、ふふふっと笑い俺の耳のもみあげにお返しにキスをしてくれる。
「もう…朝…?」
「ああ、もう朝だ」
肩越しに彼女と啄むキスに、至福の時を感じる。彼女の左腕の形を確かめるように触り手を取る。彼女の腕を曲げると彼女の細い指の薬指に、昨日プレゼントした指輪がキラキラと光る。お互い指輪を見つめ指を絡めると、彼女の指も俺に絡める。
「大事にする」
「…信じてます」
濁すように言う彼女に、歴代の恋人との別れの原因を作っていた俺は苦笑する。

ーー信じなくてもいいさ、もう俺のものだから、手放したりしない
そういえば、彼女の言う重いと言っていた言動は、付き合うなら当たり前の事すぎて、彼女なら喜んで束縛されたいと願い、彼女の肩に顔を埋めた。





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