社員旅行は、秘密の恋が始まる

狭山雪菜

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順調な交際

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彼ーー健吾との関係は、恐ろしい程順調に過ぎている。

朝起きたら、彼にモーニングコールをする。スピーカー音にして準備を始め白湯を飲み、朝待ち合わせ場所の私の一人暮らししている家の近くのコーヒーショップへと向かう。彼はいつもお店奥の席を取り新聞を読んでいる、コーヒーとサンドイッチを頼み、ついでにといつも私の分のカフェラテとクロワッサンを頼む。
何度も何度も自分で買いますから、と言っても、今度ねと聞き流す彼に、もう甘えてしまえと開き直っている。
「…おはよう」
新聞をたたみ、椅子に置くと私を笑顔で迎えてくれる。
「おはよう…ございます」
朝話したのにやっぱり直接会って声を聴くと、ドキドキして頬が赤くなり照れてしまう。
彼の前に座ると、すでにテーブルの上には温かい朝食があり、2人でいただきます、と言って食べ始める。

昨日の夜は一緒に居れなかった。彼が接待のために外食をするからと。
ーーでも終わったら、電話してくれたし…テレビ電話だったけど
付き合って半年になるーー朝は私が彼を起こし、夜は彼が私におやすみと電話をするルールが出来上がっていた。予定ないなら夕飯も一緒に、その他にも金曜日からは、彼の家か私の家にお泊り。日曜日の夜に別れる。そんなルーティンが出来ていた。

朝食が終わると食器を返却口に戻し、飲み物がまだ残っているマグカップがあるテーブルに戻り、少しだけ話す。テーブルの上にある私の手に彼の手が重なる。
大きな手だな、と見惚れていると、

「そろそろ一緒に住まない?朝起きたら瑠璃を近くに感じたい」

指を絡め私の指を摩る彼の指に、ドキドキして彼に視線を戻す。熱い眼差しの彼が私を見ていた。
「…まだ、早いよ…一緒に住んだら…簡単に別れられないよ…?」
何度も同じやり取りをしているため、彼に…というか、私のために言う。彼と居ると自分がダメになる。それは日々肌で感じている。全力で甘やかし、愛してくれる。
ーー今までの彼氏とは違う、紳士で優しくて…
好きになって別れる時の事を考えては、落ち込んで夜こっそり泣いているのを、彼はきっと知らない。
「一緒に住むのに早いもの遅いもないよ…瑠璃は…別れたいの…?」
悲しそうな彼の声に慌てて否定する。
「そんなわけっ…そんなわけない」
声が大きくなってしまって、声を潜めた。
「ならどうして、一緒に住んでくれないの?」
「…だって」
視線を下げる。

ーー弱気な自分が情けない、怖い…これ以上側にいると…
この不安な気持ちを伝えなければと、顔を上げ
「…健吾さ」
「そろそろ、仕事に行こう…送るよ」
私の声を遮り、彼は私の手を取り立ち上がった。




*******************


彼の愛車メルセデスベンツの黒の4ドアクーペという車らしい。助手席に座りシートベルトをつけると、車が発車した。

毎朝彼の車で職場の近くに降ろしてもらい、彼は会社の地下駐車場にと行くのだ。会社近くに到着する前の僅かな時間も、赤信号になると私の手を握り、口づけをされる。
「健吾さん、さっきの話だけど…あの」
「瑠璃…俺は君といつでも一緒に居たいんだ、だが…君の気持ちを無視して同棲を強行しないし、断ったからと言って嫌いにもならないよ」
彼は前方を見ながら運転をする。私は彼の方を見て、ちゃんと伝えないとと、勇気を振り絞って声を出す。
「健吾さん…違う…よ、私も…もっと一緒に居たいけど…怖い」
ぎゅっと自分の手を膝の上で握り固まる私を見かねて、車が方向転換し、道路の端へと停まる。
「瑠璃」
彼が私の手を取り、ちゅっと口づけをする。
「この話は終わり…今日はね、そうだ今日は泊まりに来てよ」
「…今日…?でも今日は週末じゃないよ」
「たまには、さ…美味しい瑠璃のご飯食べたいな」
顔を寄せ啄むキスに、嬉しくて目を閉じた私は、話を変えられた事に気がつかない。
「何…食べたいの…?」
「瑠璃が作る物ならなんでも…ご馳走様だから」
そう囁いた彼が、私の口を塞ぎ舌を絡めた。


時間が許す限りお互いの舌を絡め、離れる事はなかった。
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