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リクエスト 休日のデート パン屋常連の伝説の騎士様
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これはまだ、2人がお付き合いを始めた頃のお話。
「マチルダッ!パンが焼けたよっ!」
「はいっ!」
店内のパンの在庫を調べて、木製のトングでパンの位置を直して私――マチルダは、この街一番の味と価格を誇るベーカリー[ROSE]に勤め始めて5ヶ月の新米店員だ。このパン屋は、遠方から遥々やってくるお客様も多く、普段の食事のお供だけじゃなくて、お土産としても喜ばれる有名なお店だ。
サクッとした食感とふんわりとしたバニラの香りが癖になるクロワッサンがいくつも並ぶ大きな鉄板から、店内へと出すために深いボウル型のカゴにパンが崩れないようにそっと載せた。カゴを持っていつもクロワッサンを置いている定位置へと置くと、焼き立ての文字が書かれた紙を、クロワッサンを置いた場所の壁に貼り付けた。値札も貼っている事を確認していると、お店のドアがカランコロンと鳴って来店者を知らせてくれる。
「いらっしゃいませ!…あっ」
勢いよく振り返るとお店の出入り口にいたのは、最近付き合い始めるようになった、エン様がいた。
彼はエンドル・ファクト様と言って、このベーカリー[ROSE]の常連客の1人の騎士様だ――銀色の艶のある長い髪を一つに束ね、キリッとした眉が下がった優しい顔立ち、青い瞳は吸い込まれそうなくらい綺麗でいつもぼうっと見惚れてしまう。シュッとしたスタイルで私よりも頭3つ分くらい高い身長で、いつも私を優しい眼差しで見守ってくださる私の恋人だ。
建国史上最も強く、生きた伝説と言われている彼は、私みたいな平民にも優しくしてくださり、ひょんな出来事からお客様と従業員だった関係から、恋人関係へと――いや、婚約者として変化したのだ。
「マチルダ、こんばんは」
私を見て目元を和らげたエン様は、私の元へやってきた。
「エン様、お疲れ様です」
私も彼を見て微笑み返すと、途端に2人を包む空気が甘くなった気がする。
「あらっ騎士様っ!いらっしゃい!マチルダ今日はもう上がっていいよ!」
そんな私とエン様を見て、お店の店主のアガサさんが、早上がりを促す。
「ありがとうございます」
「パンでも買って待っているから支度してきて」
「まっ!騎士様パンでもなんて!うちのパンは逸品よっ」
「もちろんです、こちらのお店以上のパンを食べた事ありませんよ…」
2人は軽口を叩きながらお喋りをしている間に、私はエプロンを脱いで荷物を取りにバックヤードへと向かった。
***************
「今日は、変わったことはなかったかい?」
パン屋を出て夜道を、2人で手を繋ぎ並んで騎士団本部の宿舎に向かう。
「はい!特に無かったです…最近のお客様は皆さま優しい人ばかりで、働きやすくなってしまって…お給料も高いのになんだか申し訳ないです」
以前なら悪質なクレーマーやら、騎士様に近寄らないでとヒステリックに責められる事も無くなったし、順風満帆の日々に少しだけ不安になったりする。
「ははっ、それはアガサさんとマチルダの明るい笑顔で癒されているからだよ…お給料はちゃんと働いているんだから、申し訳なく思うのは良くないよ」
「はい…こうしてエン様ともお知り合いになれましたし、その…付き合う事も出来たので…本当にパン屋で働き始めて良かったと毎日思ってます!」
「そうか、なら良かった…確か明日は休みだよね?」
「はい、最近働き詰めだったので、アガサさんにお休みをするようにと、言われました」
実は毎日エン様に自宅に送って貰っていたのだが、本当なら週に3日はお休みがあって、休みの前日と休みの日にはエン様の騎士団本部の宿舎に泊まっているはずだった。
しかし最近お客様が増えた事によって、従業員を募集する前に人の手が必要となり、私が休みを返上して働いていたのだ。
今日はこのまま宿舎に泊まり、明日は2人で馬に乗って川のほとりまで行くデートをする予定だ。
***************
青々と生い茂る草むらの先に流れる川の水面が、太陽の光でキラキラと反射して眩しい。
「わぁっ!綺麗っ!」
騎士団本部の宿舎から、馬に乗り森を抜けて川のほとりにやってきた。私は馬に乗れないので、彼が私の後ろに座って馬の手綱を握ってくれなかったら、遠くに外出できなかったはずだ。
「晴れて良かった、最近は曇りが多かったから…」
馬から降りたエン様が、私に手を差し出した。彼の手を取り馬から降りるのを手伝ってくれる。今日はシンプルな白い色の長袖のワンピースと茶色のブーツだ。エン様は白いYシャツと茶色のズボンと茶色のブーツで、久しぶりに見る軽装だ。
「ありがとうございます」
彼にお礼を言うと、にっこりと優しい顔で笑うエン様は、持ってきた荷物を馬から下ろし始め、逃げ出さないように馬を木に手綱で結ぶ。折角の休みだからピクニックをしようと、以前から決めていて昨日ROSEでサンドイッチを作るためにパンを購入していたのだ。大きな籠バッグの中は、2人分の軽食と飲み物が入った筒、地面に座れるよう敷き物が入っている。
彼は籠バッグを持ち、比較的平らになっている場所へ移動すると、草むらの上に置いた。
籠バッグの中から敷き物を取り出すと、2人で敷き物を広げて風で飛ばされないように、重石として籠バッグを敷き物の中央に置いた。
敷き物に座っていると、馬の様子を見に行っていたエン様が戻ってきて、私の横に座った。
「エン様飲み物を」
「ああ、ありがとう」
持ってきた飲み物を渡すと、エン様は受け取った。
他愛のない話をしながら作ったサンドイッチを食べて、休日を満喫する。天候も良く、暑すぎでも寒すぎでもない今日は、絶好のピクニックデート日和だ。
しばらくすると、エン様の肩に頭を乗せて流れる川を眺める。エン様は私の肩に回すと、私の頭に自分の頭をそっと寄せる。
「…マチルダ…そろそろ、一緒に住まないか?」
ぽつりと告げられた言葉は、私の頭に直接語りかけるみたいに、低く落ち着いた声が頭から身体へ染み渡る。
「一緒に…ですか?」
夢のような時間を過ごし、夢のような言葉を言われ胸がいっぱいになる。
「そうだ、マチルダのいる家に帰りたいし」
「…しかし、まだ結婚もしていないのに」
確か結婚しないと一緒に住む事は、出来ないはずだ。
「今もどちらかの家で過ごしているじゃないか」
「それは…そうですが」
エン様は私と付き合ってからは、遠征などまだしていなくて、ほぼ毎日仕事が終わるとパン屋へとやって来てくれる。一度だけ申し訳なくて「お仕事で疲れてるみたいなので、お迎えはいいです」と言ったら女性騎士の部下の人が、お店の前に待っていた事があって、エン様のいる騎士団本部へと連れて行かれた。
――あの時は申し訳ない気持ちがあったわ
あの後は団長室で仕事が終わるエン様を待って、一緒に宿舎へと向かったけど。
「ああ、早く結婚したい」
私を抱きしめたエン様が、本音を吐露した。
私達は間もなく結婚する…だけど、それはまだまだ先の事なのだ。エン様は騎士団長というだけじゃなく、国の功績を挙げた偉大な人なので、手続上の関係もありそうそう今すぐ結婚は出来ないみたいだ。
「エン様」
そばにいる時も、彼の腕の中にいる時もすごく幸せだ。見上げると、優しい眼差しの彼と視線があった。どちらかともなく顔を近づけ、唇が重なった。離れる事なく唇を押しつけ合い甘噛みをすると、私の唇の隙間からエン様の舌が入った。
彼の舌が私の口内に入ると、くちゅっと音がして恥ずかしくなる。上顎を舌で掠め歯列をなぞられると、身体から力が抜けて彼に寄りかかる。
「ん、んっぁ…ん」
彼とのキスはすぐに私を夢中に…幸福感で満たされていく。仕事でのちょっとした嫌な事も、今まで過ごしてきた人生の歩みなんかも、全て忘れさせてくれる。
ちゅぅっと、名残惜しく離れたエン様の唇を未練がましく目で追ってしまう。フッと笑ったエン様は、私の額に触れるだけのキスを落とした。
「マチルダ、愛してるよ」
「…私も愛しております、エン様」
見つめ合い愛の言葉を囁く私達。もう一度軽く触れるキスをすると、エン様は私の脚に触れた。
「ん…ん、っ、あっ!」
敷き物の上で仰向けになった私のスカートの奥、片足だけ脱げた下着が太ももに引っかかっている。私と並んで横になっているエン様は、私の頬やこめかみにキスや舌を這わしながら、スカートの中に手を入れて私の蜜壺に指を入れている。1本だった指から2本へと増え、蜜壺の中を掻き乱す指の動きに、もうすでに何度かイッた。
「可愛い…可愛い」
私の感じている姿を見て、堪らないとでも言うように言葉にしてくれる。3本目が入ると今度は指をパラパラと動かして、蜜壺の中を広げていく。服の乱れもないはたから見たら、横になっている彼に何か囁かれているように見えるだろう。
「っ、あ…エン様っ、あっ」
彼の指の付け根まで蜜壺に埋まり、指だけじゃ我慢がきかなくなっていた。左手で彼のシャツを握ると、エン様は私の耳の中に舌を這わす。
「マチルダ、挿れたいからズボンを脱がせて」
低く甘い声が私の耳の中に吹き込まれ、左手を下ろすと彼のズボンに指先が触れた。
ズボンのボタンを外しチャックを下ろすと、私の蜜壺の中にあった彼の指が抜けた。
「…あっ」
居なくなった指を求めるように、蜜壺がきゅんとする。スカートを少しだけたくし上げたエン様は、自分の下半身を向かい合わせになった私のスカートの中にくっつける。私の頭の下に彼の右腕が入り、私の左足を彼の腰に掛けると、エン様の昂りが私の蜜壺へと入っていく。
「…つ……っ」
彼の右肩に顔を押しつけて声が漏れないようにすると、ズズッと滑らかに入っていく昂りを蜜壺はぎゅうっと締め付ける。昂りの先端が蜜壺に埋まると彼の左手は私の腰に回り、一気に蜜壺の最奥まで貫く。休む事なく腰を引いて徐々に抽送を始めると、2人の荒い息遣いがお互いを包む。
外だからか…それとも河原の上で動きずらいのか、分からないが、一気に絶頂へと向かうために腰の動きが激しくなる。
「ん…っ…あっ、んっ…はっ」
「っ…っ…くっ」
敷き物の下にある小石に、腰が擦れて少し痛い。でも気持ちいいからやめて欲しくない。2つの感情が入り混じり、結局は気持ちいい方が勝ってしまう。
「あっぁぁぁっっんんん!」
「マチルダッ」
グリッと最後のひと突きで、抉られた蜜壺は耐え切れずに、絶頂へと達する。叫びそうになって彼の胸へと顔を押しつけてると、エン様に強く抱きしめられて蜜壺の中にいた昂りが弾けて熱い飛沫を放出した。
荒い息遣いが治ると、水の流れる音と鳥の囀りが聞こえる。顔を上げるとすぐそこにエン様の顔があり、キスをすると私の蜜壺にあるエン様の昂りが固くなった気がした。
「…エン様…すいません」
「いや、私も欲しかったしね」
帰り道。馬に乗った私達は行きとは違い、ゆっくりと帰っていた。一回だけじゃ終わらなかった交わりで、やっと帰り支度を始めたのは日が暮れそうな時間帯で…急いで帰ると腰を痛めてしまうためだ。
実際に全体的に少し怠く腰が重い、彼の胸に横向きに座った身体を預けている。でも私が申し訳ないのは、声を出さないように彼の胸な顔を押しつけたために出来た彼の胸ら辺のシャツは、私の口紅が付いていて汚してしまったのだ。
昨日は馬に乗るからと、抱き合って眠っただけだったので、余計に燃えてしまったのかもしれない。
「…帰ったら続きをしよう」
情事の時にしか聞けない艶のある声で、囁かれて胸がドキドキする。返事をするよりも、彼の胸へと頬をくっつけて、背中に腕を回し抱きついた。
帰り道がひどく長く感じ、それと同じくらい幸福感に溢れていた。
しばらくして、騎士団から紹介された複数人の新しい働き手によって、ベーカリー[ROSE]の慢性的な人手不足が解消すると、マチルダは彼との結婚のためにパン屋を辞めた。
しかし、そこには騎士団長の強い推薦もあったとか、ないとか。
「マチルダッ!パンが焼けたよっ!」
「はいっ!」
店内のパンの在庫を調べて、木製のトングでパンの位置を直して私――マチルダは、この街一番の味と価格を誇るベーカリー[ROSE]に勤め始めて5ヶ月の新米店員だ。このパン屋は、遠方から遥々やってくるお客様も多く、普段の食事のお供だけじゃなくて、お土産としても喜ばれる有名なお店だ。
サクッとした食感とふんわりとしたバニラの香りが癖になるクロワッサンがいくつも並ぶ大きな鉄板から、店内へと出すために深いボウル型のカゴにパンが崩れないようにそっと載せた。カゴを持っていつもクロワッサンを置いている定位置へと置くと、焼き立ての文字が書かれた紙を、クロワッサンを置いた場所の壁に貼り付けた。値札も貼っている事を確認していると、お店のドアがカランコロンと鳴って来店者を知らせてくれる。
「いらっしゃいませ!…あっ」
勢いよく振り返るとお店の出入り口にいたのは、最近付き合い始めるようになった、エン様がいた。
彼はエンドル・ファクト様と言って、このベーカリー[ROSE]の常連客の1人の騎士様だ――銀色の艶のある長い髪を一つに束ね、キリッとした眉が下がった優しい顔立ち、青い瞳は吸い込まれそうなくらい綺麗でいつもぼうっと見惚れてしまう。シュッとしたスタイルで私よりも頭3つ分くらい高い身長で、いつも私を優しい眼差しで見守ってくださる私の恋人だ。
建国史上最も強く、生きた伝説と言われている彼は、私みたいな平民にも優しくしてくださり、ひょんな出来事からお客様と従業員だった関係から、恋人関係へと――いや、婚約者として変化したのだ。
「マチルダ、こんばんは」
私を見て目元を和らげたエン様は、私の元へやってきた。
「エン様、お疲れ様です」
私も彼を見て微笑み返すと、途端に2人を包む空気が甘くなった気がする。
「あらっ騎士様っ!いらっしゃい!マチルダ今日はもう上がっていいよ!」
そんな私とエン様を見て、お店の店主のアガサさんが、早上がりを促す。
「ありがとうございます」
「パンでも買って待っているから支度してきて」
「まっ!騎士様パンでもなんて!うちのパンは逸品よっ」
「もちろんです、こちらのお店以上のパンを食べた事ありませんよ…」
2人は軽口を叩きながらお喋りをしている間に、私はエプロンを脱いで荷物を取りにバックヤードへと向かった。
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「今日は、変わったことはなかったかい?」
パン屋を出て夜道を、2人で手を繋ぎ並んで騎士団本部の宿舎に向かう。
「はい!特に無かったです…最近のお客様は皆さま優しい人ばかりで、働きやすくなってしまって…お給料も高いのになんだか申し訳ないです」
以前なら悪質なクレーマーやら、騎士様に近寄らないでとヒステリックに責められる事も無くなったし、順風満帆の日々に少しだけ不安になったりする。
「ははっ、それはアガサさんとマチルダの明るい笑顔で癒されているからだよ…お給料はちゃんと働いているんだから、申し訳なく思うのは良くないよ」
「はい…こうしてエン様ともお知り合いになれましたし、その…付き合う事も出来たので…本当にパン屋で働き始めて良かったと毎日思ってます!」
「そうか、なら良かった…確か明日は休みだよね?」
「はい、最近働き詰めだったので、アガサさんにお休みをするようにと、言われました」
実は毎日エン様に自宅に送って貰っていたのだが、本当なら週に3日はお休みがあって、休みの前日と休みの日にはエン様の騎士団本部の宿舎に泊まっているはずだった。
しかし最近お客様が増えた事によって、従業員を募集する前に人の手が必要となり、私が休みを返上して働いていたのだ。
今日はこのまま宿舎に泊まり、明日は2人で馬に乗って川のほとりまで行くデートをする予定だ。
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青々と生い茂る草むらの先に流れる川の水面が、太陽の光でキラキラと反射して眩しい。
「わぁっ!綺麗っ!」
騎士団本部の宿舎から、馬に乗り森を抜けて川のほとりにやってきた。私は馬に乗れないので、彼が私の後ろに座って馬の手綱を握ってくれなかったら、遠くに外出できなかったはずだ。
「晴れて良かった、最近は曇りが多かったから…」
馬から降りたエン様が、私に手を差し出した。彼の手を取り馬から降りるのを手伝ってくれる。今日はシンプルな白い色の長袖のワンピースと茶色のブーツだ。エン様は白いYシャツと茶色のズボンと茶色のブーツで、久しぶりに見る軽装だ。
「ありがとうございます」
彼にお礼を言うと、にっこりと優しい顔で笑うエン様は、持ってきた荷物を馬から下ろし始め、逃げ出さないように馬を木に手綱で結ぶ。折角の休みだからピクニックをしようと、以前から決めていて昨日ROSEでサンドイッチを作るためにパンを購入していたのだ。大きな籠バッグの中は、2人分の軽食と飲み物が入った筒、地面に座れるよう敷き物が入っている。
彼は籠バッグを持ち、比較的平らになっている場所へ移動すると、草むらの上に置いた。
籠バッグの中から敷き物を取り出すと、2人で敷き物を広げて風で飛ばされないように、重石として籠バッグを敷き物の中央に置いた。
敷き物に座っていると、馬の様子を見に行っていたエン様が戻ってきて、私の横に座った。
「エン様飲み物を」
「ああ、ありがとう」
持ってきた飲み物を渡すと、エン様は受け取った。
他愛のない話をしながら作ったサンドイッチを食べて、休日を満喫する。天候も良く、暑すぎでも寒すぎでもない今日は、絶好のピクニックデート日和だ。
しばらくすると、エン様の肩に頭を乗せて流れる川を眺める。エン様は私の肩に回すと、私の頭に自分の頭をそっと寄せる。
「…マチルダ…そろそろ、一緒に住まないか?」
ぽつりと告げられた言葉は、私の頭に直接語りかけるみたいに、低く落ち着いた声が頭から身体へ染み渡る。
「一緒に…ですか?」
夢のような時間を過ごし、夢のような言葉を言われ胸がいっぱいになる。
「そうだ、マチルダのいる家に帰りたいし」
「…しかし、まだ結婚もしていないのに」
確か結婚しないと一緒に住む事は、出来ないはずだ。
「今もどちらかの家で過ごしているじゃないか」
「それは…そうですが」
エン様は私と付き合ってからは、遠征などまだしていなくて、ほぼ毎日仕事が終わるとパン屋へとやって来てくれる。一度だけ申し訳なくて「お仕事で疲れてるみたいなので、お迎えはいいです」と言ったら女性騎士の部下の人が、お店の前に待っていた事があって、エン様のいる騎士団本部へと連れて行かれた。
――あの時は申し訳ない気持ちがあったわ
あの後は団長室で仕事が終わるエン様を待って、一緒に宿舎へと向かったけど。
「ああ、早く結婚したい」
私を抱きしめたエン様が、本音を吐露した。
私達は間もなく結婚する…だけど、それはまだまだ先の事なのだ。エン様は騎士団長というだけじゃなく、国の功績を挙げた偉大な人なので、手続上の関係もありそうそう今すぐ結婚は出来ないみたいだ。
「エン様」
そばにいる時も、彼の腕の中にいる時もすごく幸せだ。見上げると、優しい眼差しの彼と視線があった。どちらかともなく顔を近づけ、唇が重なった。離れる事なく唇を押しつけ合い甘噛みをすると、私の唇の隙間からエン様の舌が入った。
彼の舌が私の口内に入ると、くちゅっと音がして恥ずかしくなる。上顎を舌で掠め歯列をなぞられると、身体から力が抜けて彼に寄りかかる。
「ん、んっぁ…ん」
彼とのキスはすぐに私を夢中に…幸福感で満たされていく。仕事でのちょっとした嫌な事も、今まで過ごしてきた人生の歩みなんかも、全て忘れさせてくれる。
ちゅぅっと、名残惜しく離れたエン様の唇を未練がましく目で追ってしまう。フッと笑ったエン様は、私の額に触れるだけのキスを落とした。
「マチルダ、愛してるよ」
「…私も愛しております、エン様」
見つめ合い愛の言葉を囁く私達。もう一度軽く触れるキスをすると、エン様は私の脚に触れた。
「ん…ん、っ、あっ!」
敷き物の上で仰向けになった私のスカートの奥、片足だけ脱げた下着が太ももに引っかかっている。私と並んで横になっているエン様は、私の頬やこめかみにキスや舌を這わしながら、スカートの中に手を入れて私の蜜壺に指を入れている。1本だった指から2本へと増え、蜜壺の中を掻き乱す指の動きに、もうすでに何度かイッた。
「可愛い…可愛い」
私の感じている姿を見て、堪らないとでも言うように言葉にしてくれる。3本目が入ると今度は指をパラパラと動かして、蜜壺の中を広げていく。服の乱れもないはたから見たら、横になっている彼に何か囁かれているように見えるだろう。
「っ、あ…エン様っ、あっ」
彼の指の付け根まで蜜壺に埋まり、指だけじゃ我慢がきかなくなっていた。左手で彼のシャツを握ると、エン様は私の耳の中に舌を這わす。
「マチルダ、挿れたいからズボンを脱がせて」
低く甘い声が私の耳の中に吹き込まれ、左手を下ろすと彼のズボンに指先が触れた。
ズボンのボタンを外しチャックを下ろすと、私の蜜壺の中にあった彼の指が抜けた。
「…あっ」
居なくなった指を求めるように、蜜壺がきゅんとする。スカートを少しだけたくし上げたエン様は、自分の下半身を向かい合わせになった私のスカートの中にくっつける。私の頭の下に彼の右腕が入り、私の左足を彼の腰に掛けると、エン様の昂りが私の蜜壺へと入っていく。
「…つ……っ」
彼の右肩に顔を押しつけて声が漏れないようにすると、ズズッと滑らかに入っていく昂りを蜜壺はぎゅうっと締め付ける。昂りの先端が蜜壺に埋まると彼の左手は私の腰に回り、一気に蜜壺の最奥まで貫く。休む事なく腰を引いて徐々に抽送を始めると、2人の荒い息遣いがお互いを包む。
外だからか…それとも河原の上で動きずらいのか、分からないが、一気に絶頂へと向かうために腰の動きが激しくなる。
「ん…っ…あっ、んっ…はっ」
「っ…っ…くっ」
敷き物の下にある小石に、腰が擦れて少し痛い。でも気持ちいいからやめて欲しくない。2つの感情が入り混じり、結局は気持ちいい方が勝ってしまう。
「あっぁぁぁっっんんん!」
「マチルダッ」
グリッと最後のひと突きで、抉られた蜜壺は耐え切れずに、絶頂へと達する。叫びそうになって彼の胸へと顔を押しつけてると、エン様に強く抱きしめられて蜜壺の中にいた昂りが弾けて熱い飛沫を放出した。
荒い息遣いが治ると、水の流れる音と鳥の囀りが聞こえる。顔を上げるとすぐそこにエン様の顔があり、キスをすると私の蜜壺にあるエン様の昂りが固くなった気がした。
「…エン様…すいません」
「いや、私も欲しかったしね」
帰り道。馬に乗った私達は行きとは違い、ゆっくりと帰っていた。一回だけじゃ終わらなかった交わりで、やっと帰り支度を始めたのは日が暮れそうな時間帯で…急いで帰ると腰を痛めてしまうためだ。
実際に全体的に少し怠く腰が重い、彼の胸に横向きに座った身体を預けている。でも私が申し訳ないのは、声を出さないように彼の胸な顔を押しつけたために出来た彼の胸ら辺のシャツは、私の口紅が付いていて汚してしまったのだ。
昨日は馬に乗るからと、抱き合って眠っただけだったので、余計に燃えてしまったのかもしれない。
「…帰ったら続きをしよう」
情事の時にしか聞けない艶のある声で、囁かれて胸がドキドキする。返事をするよりも、彼の胸へと頬をくっつけて、背中に腕を回し抱きついた。
帰り道がひどく長く感じ、それと同じくらい幸福感に溢れていた。
しばらくして、騎士団から紹介された複数人の新しい働き手によって、ベーカリー[ROSE]の慢性的な人手不足が解消すると、マチルダは彼との結婚のためにパン屋を辞めた。
しかし、そこには騎士団長の強い推薦もあったとか、ないとか。
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