辺境の侯爵家に嫁いだ引きこもり令嬢は愛される

狭山雪菜

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初めてのお喋り

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「玄関ホールでは寒いので、こちらへ」
と手を差し出すキースに無意識に手を置くと、何故かエスコートされ、玄関ホームから近くにある暖かくなっていた応接室のソファーに座らされた。

「寒いですか?濡れませんでしたか?」

座った途端に矢継ぎに質問され、

「大丈夫です…あの…キース様っ」

慌ただしく執事に温かい飲み物をと指示するキースの手を止めた。

「私よりっキース様がっお疲れなんですからっ私がしますっ」

ソファーから立ち上がり、キースに近寄ると手を掴まれ

「いや、私は頑丈な身体をしてますので」

またソファーへと座らされた。

ソファーの目の前に湯気が立つ温かい紅茶が置かれ、暖炉の火がこの部屋に入る前より激しく燃えてる。

「…なんだか申し訳ないですわ」

紅茶を飲みながら、頬に手を置くとじっと凝視するキース様と目が合った。
背もたれが見えない大柄な身体を縮こませ座る彼が、小さなカップを持ち紅茶を飲もうとしていた。同じ1人掛けのソファーが、一回り小さく見える。

「ぐっ…いや、かっ…身体が弱いと聞いたので」

紅茶のカップをプルプル揺らし、動揺する姿に可愛くて自然と頬が緩む。
「今日は視察お疲れ様でした…いつもこんな時間まで仕事をしているのですか?」
暖炉の上にある時計を見ると、すでに日付けが変わっていた。
「いや、事故の報告の時以外は比較的早く終わる」
背筋を伸ばし、両手を膝の上に置くキースは拳を作る。
「…そう…ですか…明日から私も…何かすべき事はありますでしょうか?例えば視察に同行する…など」
「…いや、ない…身体が丈夫じゃないと聞いた…ゆっくり休んでこの地に慣れて欲しい…それだけだ」
素っ気ない言い方のキースに、迷惑だったのだろうかと肩を落とし、凹んでいると慌てたキースが
「…なら、帰ってくる時に少し話をしてくれたら…私の手伝いになる」
凹む私を気を遣って、仕事で疲れているはずの私のために仕事をくれた
「…お話ですか…かしこまりましたっ!精一杯頑張りますので…好きな茶葉とかありますか?ーー」

仕事から戻ってくる時に、ミニお茶会をする事にし、しばらく2人で好きな食べ物などを話していたが、
「もうそろそろ」
とアガサに言われるまで2人のおしゃべりは終わらなかった。



********************


次の日

お茶会のセッティングをするため、アガサに使っていない家具など置いてある倉庫に連れて行ってもらった。

「このテーブルと椅子にするわ」
彼の髪の色の銀色のテーブルと椅子を持ち出すように伝え、私の髪と同じ赤色の刺繍がされた白いテーブルクロスを探して、玄関ホールの横にある庭が一望出来る大きな窓の使われていない控室を借りてテーブルと椅子を設置した。
「近くにお花も欲しいわね」
と独り言を言っていたのに、いつの間にか花瓶が持ち込まれテーブルの上に置かれた。
「やっぱり…殺風景よね」
と独り言を言っていたのに、いつの間にか壁に絵の入った額が並び、家具が運ばれ花が飾られた。

「…もしかして…私の独り言を実行してくれているのかしら?」
背後にいるショウに聞くと
「ソフィア様の言うことは全て聞くのが、私達の使命ですわ」
と涼しい顔でかえってきた。

ーーふむ、この屋敷は随分と気が利くのね

そう考えたソフィアだが、実家も何かする前に準備してくれていたの思い出して、
ーー他の家もみんな気が利くのね
と納得したのだが、使用人達はソフィアに傾倒していたために、快適に過ごして欲しく当主以上に目を光らせていた事をソフィアは知らなかった。

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