彼が好きなのにぃ!王子との結婚を阻止したい公爵令嬢は、婚約者の護衛を襲う〜実は護衛は正体を偽った私の婚約者でした〜

狭山雪菜

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リクエスト 視察の蜜 姫初めシリーズ6 彼が好きなのにぃ

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目が覚めると一番に目に入るのが、真っ白なシーツと真っ白な壁。横向きで寝ていた身体を仰向けにすると白いレースの天蓋が目に入り、その時になって初めて身体が重いことを知る。
「おはようございます、エステル王太子妃殿下」
私が目が覚めたのを察知したのか、王太子と王太子妃の主寝室へやってきたのは、私が王族と婚約を結んでしばらくしてから私の側に付いている3人の侍女のランとミズナ、そして侍女長のベラだ。
「…おはよう」
むくりと起き上がると身体の上に被っていた布団がはだけ、真っ白な肌に赤い所有印が幾つもある裸体が露わになった。
昨日の情事の気怠さを隠しきれず、彼女に漂う雰囲気は妖しく艶めかしい。子供をすでに産んでいるとは思えないほど、ほっそりとした腰とすらりと長い脚。美しく手入れされた金髪は長く、艶やかに輝いている。小さな頭も卵のようにつるんとした顔も、ぱっちりとした紅瞳と小さなぷっくりとみずみずしい唇も全てのパーツが芸術的で女神のようだと賞賛されていた。そんな彼女をお世話をする侍女達は無表情を装っているが、心の中で毎回ほぅ、っと見惚れていたのだ。



こうして気怠さを纏わせたまま、エステルの一日が始まるのだ。
「エステル王太子妃殿下、行きましょう」
身支度が終わり朝食と呼ぶには遅い時間に食事をした後は、私専属の護衛のヤミを連れて城内を歩く。茶色い短髪の彼女は一見して男性に見えるけど、喋ってみたら気さくで誰もいない時に話し相手にもなってくれている。
「…今から行っても迷惑ではないのかしら」
「そんな事はございません、エステル王太子妃殿下がいらっしゃると分かればあのお方・・も喜びます…それに今日は朝から不機嫌でして…どうしてもエステル王太子妃の協力が必要なんです」
そう言ってさっきから私を急かすヤミは、珍しくボソボソと自分に言い聞かせているようにも見える。
「…本当なのかしら…今日は息子と遊ぶ日なんだけど」
息子――昨年産んだ自分の子供を思い出し自然と口元が緩むと、私を見てヤミは慌てだした。
「エステルっ様、どうかそのお顔をやめないと、大変な事になってしまいますっ」
「またそれ?いつも何も起こらないじゃない」
「そっ、それはエステル王太子妃殿下の前で処分を下すなんて愚かな真似をする訳ないじゃないですか!」
ヤミは両手をいっぱいに広げ、顔を真っ赤にしてぶんぶんと上下に振るがイマイチ説得力に欠ける。
「ぅぅ…エステル王太子妃殿下は知らないんですよぉ…アレクサンドル第一王太子の恐ろしさを」
アレクサンドル第一王太子――この国、アーカルド王国のアレクサンドル第一王子から、次期国王陛下として民衆の前に姿を現しアレクサンドル第一王太子となった。
――そして私の夫でもある
このアーカルド王国では、昔から暗殺の恐れがあるためお世継ぎを産まなければ公の場で執務を担当する事はなかった。自身の分身として護衛の者を政に参加させ、裏から指示をしていたらしい。それはごく一部の者にしか知らされないトップシークレットのため、私の父、ユリング公爵当主も知らなかったそう。
――アレクサンドル第一王太子…ううん、シューラ
彼の顔を思い出して頬が赤くなってしまう。女性の日が終わったと報告を受けたシューラは、王妃とお茶をしていた私を掻っ攫い、昨日のお昼から彼が満足する明け方までたっぷりと求められたのだ。全身色濃くでる気怠さも、彼のせいではあるが、久しぶりに肌を重ねたから私も求めたのもある。
「…ですから…エステル王太子妃殿下…その顔は」
今度は青ざめたヤミは、ぷるぷると震え出した。
「…ヤミ?どうしたの?」
不思議に思って彼女の頬に手を伸ばそうとすると、横から大きな手が私の手を包んだ。
「ヤミは言いたいんだよ、その可愛らしい・・・・・顔を人通りの多い城の中ですると、夫であるこの俺が嫉妬してしまう、とね」
「シューラッ!」
普段はあまり喋らない夫がそこにいて、ありえないジョークを飛ばしているかと思ったけど、彼の表情は至って真面目だ。私よりも頭3つ分は高く大きな身体で、日に焼けた肌、厚い胸元と太い腕と足を包む白色の軍服を着た彼は黒い短髪で、キリッとした眉と厚い唇、黒い瞳は鋭く…どちらかというと強面に入る顔だ。初めて会った時から好きになってしまった彼にじっと見つめられれば、結婚してもうすぐ2年経つのに今だに胸がドキドキと高鳴る。
「どうして、こちらに?今からそちらの王太子室へと向かうつもりでしたわ」
「随分と遅いからな…我が愛しの妻を迎えにきたのだ」
シューラは私の手を引いて自分の元へと引き寄せた。その勢いで私を簡単に持ち上げると、彼の腕の中へと横抱きに抱き上げられた。
「ヤミ、もう下がってよい」
「かしこまりました」
一言ヤミに告げると、ヤミは頭を下げた。ヤミにお疲れ様と言う前に、シューラが歩き出してしまったので、私はいつものようにシューラの肩に頭を乗せた。
息子を妊娠した時は歩く時もこうして抱き上げられ、執務中の彼のそばで過ごした。妊娠初期は時々お茶会に出席していたが、お腹が大きくなるにつれてシューラの過保護が加速した。それを国王陛下も王妃も息子の態度に呆れながら、息子の変化に面白そうにしていた。
長かった妊娠期間で彼に甘やかされた私は、息子を出産した後もこうして甘やかす彼を受け止めてしまっているのだけど。
――流石に公の場では控えてるけど
「朝は起きれたか?」
そんな事を考えていると、シューラに声をかけられた。
「ええ、声を掛けてくだされば良かったのに」
「昨日は無理をさせたからな…ゆっくり休んで欲しかったのだ」
一緒に住むようになってから、2人の決まり事がある。それは――挨拶をする事。忙しい彼は日の出前に出かけてしまう事があり、私が朝起きた時にベッドにいないとパニックになった事があったからだ。職務のために朝早くに出かけたとすぐに知ったが、私の動揺ぶりは彼にも伝わったらしく、それ以来起こしてくれるようになった。
――今思えば…お腹に子供が居て情緒不安定だったのかも
規則正しく歩く彼の肩に頭を乗せていた私は、先ほどヤミに言われた言葉を思い出した。
「シューラ、今日はあんまり気分が優れないと聞きました…何かあったのですか?」
彼の顎のラインから喉仏にうっとりと見惚れながらヤミの話を聞くと、シューラは、ちっ、ヤミのヤツ、と零した。
「…明日からしばらく貿易港の地を拡大するために、視察に行かなければならなくなったんだ」
「まぁ…もうすぐで年が明けるのにですか?」
城の中はすでに年末モードになっていて、間もなく休暇に入る使用人とかもいる。ほとんどのお店も自分の家でゆっくり過ごすため、シューラも例年通り休むと思っていた。
「貿易港は閑散期が一番視察しやすいんだ…荷物の出し入れ中は人が多いからな」
――やっぱりヤミの言っていたのは勘違いなのね…私が笑顔を見せたらシューラがどうこうするって、ありえないわ
はぁ、とため息を吐くと、私を抱き上げてるシューラの腕が、ぴくりと反応した。
「…寂しいですが…こればかりはしょうがないですね」
彼の逞しい腕の中にいて、彼の匂いに包まれて瞼を閉じる。
「…エシー」
一段と低くなった彼の声を聞き、声も好きだと改めて思う。
「なぁに?」
うっとりとした声が出てしまい、2人だしまぁいいか、と思っていると
「っ…ひっ!」
と微かな悲鳴が聞こえた。誰かいるのかな?と思って瞼を上げるけど、彼の横顔しか見えない。
「ん?どうした?」
「…どなたかの声が…気のせいですわね」
視線を彷徨わせても誰かいる気配もないので、どうでも良くなってしまった。



「…マルに視察に出てもらえれば、エシーと過ごせるな」
「いやいや、王太子の顔は民衆に公開したから知られてるし、護衛連れてない王族って聞いた事ないから!」
ボソッと呟いた一言を、俺の護衛であるマルが聞き逃すはずかなく、即座に突っ込まれた。
昨夜の疲れが取れなかったのだろう、執務室に連れてきてしばらくすると、妻のエシーは眠ってしまった。ソファーに寝かせて冷えないように常備していた布団を掛けて、年末を前のこの時期だけ、早めに改善策や嘆願書を提出する領地の役人達が作った書類の処理に入った。
――ったく、年末に視察を頼むなんて貿易港のヤツらは
朝の報告で言われた宰相からの言葉に、沸々と怒りがまた込み上げてくる。本来なら人の少ない閑散期に行うのが通説だったが、年末年始は例外だった。民も年末年始くらいはゆっくりしたいだろうに、年末に視察を頼んだのには訳があった。
『最近貿易港にくる貨物が多く、保管する場所も限られていて捌き切れない』
と苦情が殺到したのだ。確かにここ近年、他国との貿易が盛んになってはいたが…嘆願書を元に本格的に貿易港の拡大をするため、現地へ赴く事になったのだ。
――早くて、年の明けた頃に戻ってくる事になる
愛おしい妻と離れるなんて考えただけで、半身を引きちぎられる想いをするというのに。
生まれたばかりの息子は、私達夫婦の手によって順調に育っているし、エシーを視察先に連れて行ってもいいかもしれない。
――名案だ…これで離れなくすむな
そう思った俺は、まずはマルを説得しようと、警備状況から聞き出す事にした。






***************




「すごいっ!大きな船…だわ」
思ったよりも大きな声が出てしまい、慌てて冷静を装った。
「ありがとうございます、こちらの船は我が国最大の貿易船でして今は停泊してますが、出航する際は是非見に来てください、圧巻ですよ」
私の声に、クスッと笑い、そう説明するのが貿易港の日に焼けた肌の責任者だ。ニッと笑うと目尻の皺が深くなり、シューラやマルよりも小さな身体だが、どっしりとした身体が鍛えている事を教えてくれる。
「…そうだな、またその時は改めるよ、妻と一緒に・・・・・
聞かれてもいないのに責任者との間に話を割って入ってきたシューラだ。あまり奥まで入ると足元が危ないと、彼の腕に手を置いてエスコートしてもらっている。今日はシンプルな白いロングワンピースと動きやすいヒールのない靴で来てるが、視察をする格好ではない。最初は視察に同行するつもりで来たわけじゃなくて、手配された迎賓館で過ごそうかと思っていたけど、私が一緒に来たと聞きつけた責任者に
『是非見に来て下さい!休んでいる者も呼び寄せましたので!なぁに、王太子妃殿下が来ると分かれば皆揃いますよ!』
言われたからだ。今日は元々大まかな場所をみるだけで、明日以降エリア毎に視察をするらしい。
「いゃぁ、しかし、本当に美しいですな…あっ、もちろんご成婚の時も行かせていただきましたが、近くでみると別格でして…なんです?王太子殿下、あっしの顔に何かついてます?」
迎賓館からずっと説明をしていた責任者だったけど、こうしてたまに話が逸れるとシューラが無言の圧を掛ける…らしい。というのも私がシューラの顔を見上げても、いつもの目元を和らげた優しい顔で私を見つめ返すから、本当にそうなのかも分からないのだ。
「…妻がそろそろ疲れたみたいだから、休める所へ」
「そうですなっ!確かに色々な所にご案内させましたから、あちらのこの港一みなといちと言われている"みなと亭"に参りましょう!」


「エッエステル王太子妃殿下、この度は我が食事処にいらしてくれて至極光栄でございます…こちらが我がみなと亭の看板メニューのカレーと言われる東洋のスパイスを調合した料理でございます…こちらは少し辛いので王太子殿下にでも食べていただき、この卵を綴じたオムライスなどはいかがでしょうか!煮込んだ角煮は絶品です!ぜひ王太子妃には食してもらいたいですな!」
メニュー表にあるリストを指差しながら、みなと亭の亭主が鼻息荒くこのお店のおすすめを教えてくれる。
「まぁ、美味しそう」
「…申し訳ありませんが、ただ足を休めるために来たので食事は結構です…まだ先に行かねば行けない所がありますので」
亭主に断りを入れるのは、貿易港の責任者だ。
「そうですか…では…あっ、お飲み物をっ」
「ですからっ」
貿易港の責任者が連れてきてくれたのは、焦茶色の木造のアーチ状の屋根の食事処の"みなと亭"だった。私たち一行を見て、あれこれお世話をしたくなるみたいだが、安全の保証がない外食は、毒の混入の可能性もあるため防犯上よろしくないのだ。慌てて厨房に行った亭主に、貿易港の責任者は呆れながら厨房へと追いかけて行った。
「思いやりのある亭主かたなんですね」
「辛い物は俺にって、俺への扱い見たろ…絶対違うと思うぞ」
「…前回視察に来た時、飲み物一つ出すのにも嫌そうな顔していたのに」
私がサービス精神旺盛だわ、と感心していると、呆れたシューラと、その背後で護衛していたマルが首を横に振って嘆いていた。




***************



「そろそろ、妻を休ませる」
視察の途中だったけど、シューラは一方的に貿易港の責任者にそう告げると、私を馬車に乗せて今日泊まる宿へと向かわせた。
「おかえりなさいませ、エステル王太子妃殿下」
宿で待っていたのは私の専属の侍女達3人で、私が部屋に入るや否や身体の疲れを取るために、お風呂へと入らされマッサージを受けた。
「ふふっ…いい香り」
身体に垂らされたオイルは、カモミールを配合した香りでもリラックス出来るように考えられて作られた最近流行りのボディオイルらしい。疲れていないと思っていたけど、暖かい場所に、全身がぽかぽかしたお風呂、心地よいマッサージを受けて微睡む時間がやってきた。城から持ってきた真っ白なバスローブは、肌触りが良くて心地よい。

『何も、年の瀬に視察に同行しなくてもよいのではないか』
『しかし、彼女も国民の生活必需品がどうやってくるのか、知る権利があります』
『…それっぽい事を言って離れたくないだけかと』
『…マル、お前は口を挟むな』
『なら久しぶりに孫と過ごすか』
『そうね、エステルちゃんもたまにはゆっくり過ごしなさい』

ここに来る前に国王陛下お義父さん王妃お義母さん、幼い頃からシューラの影武者として過ごしていた護衛のマルとシューラとのやり取りを思い出して、にやけてしまう。
――幸せ、本当に
国王陛下と王妃との仲も良好だし、息子も生まれ最愛の人と過ごす日々がこんなにも幸せだなんて信じられない。
「そんな薄着で寝てると風邪を引くぞ…何を笑ってる?」
マッサージの後はソファーにもたれて目を閉じて休んでいたら、いつの間に帰ってきたのかシューラが私の顔を覗き込んでいた。
「シューラ…おかえりなさい」
「ああ、いい、そのままで」
ソファーから立ちあがろうとした私を、彼の手が制した。私の横に座ると、背もたれに左腕を上げて伸ばす。彼の脇が空いたので、身体を寄せて彼の腕の中へ入ると、上げた左腕が降りて私の肩を抱く。シューラもお風呂に入ったのか、バスローブと麻のズボンだけの姿だったが、抱きつくと身体が熱いと感じた。
「早かったですね…視察だから歓迎会とかあると思っていました」
「くくっ、エシーが帰すと言った時の貿易港の責任者やつらの顔は傑作だったな」
キョトンとする私に、シューラがご機嫌に返事をする。
「普段の視察は歓迎会やら宴はやらない、改善のために現地に赴いているからな、税収を使われたら意味がないから事前に余計な出費はさせないように通達しているんだよ」
「そう…だったのですね…知りませんでしたわ」
それだけ言って満足した私は、シューラの胸板に頬をつけた。ドクンドクンと力強い彼の鼓動が聞こえ、私は安心しきっていた。


「久しぶりの2人の時間…だな」
「ええ…そうですね」
無言で抱き合っていたが、しばらくするとシューラが声を掛けてくれた。なんせギリギリまで仕事をしていたシューラと、息子が快適に過ごせるように手配や準備に忙しく、疲れ切って眠ってしまうことが多かったので、こうして誰にも邪魔をされずに過ごすのは本当に久しぶりだ。
――子供を宿した時からバタバタと休む間もなく忙しかったわ…2人で妊娠中に気をつける講義もうけたし…それから…
「エシー、今は俺の事を考えてくれ」
過去の出来事を思い出していると、うわの空だったのに気づかれシューラが拗ねてしまう。
「ふふっ、貴方の事を考えてましたわ」
自分にヤキモチを妬くシューラが可愛いと思って、思わず笑ってしまうと、シューラは呆然と私を見つめた。
「…最近そうやってよく笑う」
「…嫌…でしたか?」
あまりにもびっくりしたように言うから、よく笑う女が妻だと嫌なのかと思って眉を寄せてしまうと、シューラが即座に否定した。
「嫌なものかっ!エシーの笑顔は…いやどんなエシーでも、何にも代えられない俺の大切な伴侶だ」
「…シューラ」
「エシー」
あまりにも真剣な眼差しに、私も感動してしまう。潤む瞳で見上げれば、熱い眼差しのシューラが見つめ返してくれる。
時が止まったように見つめ合えば、自然と顔が近づき自然と瞼が閉じると、しばらくして私の唇にカサついた唇が重なった。
「…知っているか、エシー、遠くにある国では新年を迎えると共に夫婦が愛し合っていると、永遠に幸せになれると」
「…そうなのですか」
触れるだけのキスが終わると、シューラの額が私の額に重なり、熱い吐息が私の頬にかかる。腰砕けて蕩けてしまうくらいの低い声に、夫婦が愛し合う・・・・・・・意味を理解してしまう。
「…まだ…年が明けてませんわ…それまで…は…しないんですか」
チラッと窓の外を見るも、時計など置いていないこの部屋で時間など分かりはしない。だけど、もう彼との甘いひと時を希望しているのに、年が明けるまでは何にも出来ないなんてもどかしい。
「そんな訳ないだろ…これから明日の朝まで、たっぷり・・・・愛を確かめ合おう」


視察で泊まりだけど、シューラと過ごす夜を考えなかったといえば…嘘になる。
「ずいぶんと可愛らしいな」
持っている夜着で派手でもないけど、地味でもない物を選んだら自ずとデザインは決まってくる。バスローブの下はシルクの丈のものすごく・・・・・短いワンピースタイプの夜着で、肩紐は細くて胸元には薔薇のレースがあしらわれている。ベッドの端に座るシューラはバスローブをすでに脱いでいて、上半身裸の彼の前に立った私は彼の前でバスローブを脱ぎ床に落とした。
「気に入ってくれた?」
「もちろん」
太ももの付け根が見えそうで見えないミニ丈のワンピースは、シューラとそういう事・・・・・が無くても、身体が冷えないし、ちゃんと眠れるデザインだ。足を広げて座るシューラの足の間のベッドに膝をつけてシューラに近寄ると、彼が私の腰に腕を回して抱き止めてくれる。コルセットなど身につけていない柔らかな胸を、彼の顔に近づけて押し付けたら、彼の鼻先が谷間にぶつかって谷間に埋まる。
谷間に埋まった鼻で勢いよく息を吸いながら、彼の両手が私のお尻を揉み始まった。下から掬うように揉まれて、快感を感じるようになる。
「んっ、シューラ」
「ああ、ここにいる」
彼の頭を抱きしめると、すぐに返事をしてくれた。シューラは口で胸元のレースの布を挟むと下にズラし、胸元を隠していた胸の膨らみが露わとなった。僅かに弾力のある肌の上に点々と残る赤い印は、つい先日まで愛し合っていた証。毎回執拗に首筋から腕、手首や足首にまでに赤い所有印を残すため、侍女長から『普段着が全て同じデザインでよろしくない』と、お叱りを受けたシューラは、普段から自重してはいるが、月のモノが終わるとタガが外れ、私を求めた際に遠慮なくつけてしまうのだ。
――求められてしまうと、嬉しい気持ちになるのも事実だけど…
実際に消えないように随時跡をつけられると、似たようなパターンのドレスのデザインばかりとなり、公人としての立場もあるし…私は結構悩ましい立ち位置にいるのだ。
「…どうせ、帰るのは2日後だ…その頃には薄くなっているさ」
私の考えを読んだのか、それともこれから跡を付けようとする自分を納得させるために、口を滑らせたシューラは、柔らかな二つの膨らみに口づけを落とした。
「ん…んっ」
お尻を揉んでいた手も胸へと移動して、ゆっくりと揉まれる。背中を丸めて彼の手から逃れようとするが、シューラの頭を抱きしめている事に気がついた。胸の谷間に舌を這わし、ちゅぅっと吸いつかれ、チリっとした痛みが起こる。彼の髪に指を絡めると、体温の上がった彼の熱い後頭部が手のひらから全身へ私の体温を上げていくみたいで、私も熱くなってくる。
「待って、シューラッ」
肩紐が肩からするりとズレると、抱きしめていた彼の頭を離し、腕を動かし両方とも肩から外した。すると、もう簡単に胸元から落ちた夜着は私のお腹の上まで下がって、シューラと同じ上半身裸となった。はち切れんばかりの大きな二つの乳房はぷるんと揺れて、乳房の中央にあるピンク色の粒が固くなっている。目を細めたシューラは、私の乳房を愛おしそうに見つめ、下から掬って乳房の先端をそっと口に含んだ。
ちゅぅ、と軽く吸い付き、ねっとりと粒を彼の舌が舐める。
「ん、っんぅ」
片方のシューラの口に含まれていない空いた乳房は、しっかりと彼の手により愛撫され、右の乳房を口で愛する時は左の乳房は彼の手で愛され、左右逆になる場合もシューラの口と手で絶え間なく身体中に巡る快感を生み出された。
「あっ気持ちいっ、シューラッ、んっ」
もうこの先の快感を知っている身体は無意識に腰が揺れ、シューラの腰にある逞しい足の筋肉とは違う固いモノ・・・・に下半身を擦り付けている。堪らなくなったのか、シューラも次第に私の下半身に自身の腰を押し付け、擦られた摩擦により、ぴりぴりとした快感が溢れる。それが気持ち良くて彼の肩に両手を置いて大きく腰を前後に揺らすと、擦れる箇所が長くなり快感も倍増していく。
彼の身体を使いひとりで気持ち良くなる私は、はしたないと、頭の隅でよぎるが快感には勝てずに、もっと、もっとと追い求めてしまう。
「っ…エシーッ」
「…あっあぁっ!」
私の下着はとうに濡れていて、彼の麻のパンツにシミを作っていく。下着の布が擦れた拍子に蜜口にある粒を掠め、一気に身体中に巡った快感に耐えきれずに達してしまった。
シューラに跨いで座った足がプルプルと震えて、彼の肩に置いた手に力が入り強く掴み快感が過ぎるのを待っていたら、乳房を可愛がっていた彼の両手が私の腰を掴み、私をベッドへと仰向けに寝かせた。快感の余韻に浸っていた私はされるがままになっていて、ギシッと軋むベッドの音で視線を彷徨わせてシューラを探した。
「エシー、ここに」
シューラは私の左手をそっと持ち上げ指先に口づけを落とすと、私の視界から彼の姿が消えた。
「んんっ!」
それと同時に強烈な快感が頭のてっぺんまで巡り、訳もわからないまま軽く達してしまった。はぁはぁっ、と鼻の息では対応出来なくなって口を大きく開いて息をすると、だんだんと何をされているのかが分かり始めた。
下着が消えたのか濡れた感触の布を感じなくなり、アラレもなく脚を大きく開かれていた。シューラの口が私の蜜口に重なり、彼の舌が私の蜜壺に入っていたのだ。快感によって溢れる蜜を啜り、侵入している舌をぎゅうぎゅうに締め付ける蜜壺の中に入れてほぐしていく――彼を受け入れるために。
「シューラッ…シュ…ラッ」
私の下半身にある彼の頭に手を伸ばし、短い髪を指先に絡めると、彼の名前を呼び続ける。汚いと思っているのに、もっと欲しいと思う自分もいて、結局は快感を優先させてしまう。好き、愛してるっと途切れ途切れで言っては、彼の舌が私の思いに応えるように蜜壺をさらに愛でる。
「もっ…もぅっんっ!」
何度イッたか分からなくなると、その・・可愛がりだけじゃ足りなくなっていた。無言で私の下半身から顔を上げたシューラは私の脚を広げたまま、私の頭の横に左腕を付けて覆い被さった。近くなった彼との距離で、腕を持ち上げシューラの首に腕を巻き付けて自分の方へ引き寄せると、舌を絡める濃厚な口づけをする。口づけをしながら彼の太ももの裏に足を掛けると、シューラの固い胸板が私の柔らかな乳房に重なり、下半身に熱い塊が押し付けられた。
「ん、っ、ぁ、っん」
声を出そうにも濃厚な口づけの最中の舌を絡まれていているから、声を出せずにズズッと蜜口から入る昂りを受け入れている。大きく膨らんで太く固くなった昂りは、蜜口を広げてぎゅうぎゅうと締め付ける蜜壺の中を進んでいく。
「っ…くっ、煽るなっエシーッ」
シューラの太ももの裏に掛けた脚伸ばして、足の裏をシューラのふくらはぎに付けて足の指で辿ると、シューラの腰が進んで私の上に重なり一気に私達は繋がった。
「あっ、あっあ、あ、っんぅ」
断じて煽ってなどいない、愛おしい気持ちが溢れた結果なのだと思っているのに、抽送が始まってしまったから口から出るのは甘い声だけ。
始めから激しく攻めたてられ気持ちいいのに、ギシッギシッと軋むベッドがいつもの王城の寝室のベッドじゃないと、客観的に見ている自分もいる。
「っ、シューラッ、あ、あ、っ、ん」
「ぐっ、っ、はっ、はっ」
両手両足で彼の身体に抱きつき、抽送で揺らされて絶頂に向かってお互いの快感を高めていると、彼の限界がやってきた。荒々しく唇を貪られたかと思ったら、彼の昂りよりも熱い飛沫が蜜壺の最奥に注がれ一気に身体中に巡った快感に耐えきれずに私も絶頂に達した。
「…っ…はぁ、はぁっ」
「はっ…っく」
今度はエシーの可愛い声も聞きたいと、息も整わないまま耳元で囁かれ、繋がった場所がぎゅうっ、と反応して始まった2回目。すでに年を越している事は、この時の2人は気が付かなかった。






***************




新年が明けてしばらくすると、年末に王太子の視察に王太子妃が同行したとの話が公になり、貿易港の関係者や食事処のマスターが
「エステル王太子妃は本当に美しくて、俺たちにも笑いかけてくれたんだ!いいだろう!」
「俺にだって笑いかけてくれたっ!しかもっ名前を呼んでくれたんだっ!」
「俺のところでは飲み物を飲んでくださったんだ!グラスは保管してあるっ!」
「なんだとっ!」
「何?!」
と王太子妃の自慢話が瞬く間に王国全域に広がり、王太子への視察の希望者が殺到した。
「王太子、また来てます」
「ふんっ、どうせエシーを連れて行けだろっ」
「…いえ、エステル王太子妃のみの希望です」
「却下に決まってるだろっ」
毎日凝りもせず膨大な陳情書を出され、どれもこれも王太子が直接視察するほどじゃない事案にうんざりしていたシューラだっだが、ついにはエステル王太子妃1人でいいと希望が増えた。


『いかなる理由があろうとも、王政に関わっていない王太子妃一人の視察は遠慮する』

そんなお触れが国中に出るのは、もう少し後のお話。
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