俺の可愛い幼馴染

SHIN

文字の大きさ
3 / 7

私はヒロイン

しおりを挟む

注意:一部不快な表現があると思います。読むときはお気をつけください。年齢制限は今は儲けません。

───────────────





 私の名は、アリッサ・ヘッジバード。
 
 私が初めてこの世界を認識したのは7歳の時だった。当時私は小さな孤児院で同じように親が居ない子たちと過ごしていた。
 生活は苦しかったわ。私達の住む孤児院は王都からかなり離れていたから、配当金なんてそうそう来ない。
 来ていたのかもしれないけど、配送途中でちょろまかされるのがほとんどよ。

 転機が巡ってきたのはその5年後。12歳冬の日。
 半年も程配当金が来なくて、空腹の音が孤児院に響いていた。もう、万引きや山賊に成るしかないかなと年長組で話していたらあの男が来たの。
 
 ヘッジバード男爵と彼は名乗ったわ。
 彼は、孤児のひとりひとりを見たあと私を指差したの。そして、言ったわ。

『この孤児院に定期的に寄付を与えよう。その代わり彼女わたしを貰う。』

 孤児院のシスターは止めようとしてたけど私は彼に着いてゆく事に決めたわ。だってせっかくのチャンスだもの。犯罪に手を染めるよりずっと良いわ。
 
 私は即答して彼に着いていく事になった。
 まずは、見たことないような大量の金貨の入った袋が孤児の寄付として渡されたの。これでしばらくは大丈夫ね。

 こうして私は、ヘッジバード男爵の養子に入った。
 でもこれは、転機ではなかった。むしろ不幸のはじまり。
 王都に住まうヘッジバード男爵は私を表では娘として裏では妻として扱ったのよ。ヘッジバード宅に住まう執事や侍女は知っていても見てみぬ振り。
  屋敷に来て、痩せ細った私が垢抜け普通になってきた頃、初めて妻の役目を押し付けられた。

 誰も助けてくれなかったし、逃げ出せもしなかった。だって私が逃げたら、孤児院はどうなるかわからないもの。ただただ、我慢するしかなかったわ。


 私が15歳になったとき、学園に行くことが決まった。
 王都の民は15になると学園に通うことになっている。それは、王都の貴族であるヘッジバード男爵が避けられない事だった。学園では寮に住まうのが基本。
 しばし、この男から逃げられると思ったわ。だけど……。


『休みの日は必ず戻りなさい。』


 その言葉が戒めになった。

  私は救ってもらえる人を探して学園の身分の高い人と仲良くなるべく頑張ったの。周りでは尻軽だ、身分を考えろよと言われたけどそんなのを気にしてられなかった。
 
 学園が終わる前にこの地獄から逃げ出したかったの。

 ヘッジバード男爵には、将来の礎の為なのと可愛く言えば、文句を言わないし付き合いが広がる事に喜んでいたわ。
 毎週末の休みの日、その報告をしなくちゃならないけど、妻の役目の時間が減るから喜んでやったわ。 
 




 そんなある日、私は大物を吊り上げた。
 この国の王族。オウル第二王子。
 彼と仲良くなるのは大変だったけど、一度でも守護対象に入ったら簡単だった。
 それをヘッジバード男爵に伝えたら誉められた。その頃には、ヘッジバード男爵には新しい妻が出来てた。どうやら週一回だけではたりず、さらには大人になってきた私には興味が失せてきたみたい。

 この隙に今まで会えなかった孤児院の皆に会いに行ってもいいかもしれない。


 それが、私の崩壊だと知らずに。

 私の全てが壊れたのは、隠れてその孤児院に行ったとき。目の前に広がるのは草の生えた更地。

 忘れた事のない場所にはその名残もない。たまたま近くに居た住民に聞いたら、孤児院で流行り病が蔓延したのだという。しかし、その病の薬はあったので金さえあれば買えただろうとの事だった。
 
オカシイナ、キフキンがアッタデショ?

 ヘッジバード男爵の屋敷に帰り、新な妻といろいろしているとき部屋を調べた。そしたら、お金は最初のあのときだけ。あとは一度もお金の動きがなかった。最初のから騙されてた。



 
 あぁ皆、苦しかったでしょ。私を恨んだでしょ。
許してなんか言えないわ。もしも、孤児院を見に行きたいと言ってれば変わってたかしら。

 でも、こんな汚れた姿は見せたくなかったの。


 嘆く私の目に写る幸せそうな王都の住人。頭がカッと赤くなる。


 
 ミンナユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイ


こんな世界嫌いよ。








 私が復讐の好機を見つけたのはそのすぐあと、お腹に誰が父親か分からない子が出来たのを知ったとき、きっと神が不憫な私の復讐を応援をしてくれてるのね。
 
 その好機はオウル第二王子が持ってきた。
 次の王妃になるなら知らなきゃと言われて連れてこられた地下には、美しいドラゴンが居た。土に汚れた白の鱗はキラキラと、大きさは私が食べられてしまいそうな程大きい。こんなのが王都の地下にいるとは。
 そんな美しいドラゴンの頭に剣が刺さっていたのが異質だった。それに視線が向いていると気づいた王子は、説明してくれた。

 その説明はさらに神は私の味方かと思わせるものだった。

 私は、直ぐに世界に復讐することを決めたわ。誰にも邪魔はさせない。
 最近来たあの邪魔な第4王子も婚約者で手一杯のはずだし、このお腹が目立つ前に行動を起こさなきゃ。
 



私はこの世界の復讐者ヒロイン
 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天真爛漫な婚約者様は笑顔で私の顔に唾を吐く

りこりー
恋愛
天真爛漫で笑顔が似合う可愛らしい私の婚約者様。 私はすぐに夢中になり、容姿を蔑まれようが、罵倒されようが、金をむしり取られようが笑顔で対応した。 それなのに裏切りやがって絶対許さない! 「シェリーは容姿がアレだから」 は?よく見てごらん、令息達の視線の先を 「シェリーは鈍臭いんだから」 は?最年少騎士団員ですが? 「どうせ、僕なんて見下してたくせに」 ふざけないでよ…世界で一番愛してたわ…

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

いつから恋人?

ざっく
恋愛
告白して、オーケーをしてくれたはずの相手が、詩織と付き合ってないと言っているのを聞いてしまった。彼は、幼馴染の女の子を気遣って、断れなかっただけなのだ。

わたしの好きなひと(幼馴染)の好きなひと(わたしの姉)から惚れ薬を渡されたので、

やなぎ怜
恋愛
魔が差して好きなひと(幼馴染)に惚れ薬を盛ってしまった。 ……風花(ふうか)は幼馴染の維月(いつき)が好きだが、彼の想い人は風花の姉・雪子(ゆきこ)だった。しかしあるとき雪子に惚れ薬を渡される風花。半信半疑ながら思い余って維月に惚れ薬を盛ったところ効果はてきめんで、風花は彼とキスをする。しかし維月の中にある己への愛情は偽りのものだと思うと、罪悪感で苦しくなってしまう。それでもズルズルと騙し続けていたが、風花自ら惚れ薬の効能を解く出来事が起こり――。

【完結】さようなら、私の初恋

蛇姫
恋愛
天真爛漫で純粋無垢な彼女を愛していると云った貴方 どうか安らかに 【読んでくださって誠に有難うございます】

私のブルースター

くびのほきょう
恋愛
家で冷遇されてるかわいそうな侯爵令嬢。そんな侯爵令嬢を放って置けない優しい幼馴染のことが好きな伯爵令嬢のお話。

【完結】愛くるしい彼女。

たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。 2023.3.15 HOTランキング35位/24hランキング63位 ありがとうございました!

勇者様がお望みなのはどうやら王女様ではないようです

ララ
恋愛
大好きな幼馴染で恋人のアレン。 彼は5年ほど前に神託によって勇者に選ばれた。 先日、ようやく魔王討伐を終えて帰ってきた。 帰還を祝うパーティーで見た彼は以前よりもさらにかっこよく、魅力的になっていた。 ずっと待ってた。 帰ってくるって言った言葉を信じて。 あの日のプロポーズを信じて。 でも帰ってきた彼からはなんの連絡もない。 それどころか街中勇者と王女の密やかな恋の話で大盛り上がり。 なんで‥‥どうして?

処理中です...