この記憶、復讐に使います。

SHIN

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復讐は華やかに②

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 壁に映るのは私への扱いの酷さ、他国の王子への障害指示。さらにはテンペスト国の王妃への謀反を仄めかす言葉。


「な、なんなのよこれ。」
「ひ、姫様。」


 映し出される内容に当然ながら思い当たることばかりの事に顔を青ざめるクェイル王女団体様。
 まさか、こんな証拠が残されているとは思っていなかったのだろう。
 先に観ていたとはいえ王妃は自分の妹の変わりように静かに涙を流している。優しい王妃様は愛しの妹を最後まで信じていたのです。


「カインがね。貴女はこんなシンプルな髪飾りは興味ないっていってたけど本当ね。」
「まさか、あの髪飾りがっ…。」
「カインお手製の映像記録録音機能付き髪飾りよ。」


 良いでしょう?
 

「クェイル王女の望む、相手を傷付ける道具じゃないけど、追い詰められて精神的にくるでしょ?」
「じゃあ、獣人国とは戦争にはならないの?」
「ええ、イェシル殿下は傷一つ付けていないわ。」


 まあ、私は毒のせいで生死をさ迷ったらしいけど。

 計画の破壊を知ると、ギラギラとした目をこちらに向けてきた。
 すでにボロボロの姿なのにその手を握りしめて、ワナワナと震える様は哀れな道化師の様に見える。

 取り巻きの兵士達も自分達の不利を悟っているのか、顔色悪くさせながら震えていた。


「何故にこのような事をしたのです?」


 テンペスト国の王妃は、妹に近寄らせて貰えないながらも優しく語りかける。

 その姿が気に入らなかったのか、クェイルは枯れている声を張り上げた。



「私は、獣臭い獣人が嫌いなの。偽善なあんたもよ!動物は動物なりにペットの様に人間に媚びへつらいなさいよ!」

 
 爆発した様に会場に響く声。
 獣人にペットの様になんて禁句をぶちまけるなんて愚かな人でしょうか。

 彼女の取り巻き達も同じ思いなのでしょうか。と思っていると共にいた、隷属の首輪を嵌めたときには居なかった白髪の汚れていても美男子だと分かる男は、姫から離れていく。

 その姿が見えたのか、クェイルが手を伸ばして彼の服を掴もうとしたが。


「気安く触らんでくれ。」
「が、ガイド?」
「イェシル殿下、もう、良いですよね。雪国で足止めもさせたししばらくは休ませてくださいよ。」


 イェシル殿下と私の前に片膝を付き、臣下の礼をするとやれやれと肩を回しながらクェイルと対する位置まで移動して軽蔑のような視線を送る。

 ここまでやれば分かると思うが、この男はイェシル殿下の影、もといスパイだった。

 小さな村で遊んでいたクェイルの元に偶然を装って出会い、雪の国の豪族のふりして足止めをしてくれていた。もちろん、雪の国の豪雪も旅路を邪魔はしていたが、そんな雪の国をすすめたのはこの男だ。


「クェイルの大嫌いな獣人のガイドだ。悪かったな獣人でよ。」
「うそ、だって耳が…。」
「おまえ、耳でしか判断できないのかよ。オレはノドジロオマキザルの獣人。猿と人間どう違うんだか知らんがな。」


 確かに、犬や猫と違って猿って人とほどほど変わらないわよね。あれ、人間もある意味獣人じゃないの?

 するりとズボンからは長い尻尾が現れる。
 

「私と暑い夜を過ごしたのが獣人…。」
「がっつき様は凄かったぜ。」
「ガイド。」


 下ネタに走ろうとしたガイドを黙らせ、イェシル殿下はクェイル王女に視線をやる。
 自らを殺そうとしていた女を見て何を思うのだろうか。

 
「お前には素晴らしい嫁を連れてきた礼は伝えておく。まあ、戦争させようなんて下らねぇこと考える女はこちらが願い下げだがな。」


 素晴らしい嫁という言葉で、私を抱く手が強くなる。
 暖かな腕の中にうっとりと身を預けていると、イェシル殿下はメインディッシュとばかりに人混みに紛れているある男を手招きする。


「お前のためのゲストはもう一人居るぜ。」
「久しぶりです。姫様。」


 人混みから出てきたのは、クェイルの記憶の中では痩せこけてみすぼらしかった男。カインだった。

 クェイルの顔に絶望が浮かび始めた。




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