この記憶、復讐に使います。

SHIN

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復讐は華やかに

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 人の国であるテンペスト国が、他国を招いたとあるパーティーで、その場には不釣り合いな格好をした数人の人物達が入ってきた。

 停止させようとした警備兵はその人物を見て、彼らを止めることができずにあわあわと意味のない動きをしている。

 それもそのはず、その姿がボロボロの衣装を身に纏うとはいえ、彼らはこの国の姫とその従者達だったのだから。

 しかし、彼の姫は数ヶ月前に獣人の国に嫁いだはずでした。
 そんな姫がなぜかボロボロの服装で登場したのです。



「クェイル!どうしたのです!」



 姫の姿を見た、王妃は自分の妹の変わりように悲鳴の声を上げた。
 
 会場がざわざわとした喧騒からはりつめた空気のもつ静かな場へと姿を変える。

 姫、クェイルは目をはらし、泥にまみれた顔に安堵の笑みを浮かべて、王妃の元に向かう。そして、掠れた声で訴えた。



「獣人の国は裏切りました!」



 その言葉の意味はだれもが飲み込めずにいた。
 何人かの視線が泳ぐように動揺している。



「あの日私は獣人どもに殺されそうになったのです。侍女が私を逃がさなかったらどうなっていたのか…。ああ……。」


 ただ、それだけを見れば悲劇の姫の登場であるが…。


「獣人の国が貴女を?」
「そうなのです。何度も遠くに逃げようと思いました。けど、やはり、母国を見捨てることは出来ませんでした。命からがら姿を隠しながらやっとその事を伝えることができます。」
「それは面白いじょうだんですね。」
「えぁ?」


 悲劇の姫を演じる彼女に私が声を掛けました。
 隣にいる優しい旦那様は壊れ物を触るかのように繊細に腰に手を当て、ゆっくりとエスコートしてくれます。

 私の姿がクェイル王女の目に入ると一瞬だけ呆けた顔をしたあと怒りの表情に変わった。


「なぜ、あんたがいる?その隣の奴は!」
「あら、本来なら貴女様がここにいるはずだったのですよ。」


 きっと、今の私は誰もが羨むぐらい輝いているでしょう。

 なぜかって?
 
 ドレスはとある東の国の希少な光を反射する布で出来ており、ドレスには雪の国の美しい青色の小粒の宝石で飾られ、そのドレスにも負けない首もとや腕の装飾は、海の国の女帝が送ってくれた希少な黒真珠をつかっていた。
 有名なファッションの貴公子によって飾られた衣装を映えさせる髪に添えられた月下美人の生花は精霊の次期王が自ら選んでくれたもので精霊の加護がかかっている。

 このとんでもない状態は、姫が蔑んだ獣人の王子がお願いしただけで、皆が友だからと用意してくれたものだ。

 もちろんお礼はきっちりとさせて貰っている。

 世界中の選ばれた魔法使いの卵達が通う学園は、この世界を縮小した様に色んな種族がいる。
 クェイル王女はその資格はなかった様ですが。



「そして、今宵のパーティーは私達の訪問のパーティーですよ。」
「ほ、訪問?」


  今回、獣人の国とテンペスト国の婚約は、今まで領地の主張をしていた2つの国またがる森の共同開拓を目的とした、契約的な結婚でした。

 本来なら、その話をするために王様が来る予定でしたが、王の推薦により我々が来ることになったのです。

 最初はクェイル王女ではなく私が来たことに驚かれたものですが、何だかんだで迎え入れてくれた。



「い、生きていたのですね。きっと脅されているのね。」
「貴女には私が脅されているような状況にあるように見えます?」


  私は、イェシル殿下にすり寄り、イェシル殿下は優しく抱きしめてくれる。
 黒真珠の妖しい光が互いの物に反射してそれがお揃いに作られているのが分かると思います。



「こんなに尽くされるなんて私、初めてです。そこはお礼を言わせてくださいね。」
「ただの人質だったくせに。」
「あら、本性が出てますよ。まあ、貴女がやったことはここに居る皆さんがご存じですけど。」


 そう言って会場の壁に写し出されたのは、例の記録映像であった。




 
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