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対する人
しおりを挟むクェイル王女が逃げ出したのを知ったのは、テンペスト国の用意した部屋に着いてからだ。
リドリーさんに化粧を落としてもらい、肌を整えてもらった後に、お風呂に入り終えて水分補給がてら果実水を飲みながらのんびりしていた時だった。
リドリーさんやイェシル殿下にフィシゴといつものメンバーが集まり、談笑をいているといきなり扉が開き、そこにはパーティーの時とは異なる衣装に身を包んだクェイル女王と従者その1とその2、それから宰相の息子である男が入ってきた。
「なんだ、内通者がいるとは思っていたが、いまいちだな。」
「もっと大物がつれるかと思ったのにね。」
「そもそも、逃げないでなんでこんな所に来やがった。」
イェシル殿下の心底くだらないといった表情とため息に、宰相の息子はとくに怒ることもなく、シルバーフレームのメガネを整えて、やれやれと肩を竦めた。
どことなく自信を持つ男はイェシル殿下の視線にも動じることのない。
「我が姫君がそこの女に文句が言いたいらしくてな。」
「…警備はどうした?」
「さあな。」
その時、地下の小火のせいでパーティーの客を近場から避難させていたそうです。
我々が居るのは離れの様な場所、小火も巻き込まれる恐れがもっともない所で、人手の足りない場所にそこの警備の者も向かってしまったらしいです。王族がいるのにそれは危機感がないですよね。
まあ、そこら辺の指示を出したのも目の前の宰相の息子だったりもします。
役者が揃ったようなので紹介をするのであれば、姫は言わずなが、その取り巻きの従者その1は現副騎士団長の妾の子。妾は有名な踊り子だそうで顔達は深い彫りのイケメン。
名はシーシャ。家名は名乗らせて貰えないがその腕は間違いない。
もう一人の従者その2は平民と言われていたが本当は元大臣の子。母共々すこしだけ暴力的な男から逃げ出した。しかし、魔力測定の場で大臣の一族が持つ特殊な魔法を持つことが分かってしまったため、自分だけ大臣のところに戻り、その後、騎士団に入隊した。
名はタナ。
最後の宰相の息子は名をユダという。
頭も良く、短期間だけ騎士団にも入り剣を振るっていたこともある。
母親は幼い頃に亡くなり、すぐに継母が出来たが折り合いが悪かったために、宿舎のある騎士団に逃げ出したらしい。しかし、一年も経たずにその頭の良さゆえ裁判の長が引き抜いて徹底的にしごいていたと聞いていた。
私はシーシャとタナには直接暴力的なことをされたが、ユダだけはあった事どころか姿を見たことはなかった。
今回、テンペスト国に帰ることとなって、もしかしたらクェイル王女に城に入るための手助けをする人物がいるのではないかと、話しに出たのだ。
おそらく、ボロボロの姿で来るだろう三人をあのパーティー会場まで通さないといけない。
その様な事を出来るのは結構な大物かなと話していたのだけど、たしかに裁判の部署にいるなら警備の内容も聞きやすい。何かの参考にするといえば快く話して貰えただろう。
ただ、その印象が後々に残っていないのが不思議ではある。
「姫様、さっさと文句を言って、退散しましょう。」
「そうね。記憶が無くなるのは残念だけどね。まさか、貴女が生きて帰るとは思わなかったわ。でも、今後その獣臭い国で過ごすなんてざまぁみろだわ。」
ふふんと上から目線で言えて満足したのか、視線でユダに合図を出す。ユダは心得たとばかりに手をこちらに差し出す。
突然、魔力の膨らみを感じた。魔法を使う気の様だ。
「『凍える記憶』」
「『解体』」
ユダと私の相反する魔法が辺りを包んだ。
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