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惹かれるのはその瞳
しおりを挟む『私のどこが気に入ったの?』
そう問いかける女は人族で俺が力を込めたらすぐに折れてしまいそうなぐらい繊細だ。
初めて見たときは何処の小枝だなんて思っていた。
だが、風に吹かれて覗かせた燻る炎の様な目を見たら、俺の身体が歓喜に震えた。
あの目が俺に向いたらどれだけ幸せだろうか。
俺は昔から獣人の王である兄貴と比べられてきた。どんなに頑張ろうが、優秀にしてこようがいつも『あのお方なら…。』だ。
俺の事を見てくれる奴なんていないのだ。
魔法を学びに学園に入ったときも、兄貴が居ないから比べられないと思いきや、いつでも兄貴の影が付きまとっていた。
こんなのなら、最初からやらなくても一緒だとぐうたら過ごしていた。
フィシゴがお目付け役になってもそれだけは変わらない。ある程度の友人、いや知人ができて卒業になったが、待っていたのは隣国の姫との政約結婚だった。
簡単に調べさせれば姫は獣人が嫌いらしい。
まあ、興味がないのはお互い様だ。純白の結婚でもいいだろう。
そう思っていたのに。
俺はあの女が欲しい。
自らの手を血で汚しても、痛みで泣き叫ぶことはなく毅然と何かを守る姿勢。
美しかった。
復讐を望む女の姿が楽になるとわかった時のほっとした微笑み。
一目惚れだった。
我々、獣人の男は強い女が好きだ。
彼女は絶対に生きてもらう。そして、俺の物にする。
女が目を覚ましたと聞いた。
フィシゴがサボりによく部屋を使っていたのは知っていたが、まさか目覚めた時にいるとはなんという偶然か。
部屋に入って目が入ったのは寝起き姿のすこし乱れた夜着姿だった。日に当たってない肌は白く、今まで何をされてきたのか想像を書き立てるアザの見える胸元。胸元…。
思わずフィシゴを殴ってしまったが、そういえばこいつハイエナの娘が良いんだったか。
「なぜ、あのまま死なせてくれなかったのですか?」
そう聞く女の目は死んだようにくすんでいた。
あの時のあの目が見たくて、自分の手で復讐ができると話せば、炭火の様に火が着く。
やはり、彼女、レイリが俺の妻になって欲しい。いや、なってもらう。
そんな彼女が書き上げた設計図らしきものは、世界を変えるだろう。
魔法が主体のこの世界で銃は危険なものである。これは黄泉の国に相談した方が良さそうだ。
黄泉の国なら最新の技術が豊富で何かしら教えてくれるだろう。最悪、俺が燃やした事にしよう。
他は、水銀の危険性。
たしか、あのおねぇがそんな事を言っていたが、皆から相手にされなかったな。カリスマで世界に名を馳せているのに、そうなっているのはどうしてなのか説明できないからだ。
この紙を渡したら飛んでくるだろうよ。
ステンレスという金属は水に強いとのことだから、水辺の何かに使えるかなと、考えていると、どうやら水仕事の主婦に愛の証としてよく贈られていたとのこと。
まさに、獣人の国にはふさわしいかもしれない。
その後も色々と書いて、力尽きたレイリは医者代わりに読んだディーラに怒られて、おとなしく布団で横になってすぐさま眠りについた。
フィシゴの視線が痛いが、この知識のかたまりは俺が預かることにする。
水銀だけは兄貴き報告しておくか。
たしか、美白の化粧品に含まれているからリドリーの奴が騒いでいたんだよな。
「この知識を得るためにしちゃ、暴力が容赦ないな。とりあえず、潜り込ませるか。」
俺は、姿が人間によりにているガイドを呼び出してクェイルの動向を調べるように伝えた。あの姫さんならイケメンのほうが言うこと聞くだろうな。あと、俺の金を使ってでも雪の国で足止めをしておくようにも伝えておく。
2ヶ月あれば、燻る炎の様な目とは違う別の瞳の色でもみられるかな。
「あーあ、楽しみだ。」
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