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この記憶、復讐に使います。
しおりを挟むクェイル王女はあのあと、限られた人しか登れない塔に幽閉されることになった。
限られたというのは、その塔が遥かに高く、登るには気力と体力が必要ということも含まれているのだ。結界も張られていて、姫に好意を持たない人物とも指定されている。
そのため、この塔を登るのは姫に大変でも直接会い、言いたいことがあるものだけだった。
クェイル王女の行動は敵も少なくはなかったので、登る人は1日数人いるのです。
私は帰る前に最後に心優しいテンペスト国の王妃にアドバイスをすることにしました。
塔に登る際は契約書を書かせなさいと。
恨みのせいでクェイル王女を害する人がいるかもしれないので、それを阻止する契約。
途中で気力がもたなかった時の一度のみ転移することが出来る契約。
逃がす意志が芽生えると転移してしまう契約。
塔には姫が老衰以外で死なないような魔法陣を刻み込みなさいと。
食事が転移される魔方陣。
身体を清潔にする魔方陣。
病気になったときの医療の繋がりができる為の魔方陣。
という例えばの話を混ぜながらのアドバイスに王妃は喜んで実行した。
色々と抜けがあるから、それは紙で伝えようと思っていたのだけど、部屋に置いてきてしまったわ。
きっと城のメイドさんが伝えてくれるはずですよね。あら、でも、あのメイドさんよくクェイル王女に詰られていた気が。
そうそう、クェイル王女の取り巻き三人は実家に戻されたらしい。
社交場には一切現れず、どうなっているのかも分からない状態のようだ。
三人とも騎士団という共通点があったのだけど、何故にあんなにもクェイル姫に傾倒していたのかは不明のままである。
でも、その時期にほぼ獣に近い獣人が殺された事件があったらしい。
「はあ、本当に私で良かったのです?」
獣人の国に帰る途中の馬車の中で抱き締めるように膝に顔を埋めてごろ寝するイェシル殿下。
耳がピコピコ動く様は、癒されるけど何の変哲もない私がこの国宝級イケメンに気に入られる理由がわからない。
「……その内な。」
「そうやってこの間も言ってましたよ。」
「所であれが最後のアドバイスなのか?」
「もう。すぐ誤魔化して。」
照れているのか知らないが、いつもこの質問での本意はわからない。
その内に、もっと打ち解けられたら答えてくれるのか。
彼のいう最後のアドバイスとは幽閉の塔の事だろう。
私はこれ以降人間の国、特にテンペスト国の相談は乗らない予定である。
もしかしたら個人的に受けるかもしれないけど、国の問題には関わることはしない。
これは私の国に対する復讐。
いまだになんで私やカインがあんな目に合わなくてはならなかったかなんてわからない。
最初はちょっとした知識だったのに。
この世界にはたまに数百年に一度、知識を持つものが現れるらしい。そのものはその知識をもって世界を変えるらしい。
らしいと言うのはこの話を聞いたのはカインと再開したときだった。イェシル殿下が古い文献を引っ張り出して教えてくれた。
「本心を言えば関わりたくない。私が前世を持つ人だと知っているのは少ないでしょう?でも、獣人の国が他国にアドバイスをしていれば勘ぐる者もいるでしょう。」
だからといって故郷だと高を括ってくるようなら、絶対何も言わない。
だから、最後のアドバイスなの。
その言葉をきいても食い下がらないのなら、覚悟を決めて貰いましょう。
「アドバイスは紙で答える形式が良いな。俺が壁になるから絶対に自ら首を突っ込むなよ。」
「有り難うございます。旦那様。」
「誘惑されても精霊の国にはいくなよ。」
イェシル殿下の心配は無用なのだけど、嫉妬してくれるのが嬉しくてなにも返事をしない。
それにしても、こんなに濃厚な日々は久しぶりだったな。よく読んだラベノの題名ならこんな感じかしら。
この記憶、復讐に使います!
なんてね。
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