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惹かれるのは芯の強さ
しおりを挟むぼそぼそだった毛並みは艶々と飲み込まれそうな闇色の極上な状態にまで生まれかわった。
肌は透明さが増し、リドリーによる美の追求によりあの時の手のひらの傷以外はしっとり艶々でいつまでも触っていたい状態になった。
相変わらず色々な設計図らしき物を書いているが、あまりにも過激なのは始末してしまっている。
後々に後悔するのは彼女だからな。
最初の拳銃とやらの設計図を黄泉の国に送ったら、すぐさまこちらにお土産と共に飛んで来た。
お土産が彼女の大切な奴だとわかった時は腹が煮えくり返りそうになって、黄泉の国の知人、管理者が慌てて止めにはいってきた。
とりあえず、拳銃の設計図はその男に渡しておく。
今までレイリを守っていたんだ、扱いは心得ているだろう。もし、悪用したら殺せば良いしな。
なあに、罪は姫様が被ってくれるだろうよ。
そんな悪どいことを考えていたら、仕事部屋のドアが開いて、フィシゴが彼女が王との面会を望んでいると聞いた。
ちょうど、獣人の国で取れた鉱石の事で話し合いが行われていたはずだ。
俺はあの鉱石は好きにはなれなかったが、義姉が気に入ってアクセサリーにしていたな。
早速、邪魔するか。
と思っていたら本当に邪魔することになってしまった。
あの取れた鉱石はレイリ曰く、毒を含んでいるらしい。熱や化学変化で毒を発生するとは、この事は血気盛んな人には内密に処理をしないといけない。
さらに、金が含まれていることは絶対に避けないと、欲望のまま取りに行き死亡なんて笑えない。
兄貴には、褒美というなの面倒な外交を任されたが、レイリの嫁認定と、影の報告が聞けてまあ、いいだろう。
嫁の身体を抱き上げると、優しい花の香りが鼻腔を擽る。
香を纏う時間はなかったはずだから、これは彼女自身の香りなのだろう。よく、学生時代のときサボっていた庭の匂いに似ていて落ち着く。
その夜、面白いことをしようと、黄泉の国の知人が言い出した。
拳銃の試作品が出来たと嘯いて、実験場に集まった俺達。
日に日に美しくなって行くレイリに満足げに喉を鳴らしているとフィシゴにニヤニヤと突っつかれたので代わりにアイアンクローをしておく。
ただ、わざとだとはいえ薄荷の匂いが鼻に付く。
耳栓も慣れない物だからかぞわぞわする。
あとは、あの男が動けば始まっておわる。
「妹か。」
あの男、カインが生きていたことに涙して、この世界への銃の危険性を知ったレイリを、自由にしようとしていた。それを許すほど、軽い気持ちではない。
臨戦体制をとろうとしたら、なんとも聞きなれない言葉が出てきた。
カインとレイリは兄妹だったのか。
知識を持つものがカインだと、思っていたテンペスト国の膿み達が、レイリを手込めにして仕舞わないように、幼い頃からの許嫁風を装い、神の罰を理由にしていたらしい。
そこは褒めてやろう。
と思っていたが俺から引き離そうとするカインに低い唸り声が出てしまった。
だが、『イェシル殿下がいいの』なんて聞けたからどうでも良くなってしまった。
どうしても復讐がしたいという嫁に、リドリーが代打案を述べてきた。
まあ、久しぶりに知人に手紙を書くのも良いかもしれないな。
ついでに、嫁のアドバイスで貸しを作るのも良いかもな。海の国のやつらは直ぐに飛び付くだろう。精霊の国も薄暗く陰険な世界が少しはマシになるだろうよ。
生地はそうだな、東の国の奴に聞くか。
色々と着飾らせる為の計画を練りながら、二人だけで内緒話をしていると思っているカインとレイリの計画に口元を緩ませた。
死にかけの燻る炎のような瞳も良かったが、凛としたかっこ可愛い嫁の方が比べられないほどに惹かれている。
本当にこんな良い女を巡り合わせてくれた姫には感謝だな。
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