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14.シルバーの指輪
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「なぁ、陸斗。俺もさっきからずっと気になってることがあるんだけど、訊いてもいいか?」
「ああ。なんだよ」
「陸斗は、俺を振ったくせに、俺と別れたくせに、なんでまだ指輪を付けてるんだ?」
「えっ? いや、これはその……」
昨日の夜からシルバーの指輪を付けっぱなしだった。指輪を眺めながら大河のことを考えていた時に、突然の春希の訪問にとりあえず指にはめたんだった。
「あとさ、なんで俺達が別れる時に『キスしてくれ』なんてこと俺に言ったんだよ」
「それは……」
過去の恥ずかしい言動の指摘はやめろ。あれはつい寂しくて口走ってしまっただけのことで……。
「陸斗。俺は1%でも可能性があるなら、お前のことを諦めたくない。もしかしてお前、俺を嫌いになって別れを切り出したけど、ほんの少しでも後悔……してたりってことは、ないか……? 別れてみて、気持ちが落ち着いて、俺を許してやろうって思い直してくれたりは、ないか……?」
大河は床に片膝をつき、陸斗と目線を揃えて、陸斗の顔色をうかがっている。まるで恋人にうやうやしくプロポーズをするときの姿勢だ。
「いや、そもそも俺は大河のことを嫌いになって別れたんじゃない……」
「え……?」
陸斗の言葉に大河がぴくりと反応した。
「大河が俺を嫌いになって、でも大河は別れようとは言えないから、俺から言わなくちゃ、大河との関係を終わらせなくちゃと思って、それで、お前に『別れよう』って……」
「はぁ? 色々おかしい。まず俺が陸斗のことを嫌いになるなんてありえない。そして俺のためを思うなら『別れよう』なんて言うのはおかしいだろ。俺は陸斗のそばに居たいと思ってるのに。まぁ、俺からお前に三行半を突きつけることだけは絶対にないけどな」
「だって大河の俺に対する態度はひどかった。俺に冷たいし、笑顔もない。喧嘩ばっかりで……」
「そっか。そうだよな……。俺が悪かった。お前を追い詰めるようなことをして……俺は本当に陸斗のことを理解してなかった」
誤解していたとはいえ、大河に避けられて本当に苦しかった。
「まさか陸斗はそんなに俺に触って欲しいと思ってたなんてな!」
ん……? こんなときに大河はどうして嬉しそうな顔をするんだ……?
「いつもそんなこと興味ないって態度だったのに、本当は俺に抱かれたりキスされたりしたかったのか? そういうの、実は好きってことか?」
大河! 赤裸々に言うなよ! 恋人同士だったらそういうのも大事だろ……。
「俺、陸斗はそういうのは好きじゃなくて、いつも俺に付き合わせて悪いなと思ってた……。陸斗が新井のことが好きなのかと勘違いしてからはお前に手を出さないようにしようって必死で我慢してたのに……」
本当に大河はバカだ。ひとり勘違いして……。そんな事情を知らない陸斗は大河に嫌われたと思ってたのに。
大河は愛おしそうに陸斗を見つめてくる。
「なぁ、陸斗。別れた時の『俺にキスしてくれ』っていうお前の言葉はまだ有効? あの時は、陸斗は新井のものだと思ってたから我慢したけど、それが誤解なら、俺、お前に最後のキスしたい」
最後なんて言うな。
これで大河と終わりだなんて——。
大河に言わなくちゃ。
まだ大河のことが好きだって。大河に嫌われたわけじゃないのなら、別れる理由もなかったって。でも今さら——。
「陸斗。俺はお前が好き。お前に振られて、そばにいることを許されなくても、それでもずっとお前のことが好きだ」
大河は陸斗を真っ直ぐに見つめている。大河の瞳に映る陸斗の姿を確認できるくらい、ひたすらに。
「でも、もし陸斗が俺のことを嫌いじゃないなら、一緒にいたい。陸斗の気まぐれでもいい。他に好きな人が出来たら俺を捨てていい。それでも俺は陸斗のこと待ってるから。何度陸斗に振られても構わない。陸斗が俺を少しでも必要としてくれるなら気軽に呼び出してくれていい。セフレだって友達だって、都合のいい男だっていい。どんな関係でもいいから、陸斗のそばにいたい。頼む。俺をお前のそばにおいてくれないか?」
おい大河、そんな振り回されるだけの人生でも構わないのか?!
「大河。俺達、やり直せるかな……」
陸斗だって大河に負けないくらい、大河のことを想ってる。大河が好きでいてくれるなら、もう一度大河と——。
「大河とまた恋人同士になりたい……昔みたいに二人で一緒にいられるかな……?」
二人の間には色々な誤解があった。それでもお互いが想い合っているのなら、今からでもやり直せるのではないか。
「俺、大河のことが好きだ。大河を自由にしなくちゃって別れを決めたけど、早く忘れなくちゃって気張ってみたけど無理だ。大河を見ると胸が苦しくなる。大河が許してくれるならまた一緒にいたい……」
「陸斗……」
大河は陸斗にキスをした。大河との久しぶりのキスだ。
「ああ。なんだよ」
「陸斗は、俺を振ったくせに、俺と別れたくせに、なんでまだ指輪を付けてるんだ?」
「えっ? いや、これはその……」
昨日の夜からシルバーの指輪を付けっぱなしだった。指輪を眺めながら大河のことを考えていた時に、突然の春希の訪問にとりあえず指にはめたんだった。
「あとさ、なんで俺達が別れる時に『キスしてくれ』なんてこと俺に言ったんだよ」
「それは……」
過去の恥ずかしい言動の指摘はやめろ。あれはつい寂しくて口走ってしまっただけのことで……。
「陸斗。俺は1%でも可能性があるなら、お前のことを諦めたくない。もしかしてお前、俺を嫌いになって別れを切り出したけど、ほんの少しでも後悔……してたりってことは、ないか……? 別れてみて、気持ちが落ち着いて、俺を許してやろうって思い直してくれたりは、ないか……?」
大河は床に片膝をつき、陸斗と目線を揃えて、陸斗の顔色をうかがっている。まるで恋人にうやうやしくプロポーズをするときの姿勢だ。
「いや、そもそも俺は大河のことを嫌いになって別れたんじゃない……」
「え……?」
陸斗の言葉に大河がぴくりと反応した。
「大河が俺を嫌いになって、でも大河は別れようとは言えないから、俺から言わなくちゃ、大河との関係を終わらせなくちゃと思って、それで、お前に『別れよう』って……」
「はぁ? 色々おかしい。まず俺が陸斗のことを嫌いになるなんてありえない。そして俺のためを思うなら『別れよう』なんて言うのはおかしいだろ。俺は陸斗のそばに居たいと思ってるのに。まぁ、俺からお前に三行半を突きつけることだけは絶対にないけどな」
「だって大河の俺に対する態度はひどかった。俺に冷たいし、笑顔もない。喧嘩ばっかりで……」
「そっか。そうだよな……。俺が悪かった。お前を追い詰めるようなことをして……俺は本当に陸斗のことを理解してなかった」
誤解していたとはいえ、大河に避けられて本当に苦しかった。
「まさか陸斗はそんなに俺に触って欲しいと思ってたなんてな!」
ん……? こんなときに大河はどうして嬉しそうな顔をするんだ……?
「いつもそんなこと興味ないって態度だったのに、本当は俺に抱かれたりキスされたりしたかったのか? そういうの、実は好きってことか?」
大河! 赤裸々に言うなよ! 恋人同士だったらそういうのも大事だろ……。
「俺、陸斗はそういうのは好きじゃなくて、いつも俺に付き合わせて悪いなと思ってた……。陸斗が新井のことが好きなのかと勘違いしてからはお前に手を出さないようにしようって必死で我慢してたのに……」
本当に大河はバカだ。ひとり勘違いして……。そんな事情を知らない陸斗は大河に嫌われたと思ってたのに。
大河は愛おしそうに陸斗を見つめてくる。
「なぁ、陸斗。別れた時の『俺にキスしてくれ』っていうお前の言葉はまだ有効? あの時は、陸斗は新井のものだと思ってたから我慢したけど、それが誤解なら、俺、お前に最後のキスしたい」
最後なんて言うな。
これで大河と終わりだなんて——。
大河に言わなくちゃ。
まだ大河のことが好きだって。大河に嫌われたわけじゃないのなら、別れる理由もなかったって。でも今さら——。
「陸斗。俺はお前が好き。お前に振られて、そばにいることを許されなくても、それでもずっとお前のことが好きだ」
大河は陸斗を真っ直ぐに見つめている。大河の瞳に映る陸斗の姿を確認できるくらい、ひたすらに。
「でも、もし陸斗が俺のことを嫌いじゃないなら、一緒にいたい。陸斗の気まぐれでもいい。他に好きな人が出来たら俺を捨てていい。それでも俺は陸斗のこと待ってるから。何度陸斗に振られても構わない。陸斗が俺を少しでも必要としてくれるなら気軽に呼び出してくれていい。セフレだって友達だって、都合のいい男だっていい。どんな関係でもいいから、陸斗のそばにいたい。頼む。俺をお前のそばにおいてくれないか?」
おい大河、そんな振り回されるだけの人生でも構わないのか?!
「大河。俺達、やり直せるかな……」
陸斗だって大河に負けないくらい、大河のことを想ってる。大河が好きでいてくれるなら、もう一度大河と——。
「大河とまた恋人同士になりたい……昔みたいに二人で一緒にいられるかな……?」
二人の間には色々な誤解があった。それでもお互いが想い合っているのなら、今からでもやり直せるのではないか。
「俺、大河のことが好きだ。大河を自由にしなくちゃって別れを決めたけど、早く忘れなくちゃって気張ってみたけど無理だ。大河を見ると胸が苦しくなる。大河が許してくれるならまた一緒にいたい……」
「陸斗……」
大河は陸斗にキスをした。大河との久しぶりのキスだ。
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