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2.楽しい日々
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それからの毎日は楽しすぎた。
高校卒業まで施設暮らしだった俺は友人も少ないし、今の職場も流れ作業の工場勤務。
仕事中に人と話す事は殆どない気楽な職場だが、地味に辛い。休みの日なんてもっと酷い。一日中、口を開かない日もあった。
なのに今はなんと家に凪沢がいる。仕事の時はマネージャーが迎えに来るのだが、今は仕事を少しセーブしたんだと言ってまぁまぁな確率で家に居てくれるのだ。
「おかえり。日向」
帰宅すると凪沢が迎えてくれる。料理を作って俺の帰宅を待ってくれていたようだ。
「今日はキーマカレーにしたよ」
「うわぁ、それ、俺の大好物!」
最初の敬語はどこへやら、俺はすっかり凪沢と友達感覚だ。
「あとこれ、リンゴサラダ」
「え! それも俺、好き」
凪沢はすごい。何も言っていないのに俺の好物ばかりを作ってくれる。
リンゴサラダは賛否分かれるところだろ。そんなものをよく当ててくるよな。
凪沢の話は面白い。
芸能界の裏話を聞かせてくれたり、生放送の失敗談を「笑いたければ笑えよ」と言いながら話してくれる。
凪沢出演のTV番組を2人で観ながら「ここ、NG連発したとこ」とか話してくれる。贅沢な本人解説副音声だ。
この美顔で、一見クールそうに見えるのに、性格がおっちょこちょいなところが天然ぽくて俺は好きだ。
「凪沢がこんなに面白くて優しい奴だとは知らなかったよ」
凪沢はソファベッド、俺はいつもの布団で寝ている。寝る間際に凪沢とたわいもないことを話す時間も俺は大好きだった。
「それは、相手が日向だから」
「えっ……?」
凪沢は俺に微笑みかけてきた。枕の上に肘をついてじっと俺を見つめている。
「日向は特別」
やばい。ドキドキする。
凪沢は綺麗だ。艶やかな髪も、滑らかな肌も、なによりも目が綺麗だ。
何もかも完璧で、欠点が見当たらない。
凪沢は選ばれるべくして選ばれた男なのだろう。
人気アイドル凪沢が、俺を特別扱いし、好意をむけてくれる。
こんな奇跡があるなんて信じられなくて、真っ直ぐな凪沢が眩しすぎて俺は「お、おう……」という情けない返事しかできなかった。
「職場のやつら、俺が凪沢優貴と知り合いだって知ったらびっくりするんだろうな!」
この日も凪沢の手料理を食べながら、いつもどおり馴れ馴れしく凪沢と話をしていた。
「そうかな。じゃあ、俺、日向の職場まで迎えに行こうか?」
思いがけない凪沢の提案に俺は「うわ、それ最高」と本心がヒャッホーしてきたが、もう一人の冷静な自分がそれを必死で抑えこむ。
「いいや、それは危険だ。お前は週刊誌や国民から追われる立場だろ? それにサインしろ握手しろって騒ぎになるぞ」
「いいよ。それくらい日向が望むならいくらでもやってやるよ」
待て待て。お前のサインはネットオークションでいくらで取引されてると思ってんだよ。握手会のチケットだって入手困難だ。
「いーよ、ただ言ってみただけだ。俺はお前と家で話せるだけで最高に幸せだよ」
俺の最大にして最幸の秘密は凪沢と一緒に暮らしている事だ。
この生活はかれこれ一週間続いていた。
高校卒業まで施設暮らしだった俺は友人も少ないし、今の職場も流れ作業の工場勤務。
仕事中に人と話す事は殆どない気楽な職場だが、地味に辛い。休みの日なんてもっと酷い。一日中、口を開かない日もあった。
なのに今はなんと家に凪沢がいる。仕事の時はマネージャーが迎えに来るのだが、今は仕事を少しセーブしたんだと言ってまぁまぁな確率で家に居てくれるのだ。
「おかえり。日向」
帰宅すると凪沢が迎えてくれる。料理を作って俺の帰宅を待ってくれていたようだ。
「今日はキーマカレーにしたよ」
「うわぁ、それ、俺の大好物!」
最初の敬語はどこへやら、俺はすっかり凪沢と友達感覚だ。
「あとこれ、リンゴサラダ」
「え! それも俺、好き」
凪沢はすごい。何も言っていないのに俺の好物ばかりを作ってくれる。
リンゴサラダは賛否分かれるところだろ。そんなものをよく当ててくるよな。
凪沢の話は面白い。
芸能界の裏話を聞かせてくれたり、生放送の失敗談を「笑いたければ笑えよ」と言いながら話してくれる。
凪沢出演のTV番組を2人で観ながら「ここ、NG連発したとこ」とか話してくれる。贅沢な本人解説副音声だ。
この美顔で、一見クールそうに見えるのに、性格がおっちょこちょいなところが天然ぽくて俺は好きだ。
「凪沢がこんなに面白くて優しい奴だとは知らなかったよ」
凪沢はソファベッド、俺はいつもの布団で寝ている。寝る間際に凪沢とたわいもないことを話す時間も俺は大好きだった。
「それは、相手が日向だから」
「えっ……?」
凪沢は俺に微笑みかけてきた。枕の上に肘をついてじっと俺を見つめている。
「日向は特別」
やばい。ドキドキする。
凪沢は綺麗だ。艶やかな髪も、滑らかな肌も、なによりも目が綺麗だ。
何もかも完璧で、欠点が見当たらない。
凪沢は選ばれるべくして選ばれた男なのだろう。
人気アイドル凪沢が、俺を特別扱いし、好意をむけてくれる。
こんな奇跡があるなんて信じられなくて、真っ直ぐな凪沢が眩しすぎて俺は「お、おう……」という情けない返事しかできなかった。
「職場のやつら、俺が凪沢優貴と知り合いだって知ったらびっくりするんだろうな!」
この日も凪沢の手料理を食べながら、いつもどおり馴れ馴れしく凪沢と話をしていた。
「そうかな。じゃあ、俺、日向の職場まで迎えに行こうか?」
思いがけない凪沢の提案に俺は「うわ、それ最高」と本心がヒャッホーしてきたが、もう一人の冷静な自分がそれを必死で抑えこむ。
「いいや、それは危険だ。お前は週刊誌や国民から追われる立場だろ? それにサインしろ握手しろって騒ぎになるぞ」
「いいよ。それくらい日向が望むならいくらでもやってやるよ」
待て待て。お前のサインはネットオークションでいくらで取引されてると思ってんだよ。握手会のチケットだって入手困難だ。
「いーよ、ただ言ってみただけだ。俺はお前と家で話せるだけで最高に幸せだよ」
俺の最大にして最幸の秘密は凪沢と一緒に暮らしている事だ。
この生活はかれこれ一週間続いていた。
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