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1.アイドル突然現る!
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「なぁ、ちょっとだけでいい、俺を匿ってくれないか?」
人種が違う。自分とのあまりの容姿の違いに咄嗟にそう思ってしまった。
オーラからして違う。
顔もいいけどスタイルもいい。他の誰にも見間違えようがないくらい、優れた容姿の持ち主だ。
俺はこいつの事を知っている。人気アイドル、出演するドラマは主演ばかり、二十歳にして既にかなりの知名度だ。
「……あ、あの、もしかして、凪沢優貴さんですよね……?」
「俺のこと、知っててくれたんだ。嬉しいなぁ。じゃあ話は早い。俺は面倒に巻き込まれてる。だから助けてくれないか?」
俺が……? こんな有名人を、助ける……?
「あ、いや……ど、どうすれば?!」
助けてくれと言われても俺、日向影虎は平凡だ。
はっきり言ってボディガードみたいに強くもなければ、容姿、頭脳、何をとっても普通なのだ。
「お前の家に俺を匿って欲しいんだ。頼む!」
凪沢は急くようにして俺の身体を押してマンションの方角へと進ませようとする。
一体何なんだ……?!
事情は全くわからないけど、こいつの素性はわかる。有名アイドル、決して悪い事はできない立場だろう。
「わかった! とりあえず俺の家に来てくれ!」
姿の見えない何者かに追われている様子の凪沢を放っておくことは出来なかった。
それに芸能人と普通に話せるだけでも光栄だ。こんな一般人の俺が少しでも役に立てるのならと凪沢をマンションに連れて行くことにした。
「ありがとう。迷惑かけてごめん」
「いいよ」
……じゃなかった。敬語だ、敬語!
俺は「別に構いません。有名人って俺みたいな一般人にはわからないけど色々大変なんすね」と言い直した。
「はい……。色々ありますよ」
俺が敬語を使うと合わせて凪沢も敬語に切り替えてきた。
「とりあえず適当に休んでて下さい。狭くて汚いですけど」
案内する程の広さもない。低所得者の男の一人暮らしだ。一応、築浅の風呂トイレ別々2コンロのワンルームマンションだが、間違っても芸能人をお迎えできるような設えではない。
でもドリップコーヒーくらいなら飲んでくれるかもしれないと、俺は湯を沸かし始めた。
はぁー。何なんだよ……あり得ないって!
緊張して、凪沢の方を見られずにいる。
俺は、実は凪沢のファンだ。
TVで見ていていつもかっこいいなと思っており、凪沢が出るという理由だけでそのドラマを録画して観ているくらいのファンだ。熱心に追っかけたりまではしていない。でも凪沢優貴の名前でネット検索して情報収集するくらいはファンだ。
「あ!」
大切な事を思い出し、急に凪沢を振り返る。凪沢は物珍しそうに俺の部屋を眺めているところだったが、俺の「あ!」で何事かとこちらを振り返った。
「あのっ、俺、どうすればいいですかっ?! 匿えって言われてあなたを匿いましたけど、ここでのんびりしていても大丈夫なんですか?! そもそも何から逃げてるんですか?!」
先ずは逃げてる理由を聞かなければならない。凪沢はのんびりコーヒーなど飲んでる場合じゃないのかもしれないのだ。
「ここに置いて下さればそれでもう安全です。事情があって住んでるマンション、事務所とか週刊誌に知られているいつもの行動範囲にいられなくなってしまったんです。なのでほとぼりが冷めるまでここに置いてもらうことって出来ますか?」
あ、そうなんだ……。芸能人ってホント一般人とは違うんだな。
週刊誌から逃げ回る人生など俺には想像もつかない。
「と、ところでいつくらいまで……?」
「数日……で収まってくれればと思ってますが、もう少し長くなるかもしれません……」
「え?! そんなに?!」
ちょっと待て。こんな狭いマンションにしばらくの間、アイドルと2人で暮らすことになるのか?!
「すみませんっ、迷惑ならいつでも出て行きます。遠慮なく仰ってください」
俺の「そんなに?!」を誤解したようで、凪沢に謝らせてしまった。
「いやっ、ち、違います! あの、だって……泊まるだけなら、隠れるだけならあなた程の人なら他にいくらでも選択肢あるんじゃないですか?! よりによってこんな俺みたいな一般人の家でいいんですか?!」
そこんところ不思議でしょうがない。宝くじにでも当たった気分だ。なぜか運良く自分の家が芸能人の隠れ家として使用されるクジを見事引き当てたらしい。
「俺はあなたを偶然見かけたときに、この人だったら信用できると咄嗟に思ったんです。迷惑はかけないように気をつけますので、どうかここに置いて下さい」
凪沢が深々と頭を下げてきた。
「いやいや、やめて下さいっ、そんなっ、もったいない! 俺としては芸能人のあなたがいくら居てくれても構わないと思ってますっ、なんなら俺が出ていきますから、自由に使って下さい!」
「そこまで仰って下さり、ありがとうございます。じゃ、お世話になります!」
凪沢がまた深々と頭を下げている。
芸能人に頭を下げられるなんてあり得ない。俺の方こそ「やめて下さい」と慌ててしまう。
「俺、遠慮しない性格なんで、出来るだけお世話になりますね。よろしく、日向影虎さん」
そう言った凪沢の笑顔は、日本全国のお茶の間をハッピーにしてしまうくらいの破壊力があった。
人種が違う。自分とのあまりの容姿の違いに咄嗟にそう思ってしまった。
オーラからして違う。
顔もいいけどスタイルもいい。他の誰にも見間違えようがないくらい、優れた容姿の持ち主だ。
俺はこいつの事を知っている。人気アイドル、出演するドラマは主演ばかり、二十歳にして既にかなりの知名度だ。
「……あ、あの、もしかして、凪沢優貴さんですよね……?」
「俺のこと、知っててくれたんだ。嬉しいなぁ。じゃあ話は早い。俺は面倒に巻き込まれてる。だから助けてくれないか?」
俺が……? こんな有名人を、助ける……?
「あ、いや……ど、どうすれば?!」
助けてくれと言われても俺、日向影虎は平凡だ。
はっきり言ってボディガードみたいに強くもなければ、容姿、頭脳、何をとっても普通なのだ。
「お前の家に俺を匿って欲しいんだ。頼む!」
凪沢は急くようにして俺の身体を押してマンションの方角へと進ませようとする。
一体何なんだ……?!
事情は全くわからないけど、こいつの素性はわかる。有名アイドル、決して悪い事はできない立場だろう。
「わかった! とりあえず俺の家に来てくれ!」
姿の見えない何者かに追われている様子の凪沢を放っておくことは出来なかった。
それに芸能人と普通に話せるだけでも光栄だ。こんな一般人の俺が少しでも役に立てるのならと凪沢をマンションに連れて行くことにした。
「ありがとう。迷惑かけてごめん」
「いいよ」
……じゃなかった。敬語だ、敬語!
俺は「別に構いません。有名人って俺みたいな一般人にはわからないけど色々大変なんすね」と言い直した。
「はい……。色々ありますよ」
俺が敬語を使うと合わせて凪沢も敬語に切り替えてきた。
「とりあえず適当に休んでて下さい。狭くて汚いですけど」
案内する程の広さもない。低所得者の男の一人暮らしだ。一応、築浅の風呂トイレ別々2コンロのワンルームマンションだが、間違っても芸能人をお迎えできるような設えではない。
でもドリップコーヒーくらいなら飲んでくれるかもしれないと、俺は湯を沸かし始めた。
はぁー。何なんだよ……あり得ないって!
緊張して、凪沢の方を見られずにいる。
俺は、実は凪沢のファンだ。
TVで見ていていつもかっこいいなと思っており、凪沢が出るという理由だけでそのドラマを録画して観ているくらいのファンだ。熱心に追っかけたりまではしていない。でも凪沢優貴の名前でネット検索して情報収集するくらいはファンだ。
「あ!」
大切な事を思い出し、急に凪沢を振り返る。凪沢は物珍しそうに俺の部屋を眺めているところだったが、俺の「あ!」で何事かとこちらを振り返った。
「あのっ、俺、どうすればいいですかっ?! 匿えって言われてあなたを匿いましたけど、ここでのんびりしていても大丈夫なんですか?! そもそも何から逃げてるんですか?!」
先ずは逃げてる理由を聞かなければならない。凪沢はのんびりコーヒーなど飲んでる場合じゃないのかもしれないのだ。
「ここに置いて下さればそれでもう安全です。事情があって住んでるマンション、事務所とか週刊誌に知られているいつもの行動範囲にいられなくなってしまったんです。なのでほとぼりが冷めるまでここに置いてもらうことって出来ますか?」
あ、そうなんだ……。芸能人ってホント一般人とは違うんだな。
週刊誌から逃げ回る人生など俺には想像もつかない。
「と、ところでいつくらいまで……?」
「数日……で収まってくれればと思ってますが、もう少し長くなるかもしれません……」
「え?! そんなに?!」
ちょっと待て。こんな狭いマンションにしばらくの間、アイドルと2人で暮らすことになるのか?!
「すみませんっ、迷惑ならいつでも出て行きます。遠慮なく仰ってください」
俺の「そんなに?!」を誤解したようで、凪沢に謝らせてしまった。
「いやっ、ち、違います! あの、だって……泊まるだけなら、隠れるだけならあなた程の人なら他にいくらでも選択肢あるんじゃないですか?! よりによってこんな俺みたいな一般人の家でいいんですか?!」
そこんところ不思議でしょうがない。宝くじにでも当たった気分だ。なぜか運良く自分の家が芸能人の隠れ家として使用されるクジを見事引き当てたらしい。
「俺はあなたを偶然見かけたときに、この人だったら信用できると咄嗟に思ったんです。迷惑はかけないように気をつけますので、どうかここに置いて下さい」
凪沢が深々と頭を下げてきた。
「いやいや、やめて下さいっ、そんなっ、もったいない! 俺としては芸能人のあなたがいくら居てくれても構わないと思ってますっ、なんなら俺が出ていきますから、自由に使って下さい!」
「そこまで仰って下さり、ありがとうございます。じゃ、お世話になります!」
凪沢がまた深々と頭を下げている。
芸能人に頭を下げられるなんてあり得ない。俺の方こそ「やめて下さい」と慌ててしまう。
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