2 / 6
2.楽しい日々
しおりを挟む
それからの毎日は楽しすぎた。
高校卒業まで施設暮らしだった俺は友人も少ないし、今の職場も流れ作業の工場勤務。
仕事中に人と話す事は殆どない気楽な職場だが、地味に辛い。休みの日なんてもっと酷い。一日中、口を開かない日もあった。
なのに今はなんと家に凪沢がいる。仕事の時はマネージャーが迎えに来るのだが、今は仕事を少しセーブしたんだと言ってまぁまぁな確率で家に居てくれるのだ。
「おかえり。日向」
帰宅すると凪沢が迎えてくれる。料理を作って俺の帰宅を待ってくれていたようだ。
「今日はキーマカレーにしたよ」
「うわぁ、それ、俺の大好物!」
最初の敬語はどこへやら、俺はすっかり凪沢と友達感覚だ。
「あとこれ、リンゴサラダ」
「え! それも俺、好き」
凪沢はすごい。何も言っていないのに俺の好物ばかりを作ってくれる。
リンゴサラダは賛否分かれるところだろ。そんなものをよく当ててくるよな。
凪沢の話は面白い。
芸能界の裏話を聞かせてくれたり、生放送の失敗談を「笑いたければ笑えよ」と言いながら話してくれる。
凪沢出演のTV番組を2人で観ながら「ここ、NG連発したとこ」とか話してくれる。贅沢な本人解説副音声だ。
この美顔で、一見クールそうに見えるのに、性格がおっちょこちょいなところが天然ぽくて俺は好きだ。
「凪沢がこんなに面白くて優しい奴だとは知らなかったよ」
凪沢はソファベッド、俺はいつもの布団で寝ている。寝る間際に凪沢とたわいもないことを話す時間も俺は大好きだった。
「それは、相手が日向だから」
「えっ……?」
凪沢は俺に微笑みかけてきた。枕の上に肘をついてじっと俺を見つめている。
「日向は特別」
やばい。ドキドキする。
凪沢は綺麗だ。艶やかな髪も、滑らかな肌も、なによりも目が綺麗だ。
何もかも完璧で、欠点が見当たらない。
凪沢は選ばれるべくして選ばれた男なのだろう。
人気アイドル凪沢が、俺を特別扱いし、好意をむけてくれる。
こんな奇跡があるなんて信じられなくて、真っ直ぐな凪沢が眩しすぎて俺は「お、おう……」という情けない返事しかできなかった。
「職場のやつら、俺が凪沢優貴と知り合いだって知ったらびっくりするんだろうな!」
この日も凪沢の手料理を食べながら、いつもどおり馴れ馴れしく凪沢と話をしていた。
「そうかな。じゃあ、俺、日向の職場まで迎えに行こうか?」
思いがけない凪沢の提案に俺は「うわ、それ最高」と本心がヒャッホーしてきたが、もう一人の冷静な自分がそれを必死で抑えこむ。
「いいや、それは危険だ。お前は週刊誌や国民から追われる立場だろ? それにサインしろ握手しろって騒ぎになるぞ」
「いいよ。それくらい日向が望むならいくらでもやってやるよ」
待て待て。お前のサインはネットオークションでいくらで取引されてると思ってんだよ。握手会のチケットだって入手困難だ。
「いーよ、ただ言ってみただけだ。俺はお前と家で話せるだけで最高に幸せだよ」
俺の最大にして最幸の秘密は凪沢と一緒に暮らしている事だ。
この生活はかれこれ一週間続いていた。
高校卒業まで施設暮らしだった俺は友人も少ないし、今の職場も流れ作業の工場勤務。
仕事中に人と話す事は殆どない気楽な職場だが、地味に辛い。休みの日なんてもっと酷い。一日中、口を開かない日もあった。
なのに今はなんと家に凪沢がいる。仕事の時はマネージャーが迎えに来るのだが、今は仕事を少しセーブしたんだと言ってまぁまぁな確率で家に居てくれるのだ。
「おかえり。日向」
帰宅すると凪沢が迎えてくれる。料理を作って俺の帰宅を待ってくれていたようだ。
「今日はキーマカレーにしたよ」
「うわぁ、それ、俺の大好物!」
最初の敬語はどこへやら、俺はすっかり凪沢と友達感覚だ。
「あとこれ、リンゴサラダ」
「え! それも俺、好き」
凪沢はすごい。何も言っていないのに俺の好物ばかりを作ってくれる。
リンゴサラダは賛否分かれるところだろ。そんなものをよく当ててくるよな。
凪沢の話は面白い。
芸能界の裏話を聞かせてくれたり、生放送の失敗談を「笑いたければ笑えよ」と言いながら話してくれる。
凪沢出演のTV番組を2人で観ながら「ここ、NG連発したとこ」とか話してくれる。贅沢な本人解説副音声だ。
この美顔で、一見クールそうに見えるのに、性格がおっちょこちょいなところが天然ぽくて俺は好きだ。
「凪沢がこんなに面白くて優しい奴だとは知らなかったよ」
凪沢はソファベッド、俺はいつもの布団で寝ている。寝る間際に凪沢とたわいもないことを話す時間も俺は大好きだった。
「それは、相手が日向だから」
「えっ……?」
凪沢は俺に微笑みかけてきた。枕の上に肘をついてじっと俺を見つめている。
「日向は特別」
やばい。ドキドキする。
凪沢は綺麗だ。艶やかな髪も、滑らかな肌も、なによりも目が綺麗だ。
何もかも完璧で、欠点が見当たらない。
凪沢は選ばれるべくして選ばれた男なのだろう。
人気アイドル凪沢が、俺を特別扱いし、好意をむけてくれる。
こんな奇跡があるなんて信じられなくて、真っ直ぐな凪沢が眩しすぎて俺は「お、おう……」という情けない返事しかできなかった。
「職場のやつら、俺が凪沢優貴と知り合いだって知ったらびっくりするんだろうな!」
この日も凪沢の手料理を食べながら、いつもどおり馴れ馴れしく凪沢と話をしていた。
「そうかな。じゃあ、俺、日向の職場まで迎えに行こうか?」
思いがけない凪沢の提案に俺は「うわ、それ最高」と本心がヒャッホーしてきたが、もう一人の冷静な自分がそれを必死で抑えこむ。
「いいや、それは危険だ。お前は週刊誌や国民から追われる立場だろ? それにサインしろ握手しろって騒ぎになるぞ」
「いいよ。それくらい日向が望むならいくらでもやってやるよ」
待て待て。お前のサインはネットオークションでいくらで取引されてると思ってんだよ。握手会のチケットだって入手困難だ。
「いーよ、ただ言ってみただけだ。俺はお前と家で話せるだけで最高に幸せだよ」
俺の最大にして最幸の秘密は凪沢と一緒に暮らしている事だ。
この生活はかれこれ一週間続いていた。
100
あなたにおすすめの小説
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
オメガはオメガらしく生きろなんて耐えられない
子犬一 はぁて
BL
「オメガはオメガらしく生きろ」
家を追われオメガ寮で育ったΩは、見合いの席で名家の年上αに身請けされる。
無骨だが優しく、Ωとしてではなく一人の人間として扱ってくれる彼に初めて恋をした。
しかし幸せな日々は突然終わり、二人は別れることになる。
5年後、雪の夜。彼と再会する。
「もう離さない」
再び抱きしめられたら、僕はもうこの人の傍にいることが自分の幸せなんだと気づいた。
彼は温かい手のひらを持つ人だった。
身分差×年上アルファ×溺愛再会BL短編。
『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました
小池 月
BL
大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。
壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。
加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。
大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。
そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。
☆BLです。全年齢対応作品です☆
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について
kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって……
※ムーンライトノベルズでも投稿しています
【完結】この契約に愛なんてないはずだった
なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。
そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。
数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。
身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。
生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。
これはただの契約のはずだった。
愛なんて、最初からあるわけがなかった。
けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。
ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。
これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。
αとβじゃ番えない
庄野 一吹
BL
社交界を牽引する3つの家。2つの家の跡取り達は美しいαだが、残る1つの家の長男は悲しいほどに平凡だった。第二の性で分類されるこの世界で、平凡とはβであることを示す。
愛を囁く二人のαと、やめてほしい平凡の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる