俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ

雨宮里玖

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番外編 浅宮くんの事情5

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「ふっざけんな! てめぇ!」

 突然浅宮が現れ、有栖と俺をぐいっと引き剥がす。

「三倉に触るな!!」

 浅宮は有栖を怒鳴りつける。なんだ? 何がどうなってる……?

「有栖。お前いま、三倉に何しようとした……? お前、三倉が俺と付き合ってるって知っててふざけた真似しやがって……!」

 浅宮は怒りに震えている。ワナワナと震える拳を有栖めがけて振り下ろそうとしている。



「浅宮待てよ!」

 俺は迷いなく有栖を庇い、ふたりの間に立った。

「有栖は何も悪くない!! 俺の相談に乗ってくれてただけだ!」

 俺を見て、浅宮は手を下ろした。少しは冷静になってくれたようだ。

「三倉。なんで有栖を庇う? お前さっき有栖に何されるとこだった? 俺が来なかったら今頃三倉は有栖と……」

 浅宮は何をそんなに辛そうな顔をしているんだ?
 有栖が俺に悪いことなんてするわけないのに。

 そのとき昼休み終わりのチャイムが鳴る。もう教室に戻らないといけない。




「有栖はさっさと戻れよ。そんで三倉は俺に付き合え」

 マジか。浅宮と一緒に五限サボり?!
 うっわ、なんて言い訳するんだろ。でも浅宮に付き合わない訳にはいかない。今話さなかったら、浅宮との関係は修復不可能なってしまうかもしれない。
 そんなの絶対に嫌だから。





 俺と浅宮は、校舎の外の非常階段の陰にしゃがみ込み、隠れている。
 授業をサボるなんて俺は慣れなくて落ち着かないが、浅宮はなんともないみたいだ。高校では浅宮が授業をサボる姿なんてみたことないのにな。

「なぁ三倉。もしかして俺と付き合うことにして、後悔してる……?」
「ええ!!」

 やっべ、驚きすぎて思わずデカい声を出してしまった。授業をサボって隠れてるんだから静かにしなきゃいけないのに。

「はっきり言ってくれてもいいよ。覚悟は……できてないけど、三倉には無理をして欲しくないから」
「無理なんかしてないよっ」

 なんで浅宮はそんなことを言う……?
 俺、何かやらかしたか?!

「じゃあなんで昨日先に帰ったんだよ。木曜日は一緒に帰れる日なのにさ。俺が学校中を探し回ってたら、木場から『三倉は帰った』って聞いてすげぇショックだった……」
「えっ……」

 どういうことだ?! 

「浅宮こそ、目黒と帰ったんじゃなかったのか?! 俺、あの日いつもの教室に行ったんだ。そしたら浅宮が目黒とふたりで仲良く話をしてどっかに行っただろ? 俺、浅宮は目黒を待ってたんだと思って……」
「はぁ? んな訳ねぇだろ。なんで俺が目黒と帰んなきゃいけないわけ? そこはどう考えても三倉だろ?」
「じゃあ、浅宮は目黒とどこに行ったんだよ……」
「んん? 三倉が目黒に頼んだんじゃないの?」
「何を?」
「三倉が目黒に『教室は人の目があるから、駐輪場で待ってる』って俺に伝えてくれって……俺、それ聞いて駐輪場に行ったのに三倉はいないしさ……」
「待て。俺そんなこと目黒に頼んでない!」

 目黒はおかしいぞ。あいつは俺が浅宮の待つ教室の近くにいたことを知っているはずだ。

「えっ……なに俺、目黒に騙されたの?」

 浅宮はものすごく驚いている。

「だってこれ……」

 浅宮がポケットから取り出したのは消しゴムだ。で、そのケースをずらすと『三倉大好き』の文字。

「え?! なんで浅宮が持ってんの?!」

 俺が失くしたはずの消しゴムが、なぜ浅宮の手に渡ってるんだ……?

「三倉が、目黒にこれを渡して伝言したんじゃないの?」
「えっ?」
「俺、目黒からこれを渡されて、三倉が俺を駐輪場で待ってるって言われたから俺は目黒を信じたんだけど。だってこれ、三倉だけが持ってるものだから」

 どういうことだ? 目黒がこの消しゴムをなぜか持っていて、それを利用して浅宮を騙したってことなのか……?
 いったい何のために……?

「俺、その消しゴム無くしたんだ……。おとといの水曜日の午前中までは筆箱に入ってたんだけど、次の日見たら無くなってた」
「無くした……?! それをなんで目黒が持ってんの? あいつまさか……!」

 俺もまさかとは思う。でも、その可能性高くないか?
 で、その理由。目黒はもしかして、俺と浅宮をすれ違わせて遠ざけようとした……?





「三倉に心配かけたくなかったから、黙ってたけど話す」

 浅宮はひと呼吸置いてから俺に話し始める。

「俺たちの関係が目黒にバレたんだ」

 俺はびっくりし過ぎて言葉もない。
 俺、何かしくったのか?! どこにバレる要素あった? 

「この前の木曜日、カラオケ行ったっしょ? あの帰りにさ、三倉を送ったあと、駅で目黒に声をかけられた」
「目黒があそこにいたのか?!」
「そう。隠れてやがった。で、いきなり言われた。『三倉と付き合ってるのか』って」
「マジか!」
「俺ももちろん否定したんだけど駄目だった。ごめん、俺のせい。俺がいつも学校で三倉を見過ぎてたんだ。それで俺が完全に三倉を意識してることがバレて……ホントごめん。マジですいません……」

 浅宮は俺に頭を下げてきた。俺は慌てて「いいよっ」と首を横に振る。

「俺だって、浅宮をきっとそういう目で見てたから……」

 浅宮の視線が嬉しくてつい俺もニマニマしてた。浅宮だけが原因じゃないと思う。

「そんな俺、三倉のこと見てたか?! 見てた……んだよなぁ。だからバレたのか…….」

 しょげ返る浅宮は可愛い。たしかに俺が浅宮を見るといつも目が合ってたな……。それって浅宮はいつも俺を見ていたから……?

「だから最近は三倉を見るのをやめました。すっげぇつまんねぇけど」

 そうだったのか。急に浅宮と視線が合わなくなったのは、浅宮が不本意ながらも俺を見ないようにしていたからだったんだ。



「目黒は日本史のノートを貸せばみんなには黙ってるっつーから、とりまノート貸してさ。そっからやたら俺にLINEばっか送ってきて、めんどくせぇけどこっちは弱み握られてるしさ、まぁ適当に相手するしかないよな」

 浅宮は、目黒を邪険にすることができずに仕方なく相手をしていただけなのか。目黒に冷たくして俺との交際を暴露されても困るから。
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