好きだから傍に居たい

麻沙綺

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失敗…亜耶

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 部活を終えて、帰宅すると部屋着に着替えて、夕飯の支度に取りかかった。
 今日の夕飯は、遥さんの好きな物にしよう。
 久し振りに真由ちゃんに会える事になったし、これって、遥さんのお陰だと言えるものね。
 そう思って、準備を始めた時だった。

 Piiiii......Piiiii......

 キッチンテーブルに置いていた携帯が鳴った。
 私は、それを手にして操作する。それは、遥さんからのメールで。


  "亜耶へ
  ちょっと、帰りが遅くなる。相手は透だから心配するな。
  終わったら、電話かメールするな。夕飯は、一緒に食べたいから待っててな"

 との事だった。
 珍しいなぁ。湯川くんが遥さんに相談事なんて。
 取り敢えず、返信しておかないとね。

  "わかったよ、気を付けてね。
  後、その……遥さんの大好物を作っておくね"

 そう打ち返した。
 らしくない事しちゃったかも……。
 そう思いながら、夕飯を作り出した。


 ほぼ夕飯を作り終えたところにメールが届いた。


  "今から帰るよ"


 短いけど、もうすぐ帰ってきてくれるという安心感が胸に広がる。

  "うん。気を付けて帰ってきてくださいね"

 そう返信した。

 遥さんが返って来るまで、勉強してようかな。
 私は、自分の部屋から問題集と筆記用具をリビングに持ち込んで、勉強をし出した。
 暫くして、辺りがやけに焦げ臭い気がして、キッチンに行けば、鍋から黒い煙が……。慌てて火を消した。
 あ~あ、やっちゃった。
 煮込んでいたの、忘れてた。
 私は、鍋の蓋をとる。
 うっ……、これはひどいよ。
 どうしよう、こんなの食べさせられないよ。
 何かに夢中になると、周りが見えなくなるのわかってたのに……。
 落ち込んでると。
 ガチャ……。
 玄関の開く音が聞こえてきた。
 やばい。
「ただいま、亜耶。」
 遥さんの声が、何処と無しに嬉しそうに聞こえる。
 浮かれてる時の声だ。さっき、好物を作っておくってメールしたから……。
 あう……、どうしよう。
 取り敢えず、迎えに出ないと怪しまれるよね。
 私は、キッチンからでて玄関までの廊下をパタパタと音を立てて遥さんの元に向かった。

「お帰りなさい。」
 私はそう言いながら、遥さんに抱きついた。
「ちょ……亜耶、どうしたんだ?」
 遥さんが、動揺しながらも優しく抱き締めてくれる。
 滅多に私から抱きつかないから、余計に動揺するよね。
 わかってるけど、怒られる前に甘えておいた方がいいかなって…思ったりもしてて……。
「ん……。別に……。ただ、抱きつきたかっただけ……。」
 口にしたとたん、顔が熱くなってきた。
 うわ~、恥ずかしい事してると自覚したら、今更ながら身体全体が火照ってくる。
 顔も上げられなくなって、遥さんの胸に額を押し付けた。
「亜耶?」
 遥さんの動揺してる声で、名前を呼ばれてピックって震えたのは、致し方ないと思う。
「なぁ、取り敢えず、中に入ってもいいか?」
 その言葉に顔を上げて周りを見れば、玄関先で慌てて遥さんから離れて、俯き加減で、逃げるようにリビングに足を進めた。
 あ~あ、何て恥ずかしい事をしたんだろう。
 今日は、良いことがありすぎて、浮き足だって失敗しまくってる。もっと落ち着かないとって思うのに……。

 背後から、遥さんのクスクス笑う声が聞こえてくる。
 恥ずかしくて、穴に入りたいよ~。

 リビングテーブルに広げていた問題集を纏めて、隅に追いやった。
「亜耶。勉強してたんだな。」
 遥さんが、感心したように言う。
「あ、うん。遥さんの帰りを待ってる間にでも少しでも、進めておこうと思って……。」
 遥さんが、ソファーにドサッと座り、私が、その横にちょこんと座った。気が付けばこれが、何時もの定位置になっていた。
「あっ、これお土産。食後のデザートな。取り敢えず、冷蔵庫に仕舞っておいて。」
 遥さんから箱を受け取り、冷蔵庫に仕舞いに行く。
 やっぱ、匂うよね。どうしよう……。
 取り敢えず、気付かれないように話を少しだけ延ばそ。
 そうだ、あの話をしないと……。
 リビングに戻って、同じ場所に座ると。
「あの……ね。相談があるんだ。」
 ちょこっとだけ、甘えた声で遥さんを見て言えば。
「何?」
 チョッとだけ動揺した遥さんが、私の目を見て聞いてくる。
 うっ、何もかも見透かされたような気になるんですけど……。
 目を逸らしたくても逸らせられない。
「あの、ね。クラスの中で一番中の良い子に、この事話していいかな?」
 私は、ゆっくりと言葉にした。
 梨花ちゃんと約束したから……。ってのもあるんだけど、私自身が隠していたくないって思ったんだ。
「誰の事?」
 少しだけ堅い声で、聞いてきた。
「相沢梨花ちゃん。梨花ちゃんは、龍哉くんの彼女でもあるんだよ。」
 龍哉くんの事を出せば、絶対許してくれると思ったんだ。
「相沢…相沢……ああ、アイツか。」
 遥さんが、顎に手をやり何かを思い出したかの様に言う。
「龍哉が言っていた彼女って、相沢の事か……。まぁ、良いよ。亜耶が、信頼できる相手だというなら、俺は構わない。」
 と遥さんが言う。
「本当にいいの?」
 私は、確認の為にもう一度聞く。
「うん。なんだったら、全校生徒に言いふらしてもいいぞ。」
 そう言って、ニッコリと笑う遥さん。
 何て、恐ろしいことを……。
 あの三人だけで、コリゴリだっていうのに……。
「嘘……。っても半分は本気。亜耶は、俺にだって言って廻りたい。」
 遥さんが、抱き締めてきた。
「あぁ……。早く普通に戻りたい。そしたら、堂々と手を繋いで近所を歩けるのに……。」
 遥さんの言葉に嬉しく思いながら。
「そういえば、湯川くん何の用事だったの?」
 と疑問に思った事を聞いてみた。
「ん? あっ、そうだ。来週、真由の誕生日があるんだ。で、土曜日にサプライズの誕生日会をしたいんだと。俺、それ聞いてから思い出したんだよ。それで、明日学校が終わったら、プレゼント買いに行かないか?」
 遥さんが、私の顔を覗き込んでくる。
 真由ちゃんの誕生日!!
 それは、お祝いしてあげないと……。
「うん、行く。真由ちゃん、どんなのが好きなのかなぁ……。それとも、二人でお揃いの物をあげる?」
 真由ちゃんを思い浮かべながらあれこれと遥さんに聞く。
「それは、明日見て決めればいいだろ。それより、俺、腹へったんだけど。」
 遥さんが、口を尖らせて言う。
 ヤバイ、ヤバイ……。
 どうしよう……。
「う、うん……。温めてくるね。」
 私は、そう言ってキッチンに足を向けた。
「亜耶? どうした」
 後を追うように遥さんが来る。
 ギクッ。
 私が振り返れば、真後ろに遥さんが居て。
「これは、また、派手にやったな。」
 って、私の手元に在る鍋を見て言う。
「ごめんなさい。」
 項垂れて、謝るしかなかった。
 遥さんの大好物の肉じゃが。
 旨く出来てたのに……。
 落ち込んでる私に。
「ん、いいよ。下の方は無理だろうけど、上の方は比較的大丈夫そうだし。亜耶が、頑張って作ってくれたことが嬉しいよ。」
 そう言って、遥さんは私の頭を撫でる。
 優しすぎです。
「食材がかわいそうだから、私が食べるね。」
 私がそう言うと。
「無理しなくて良いよ。」
 遥さんの笑顔が、私を不安にさせる。
 何で、怒らないんだろう?
 でも、それを聞くのも怖い。
「それじゃあ、遥さんが食べた気にならないでしょ?」
 私がそう言葉にしたら。
 絶対に足りないと思うもん。
 肉じゃがをメインにして作ってたから、サイドだけじゃ足りないよ。
 私なら、少量だから大丈夫だけど……。
「……う~ん。」
 何やら考え込み出したかと思えば、冷蔵庫を覗き込んで……。
「亜耶。リビングで待ってな。」
 スーツの上着を脱ぎ、袖を捲りYシャツの上にエプロンをして言う。
 えっ…。
 遥さんにエプロン姿が、カッコ良くてつい見いてしまった。
「亜耶の分は、俺が作るから。だから、リビングで待ってて。」
 ニッコリと笑みを浮かべて言う遥さん。
「う、うん。」
 私は、戸惑いながらも言われた通りリビングに移動した。

 遥さん、料理できるんだ。
 一緒になって、一ヶ月くらい経つけど、一度もそんな素振り見せてくれなかった。
 私は、ソファーに座り近くにあったクッションを抱き抱えながら出きるのを待ったのだった。









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