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思わぬ火種…亜耶
しおりを挟む親たちが引き上げていった後、静まり返った場内に。
「亜耶ちゃん、遥さん。有難うございます」
と声が響いた。
何がだろうと首を傾げる私。
声の主は、龍哉くんだったのだけどその声に続くように次から次にとお礼の声が聞こえてくる。
お礼を言われるようなこと、してないよ私。
自分のことで精一杯だもの。
「亜耶は知らなかったみたいだな。」
遥さんが、呆れたように言う。
ん?
何の事だろう?
「この学校、龍哉みたいなカップルが多いってことだ。」
遥さんの言葉にようやく納得した。
龍哉くんみたいなカップル=セレブ×一般ってことだよね。
ってことは、別れなくてよかったとの安堵のお礼だと気付いた。
そんな私を見て、遥さんもお兄ちゃんも苦笑いしてる。
どうせ、そっち方面は、疎いですよ。
何て、膨れていたら。
「今日は、このまま解散してくれ。部活も中止だ。各々気を付けて帰れ。」
理事長の言葉に皆がゾロゾロと体育館を出て行く。
そんな中、お兄ちゃんと遥さんが険しい顔をして、話し込んでいた。
どうしたんだろう?
と耳を傾けた時だった。
「遥、雅斗くん。亜耶ちゃん。理事長室に来てくれ。」
理事長が声をかけてきたから、話が聞けなかった。
「亜耶、先に鞄を取ってこいよ。」
お兄ちゃんに言われて素直に頷いた。
「俺も一緒に行く。」
何時もの調子の遥さん。
少し、過保護のところがあるが、それは私を心配してるからっだてわかってる。
でもね、それがかえって何かを隠してるサインだって、私にはわかる。
長く一緒に居るからね。
何か、危険が何処かに潜んでるに違いないと。
「ほら、行くぞ。」
遥さんに手を捕られて、歩き出した。
ゆっくりと私のペースに会わせて歩いててくれる遥さん。
体育館を出たところで。
「遥さん!!」
と甲高い声と共に遥さんに抱きつく女の人が。
えっ……。
だれ?
動揺する私に対して遥さんは、冷静に彼女を引き離すと私を背中に隠し顔を会わせないようにした。
私の前には、遥さんの広い背中しか見えない。
「遥さんは、私と結婚するんですよね。」
鈴を転がしたような声。
それは、確認するかのように凛としている。
「俺との結婚は、破棄されてる筈だ。俺は、鞠山亜耶と婚姻を結んでる。君とは結婚できない。否、元々君と結婚するつもりなんてはなっから無かったよ!」
遥さんの低く冷たい声が背後に居てもわかる。
「そんな…だって…私とお見合いした……でしょ。」
女の人の弱々しい声。
遥さんの冷たい態度に動揺してるみたいだ。
「お見合い、ね。あれは、姉さんの顔を立てる為だけにしただけだ。その前から、亜耶とは許嫁同士だったし。そもそも、その話しはとうに無かったことになってるだろ。」
遥さんの苛立ってる声。
いつになく、気が立ってる気がするのは、私の気のせいであろうか。
「えっ……。」
女の人が、驚いた声をあげた。
知らなかったみたい。
イヤ、自分が受け入れられない事実だったんだろうなって思う。
「あぁ、それから。君が、俺たちに不用意に近付いた事で、違約金が発生することも聞いてない? 聞いてないから、近付いてくることができるのか。」
遥さんが、呆れたように言う。
えっ、何?
私の知らないところで何があったの?
私が頭を巡らせてると。
「なぁ、雅斗も知ってるよな?」
って、お兄ちゃんに投げ掛けてる。
「あぁ。遥と亜耶に近付いた時点で、違約金が発生してる。証拠の写真付きで君の親に送ったから、直ぐにでも連絡が来るだろう。第三者の目撃者も居ることだし」
って、何時の間に遥さんの横に来ていて、尚且理事長に目線だけ向けてるお兄ちゃんが居る。
私の前に壁が出来てる。
お兄ちゃんまで来たら、本当に前が見えないんですけど……。
その前に、状況全然わかんないよ。
「そ、そんなはずない。だって、私が、遥さんの婚約者で、あんな小娘なんかじゃない。」
動揺を隠せない女の人の声が、聞こえてきた。
"あんな小娘" で悪かったですね。
大人と子供だって言いたいんでしょ。
それでも、私は遥さんを好きなんです。
傍で、支えたいんです!
心の中で叫んでいたら。
「いい加減現実を見れよ! 俺は、この世の中で女と認めたのは、亜耶だけなんだよ。俺の唯一の癒しなんだ。他の女なんて、ただの木偶の坊なんだよ!!」
怒気を含んだ声音で遥さんが言う。
「亜耶のこと "あんな小娘" って言うがな、君よりも優秀なんだよ。そして、誰よりも優しい。俺が幸せになれるならって、一時期身を引いたんだ。俺のためを思いながら、自分を犠牲にする娘なんだ。だからこそ、自分の手で護りたいって思うんだ」
最後の方、優しい声だった。
そんな風に思ってくれてたなんて、その言葉どんな顔をして言ったのか気になるけど……。
表情が見えないのが残念だ。
「そんな……。」
女の人の細い声が聞こえた。
「亜耶。行くぞ。」
突然声をかけられ、顔をあげればこちらに振り返り優しい笑みを浮かべた遥さんがいた。
私は、遥さんのスーツの上着をギュッと握りしめた。
だって目の前の女の人が、鬼の形相で私を睨んできたからだ。
あ~あ、どうしよう。
怖い。
それしか、頭に浮かばなくて俯く。
彼女の視線が鋭く刺さってくる。
憎しみのこもった視線が、こんなにも痛いなんて思ってなかった。
「亜耶。」
遥さんが、私の背中に手を回し、促してきた。
私は、ゆっくりと歩を進める。
彼女の横を通る時に。
「絶対に許さないから!」
私にだけ聞こえる声で彼女が言った。
彼女を振り返り見れば、何処かで見た人だと思い当たった。
彼女が見えなくなったところで遥さんの袖を引いた。
「どうした、亜耶?」
遥さんが、私の方に顔を向けた。
「遥さん。あの人の事、よかったの?」
私は、視線を下にして聞いた。
「あの時、一緒に、居た、ヒトだよね?」
遥さんがあの人の事を思い出して、嬉そうな顔をしてたら嫌じゃない。
「亜耶……。」
遥さんの優しい声音に顔をあげれば、真剣な顔つきで私を見ていた。
「俺には、亜耶が一番大切な嫁なんだ。ずっと傍に居て護ってきた大切な姫だよ。」
遥さんの目に熱が込められてる気がする。
「俺は、初めて亜耶に会った時から、ずっと亜耶の虜になってたんだ。俺は、亜耶以外の女は、女とは思っていないから。」
遥さんの言葉に一気に顔が熱くなる。
遥さんは、じっと私を見つめてくる。
だって、出会った時からって、私まだ小学生だったんだよ。
そんな時からって……。
何て言葉を返したら良いかわからなくて、俯く私に。
「俺から絶対に離れるな!」
抱き締められ、低く不安そうな声で遥さんが言った。
私は、ただ頷くだけしかできなかった。
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