好きだから傍に居たい

麻沙綺

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危機感…遥

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 俺は、亜耶の手を握ったまま雅斗の言葉を聞いていた。

 男子生徒二人の言葉にホッとしてる俺。
 だけど、このままで良い訳がない。
 親たちをどう思い止まらせるかだ。
 一番いいのは、亜耶が "辞めない" と宣言すること。
 それだけで大半の親は思い留まると思う。
 残りは、経緯を話し、俺の決意を伝えれれば、この事態は縮小するだろう。
 後は、タイミングだけだ。


 俺が、悩んでいるうちに場内が騒がしくなっていた。
 見れば、親たちが雪崩れ込んでいて、連れ出そうと躍起になってるようだ。
 不味いな。
 俺は、どうにかしないとと頭に浮かぶが、案が出てこない。

 そんな時。
「待ってください。事は全て終わりました。言いふらした者達は、本日付で辞めます。これ以上、大事にしないでください。」
 雅斗の堂々とした口調が場内に響く。
 それを聞いた親たちが一斉にこちらに顔を向けてきた。

 "王子にナイト。…えっ、姫まで居る"
 と驚きの声が上がる。
 "姫が居るぞ"
 伝染するかのように、周りが亜耶を見て驚く。
 って言うか、その例えなんとかならないのかよ。
 って、少しだけ脱線してる俺。
 だが、なぜ亜耶の存在を知ってるのかが疑問だった。
 まだ、デビューしてない女の子の事を誰も知ってるようで、怖いと思いつつも亜耶を護らなければという思いにかられた。

「姫。姫は、この学校を辞めるのですか?」
 という声が、どこからともなく聞こえてきた。
 これは、チャンスだと俺は思った。
 亜耶の言葉で、ここに居る親たちに気持ちが伝われば辞めていく者も少なくなるだろう。
 そう思考に耽ってる俺に亜耶が、不安そうな目で俺を見てきた。
 戸惑っているのだろう。
 姫と呼ばれてる自分に……。
 俺は、ゆっくりと頷き。
「亜耶の思いを伝えてみな。」
 そう言って、亜耶の背中を押してやった。
 すると、さっきまでの不安そうだった顔つきが、自信を持った顔になってマイクの前に立つ亜耶。
「私は、辞めません! この学校に入って、やりたいことを見つけたんです。だから、辞めるつもりありません。それから、私と高橋遥の事、この場を借りて謝りたいと思います。大変申し訳ありませんでした。ネットにどういう風に流れていたのかは、私自身見ていないのでわかりかねますが、私と高橋は前から婚約関係であったことをご存じの方も居るかと思います。この度は、うちの事情で、高橋と婚姻したことを申し上げます」
 亜耶が、堂々とそう口にした言葉に俺は驚いた。
 本来なら、俺から言わねばならない言葉を亜耶が意図も簡単に言い放ったからだ。
 やられた。
 やっぱり、俺はこの娘が好きだ。
 愛しくてたまらない。
 時たま見せる弱味とのギャップがありすぎだろ。
 俺は、彼女を全力で護ると胸で誓い。
 彼女の隣に立って、マイクを自分の方に向ける。

「この場を借りて、私からも謝らせてください。私が、生徒に言ったことで、ここまで大事になってしまい大変申し訳ございません。私は、軽はずみで教師の仕事を引き受けたわけではありません。伯父が困っていたのを助けるためにここにいます。それが、たまたま妻が通う学校だった。クラスの副担任でもあるがゆえに隠し通すことはできないと判断し、生徒に話しをしました。それが、ここまで大事になることを予測し損ねた、私の責任です。後任の教師が決まり次第、私は教師を辞めるつもりです」
 そう、これが俺が出した答え。
 まだ、亜耶に言えてなかったがこのさえ仕方ないと思う。
 亜耶の複雑そうな顔を見たら、何て声をかけたらいいのかわからなかった。
 けど、これで良いと思うんだ。
 少しでも、亜耶との学校生活を送ることが出来ただけでもよかったじゃないか。
 伯父が、俺に話さなかったらこんな経験できなかったと思うし。
 それに、学校での亜耶の姿を見れたことが、俺にとってはとても貴重だ。

「姫とナイトの決意を聞けて、尚且二人の事実まで聞かせてもらえたのだから、ここは引き上げた方が良さそうだ。」

「ナイトと姫の仲が良いのは前からわかっていたことだしな。」
「二人が、納得してるなら、口を出しても仕方ないだろう。」
「両家の判断だし、私たちがとやかく言うのはなぁ」
 との声が聞こえてきてホッとする。
 亜耶が、俺を見てくるから笑みを浮かべて頭をポンと軽く叩く。

 涙目の亜耶は、とても貴重だ。

 あ~あもう、抱き締めてとことん泣かせてやりたい。
 何て思ってる俺が居た。

「俺から一つ伝えたいことがあります。後日、二人のお披露目を予定してます。その時は、宜しくお願いします。」
 突然雅斗が口にし、俺も驚いた。
 そんなこと言う、雅斗ではないことを知ってる俺は、雅斗を凝視した。

 口許だけを緩ませて、目は誰かを射ぬかんばかりに鋭くさせていた。
 俺は、その視線を辿った。
 そこに居たのは、亜耶に鋭い視線をやって凝視しているお嬢が居た。

 何で、居るんだ?
 俺はそう巡らせていた。
 そういえば、弟が居たっけか。
 弟を迎えに来て俺と亜耶の事を知ったお嬢が、どうでるかわからない。
 だが、絶対に何かを仕掛けてくるに違いない。
 ここまで来たら、登下校も一緒にした方が良さそうだ。
 あのお嬢は、思い込みが激しすぎる。
 俺の大事な嫁を傷つけるに決まってる。
 雅斗も何か察していたらしく、俺に目線で合図をして来た。

 俺は、軽く頷き返していた。







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