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姫?…亜耶
しおりを挟む握っていた拳に温かな何かを感じて、目を向けた。
そこには、誰かの手が添えられていて、目線でたどれば、目を細めて私を見ている遥さんが居た。
「俺が傍に居る。だから、自分を攻めるな。」
と声が聞こえてきた。
遥さんには、お見通しなんだと思った。
ずっと、傍に居て見ていたからこその言葉だ。
遥さんの言葉を励みにお兄ちゃんの言葉を聞いていた。
「さぁ、ソロソロ決めてもらおうか? ご子息ご令嬢の親たちが着く頃だ。」
お兄ちゃんがタイムリミットを告げる。
「俺は……辞めます。」
そう言ったのは、篠田くん。
「あぁ、俺も辞めるわ。こんな学校!」
悪態をついて言う戸波くん。
悪ぶって見せてるけど、本当の彼はとても優しい性格してるのを私は知ってる。
こんなことになって、ゴメンなさい。
私は、心の中で謝った。
三人は、先生に連れられて、出ていく。
その後ろ姿を罪悪感に見回れながら見つめていた。
三人が出て行って直ぐの事だった。
出入り口が騒がしくなり、親たちが雪崩れ込んできたのは。
会場内が騒然としだす。
"こんな学校、直ぐに辞めるんだ"
との声が聞こえてくる。
そんな……。
私が愕然としてると。
「待ってください! 事は、全て終わりました。言いふらした者達は、本日付で辞めます。これ以上、大事にしないでください!」
お兄ちゃんが、堂々とそう声にする。
騒然となっていた会場が、一瞬の沈黙の後。
"王子、ナイト。……えっ、姫まで居る"
"姫が居るぞ"
って声が聞こえてきた。
王子はお兄ちゃん、ナイトは遥さんだよね。
姫って……。
もしかして私?
困惑してるなか。
「姫。姫はこの学校を辞めるのですか?」
と質問が飛んできた。
姫って、やっぱり私なんだ。
私は、遥さんの顔を伺えば。
「亜耶の気持ちを伝えてみな。」
遥さんに優しく言われて、私は頷いた。
「私は、辞めません! この学校に入って、やりたいことを見つけたんです。だから、辞めるつもりありません。それから、私と高橋遥の事、この場を借りて謝りたいと思います。大変申し訳ありませんでした。ネットにどういう風に流れていたのかは、私自身見ていないのでわかりかねますが、私と高橋は前から婚約関係であったことをご存じな方も居るかと思います。この度は、うちの事情で、高橋と婚姻したことを申し上げます。」
私は、それだけ言うと遥さんに目線を向けた。
私から言って良かったのか不安だったから。
遥さんは、少しばかり驚いた顔をしていたが、直ぐに真顔になり。
「この場を借りて、私からも謝らせてください。私が、生徒に話した事で、ここまで大事になってしまい大変申し訳ありません。私は、軽はずみな気持ちで教師の仕事を引き受けたわけではありません。伯父が困っていたのを助けるためにここにいます。それが、たまたま妻が通う学校だった。クラスの副担任でもあるがゆえに隠し通すことはできないと判断し、生徒に話しをしました。それが、ここまで大事になることを予測し損ねた、私の責任です。後任の教師が決まり次第、私は教師を辞めるつもりです。」
言葉を告げる。
「姫とナイトの決意を聞けて、尚且二人の事実まで聞かせてもらえたのだから、ここは引き上げた方が良さそうだ。」
との声が上がった。
「ナイトと姫の仲が良いのは前からわかっていたことだしな。」
「二人が、納得してるなら、口を出しても仕方ないだろう。」
「両家の判断だし、私たちがとやかく言うのはなぁ」
そんな言葉を聞いて、ホッと胸を撫で下ろした。
「俺から一つ伝えたいことがあります。後日、二人のお披露目を予定してます。その時は、宜しくお願いします。」
お兄ちゃん、それ今言うこと。
ちょっと飽きれ気味にお兄ちゃんを見たら、口許は笑みを浮かべているんだけど目は笑っていなかった。
何かを牽制してる、そんな顔だった。
どうしたんだろう?
そう思いながら、会場を見渡したが私には、なにもわからなかった。
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