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甘やかし…遥
しおりを挟むお昼頃に雅斗と沢口が顔を出した。
ちょうどその少し前に亜耶の昼食が届き、食べさせていた。
「先輩ー。ラブラブですね。」
揶揄する声がしたが、無視し。
「あぁ、いいだろう。ほら、亜耶、あ~ん。」
冷淡に返し、亜耶の口を開けるように促せば、恥ずかしそうに顔を赤らめて。
「あ~ん。」
素直に口お開けるから、可愛くて仕方ない。そこにスプーンで掬ったご飯を入れてやる。
この時の俺は、目許も口許も緩みぱなしだった。
「何か、面白くないです。」
沢口改め、義姉が言い出す。
面白くなくて結構。
「由華、その辺にしておけよ。……で、体調はどうだ? 亜耶。」
雅斗が義姉を諫めて亜耶に問いだす。
「ん? ……モグモグ……ごっくん。右腕が動かせないだけだから、それ以外は問題ないよ。……後、お兄ちゃんが聞きたそうなことだと "覚えてない" かな。」
亜耶は、口の中の物をしっかり飲み込んでから、雅斗の質問に答える。
雅斗が聞きたそうな事もしっかりと口にする
。
「覚えてない? 何かあるだろう? 例えば、背中を押された感覚とか……。」
雅斗が、亜耶に詰め寄るが。
「うん。何も覚えていないの。あるのは、気がついたら浮遊感があっただけで、何も解らない。あの時、他の事を考え事してたから、周りの警戒し損ねてた。」
申し訳なさそうな顔をして言う亜耶。
「そうか……。で、何が気になったんだ?」
雅斗の落胆した声。
そんな中。
「亜耶、あ~ん。」
って俺が口にすれば。
「あ~ん。」
口を開けて、答えてくれる亜耶。
あーもう、何て可愛いんだ、俺の嫁。
モグモグ租借し、飲み込むと。
「うんとね。龍哉くんたちが、遥さんの表情が変わるところが見たいって話になって、二人が押し掛けて行った時、遥さんはどんな顔をしてるのかなぁ……。何て思いながら歩いてたから、辺りを気にしていなかったんだよね。」
淡々とした口調で言う亜耶。
ある意味、俺のせいな訳ね。
「何だそれ。彼奴等はそんな事の為に俺のとこに来たのかよ。」
理由が可笑しいだろう?
俺の普通の顔が見たいとか……。
まぁ、亜耶が階段から突き落とされて、それどころじゃなくなったがな。
「まぁ、そのお陰で早く連絡がとれたから、今回は多めに見てやるか。」
そう、龍哉が彼奴等に携帯を持ち歩かせていたから、木村から一早く連絡を受けることが出来たんだよなぁ。
それも、俺の目も前だったしな。
「おい、それじゃあ犯人は、わかっていないのか?」
声を荒気ながら言う雅斗。
「その事だが、後で話すから待ってくれるか? ほら、亜耶最後の一口、あ~ん。」
俺は、雅斗にそう告げ、亜耶には口を開けるように促す。
「あ~ん。」
亜耶の口にスプーンを差し込み口を閉じたときにスプーンを引き抜く。
亜耶の怪訝そうな顔に気付いたが、敢えてスルーした。
「ここでは、話せない事なんだな。」
雅斗が事情を察して口にする。
「ちょっとな。亜耶には、関わって欲しくないかな。」
俺は、言葉を濁すように言う。
「わかった。外で話すか……。」
雅斗が、眉間にシワを寄せてこちらを伺ってくる。
「後は、お茶と牛乳だけだ。義姉さん、亜耶が飲み終えたらトレーを外にあるワゴンに戻しておいて。」
俺がそう口にすれば。
「えっ……」
義姉が眼を大きく見開き、口をパクパクさせてる。
「俺、何か不味いこと言ったか?」
雅斗の嫁だし、俺は妹の夫ってことで "義姉" で可笑しくないはずだが?
俺が怪訝に思ってると。
「イヤ……、あの……。先輩が "義姉さん" なんて言うから、驚いただけ……。」
しどろもどろで答える義姉。
「亜耶の "義姉" なんだから、俺からだってそうなるだろう……。」
何で、こんな何でもないことで議論しないといけないんだ?
「まぁ、そうなんだけど……。何か背中に変な汗が……。」
義姉が落ち着き無さげに雅斗を見ている。
「何、言ってるんだ。義姉さん、後宜しく。亜耶、牛乳もちゃんと飲めよ。」
亜耶が、確実に残すと踏んで強めに言う。
「うぇ……。飲みたくない。他のなら飲む。」
朝と同じことを言う亜耶。
困ったヤツだ。
「仕方がない。いちごミルクで良いか?」
雅斗が、口にする。
おいおい、妹に甘すぎだぞ雅斗。
「うん、それでお願いします。」
って、とても良い笑顔で答える亜耶。
はぁ~。
「雅斗、亜耶に甘すぎ。」
俺が呆れた様に言えば。
「そんな事無いだろ? 俺よりも甘やかす男が言う言葉か。」
容赦ない言葉が雅斗から返ってくる。
まぁ、確かに雅斗以上に甘やかしてるが、な。
「二人ともです!!」
義姉が横から口を出す。
「だと思った。とういう事で、後宜しく。」
俺は、雅斗と一緒に病室を出た。
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