好きだから傍に居たい

麻沙綺

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兄対遥さん……亜耶

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「亜耶、ドレスの準備出来てるのか?」
 お兄ちゃんが唐突な質問をしてきた。
「ん。この間、遥さんに連れられて採寸してきたよ。」
 遥さんが多香子さんの行きつけの店だって言いながら伺ったのを思い出しながら言う。
 真由ちゃんの誕生日プレゼントを買いに行った日だ。
「そうか。亜耶のデビュー用のドレス、俺がプレゼントしたかったんだが、遥なら仕方ないか……」
 お兄ちゃんが、がっくりと肩を落として言う。
「その分は、お義姉さんと生まれてくる赤ちゃんに回して下さい。」
 お兄ちゃんにそう返答を返した。
 これから、お金か軽からね。私に使うよりも赤ちゃんに使って欲しい。
 それに、私も結婚してるからお兄ちゃんに養って貰うのも違うと思うし……。
「俺の一つの夢だったんだが、叶えさせて貰えないか?」
 私を上目遣いで、見つつそう言ってくる。
「それなら、生まれてくる赤ちゃんのデビューの時までとっておけば良いじゃない。」
「それじゃあ、意味がないだろうが。」
 って、心底残念そうに言い返してくる。
 でもな、遥さん嬉しそうにしてドレス選んでたし……。
「どんなドレスなんだ?」
 そんなにドレスが気になるのかなぁ?
 でも、どんなドレスと言われても、詳しくないのにどう説明したら良いのやら……。
「えっと…。オフショルダーで色は空色で…。えっと、スカートがフワリと膨らんでて……。」
 そこまで口にしたら、病室のドアがガラッと開いて、そちらを向けば遥さんが苦笑していた。
「何を聞き出そうとしてるのかと思ったら、ドレスの事か。」
 遥さんは此方に付ききながら言う。 
「まぁ、本当は俺がプレゼントしたかったんだが、遥が見繕ってる言うから、せめてドレスに合うアクセサリーをだな……。」
 お兄ちゃんが焦りながらで言う。
「雅斗。俺がそんなヘマするわけ無いだろう。しっかりとドレスと亜耶との相性が良いアクセサリーを見繕ってるよ。」
「そうだよな。でも、何か出来ること無いか?」
 遥さんにすがるような目でお兄ちゃんが言う。
 遥さんが、顎に手をやり考える素振りをして。
「無い。」
 はっきりと言い放った。
 その言葉に更に落ち込むお兄ちゃん。
「雅斗。亜耶は既に俺の嫁ですよ。自分の嫁を着飾るのに他の男に任せるわけ無いだろ。」
 留目の言葉を遥さんが口にする。
「うっ……、俺の夢が……。」
 小さく呻き声がお兄ちゃんから聞こえてくる。
 諦めきれないみたい。
「諦めろ、既にそのポジションは、俺に移行されてるんだからな。」
 そう言いながら遥さんは、お兄ちゃんの背中をポンポンと励ますかのように叩く。
 どころで、ポジションって何だろう?
 そんな疑問を抱いてしまった。
 だってさ、お兄ちゃんはお兄ちゃんだし、遥さんは旦那様で、二人が重なる処なんて無いと思うんだけど……。
 頭を悩ましていたら。
「雅斗、一つ聞きたいんだが。真由のところに招待状は出したか?」
 遥さんがお兄ちゃんに聞き出した。
 あっ、そうだそれ私も聞きたかった。
「ん? あぁ、出したよ。確か理事長宛だがな。」
  お兄ちゃんがそれがどうしたって顔で遥さんを見やる。
理事長伯父経由じゃ、まだ真由には届いていないか……。」
  遥さんの言葉にお兄ちゃんが不思議そうな顔をしながら。
「ダメだったか?」
 と聞いてきた。
「ダメでは無いけど、真由、婚約者の透と同棲してるから……。それに真由自身が実家を嫌ってるからなぁ。」
 遥さんが、真由ちゃんの事をお兄ちゃんに伝える。
「えっ……。透って、由華の兄嫁の下の弟か?」
 お兄ちゃんの言葉に、湯川くんって末っ子だったんだ。何て改めてえた情報に何となく納得する。
「そうだよ。透は次期理事長様だ。今は、亜耶の同級生でもあるがな。」
 遥さんは淡々と話してるけど、お兄ちゃんはビックリしていた。
「それ、何処情報?」
 お兄ちゃん、もしかして知らなかったのかな。
「何処って、直接だけど。俺の身内だぞ。亜耶も本人達から聞いてるし、俺も真由本人から聞いてるから……。」
 遥さんの言葉にお兄ちゃんが私に視線を寄越すから、そのまま頷いた。
「亜耶は、何時知ったんだ?」
 お兄ちゃんの質問に。
「えっと、前回の入院する前に湯川くんから直接聞いた。同棲してる事も……。」
 私は、お兄ちゃんから視線を逸らしながら答えた。
「何で、その時に話してくれなかったんだよ。」
 お兄ちゃんが寂しそうに言う。
「だって、お兄ちゃん。あの時新婚で、色々忙しかったでしょ? だから言いそびれてしまったの。」
 言い淀む私。
「まぁ、何れにしても招待状は出してあるのなら、真由は来てくれるな。よかったな亜耶。」
 遥さんがホッとしたような顔で言う。
「何かあったのか?」
 お兄ちゃんが不思議そうな顔をしてこっちを見てくる。
「亜耶の初めてのパーティーで、知ってる人が居ると心強いって話をしてたんだよ。」
 遥さんが、昨日話してた事を簡単に説明する。
「あぁ、確かに同年代の知り合いが居た方が安心するもんな。」
 納得のした返事が返ってきた。
「雅斗。そろそろ帰らなくても良いのか? 嫁が心配してるんじゃないのか?」
 遥さんが時計に目をやって、お兄ちゃんに告げる。
「それがさぁ。今日は実家に報告がてら泊まりに行ってるんだよ。だから、たまには遥と飲みに行こうかなっと。」
 一人で食事は寂しいもんね。
 私も入院してるから、遥さんも一人で夕飯食べてるんだろうし……。
 って、今日のお昼は龍哉くんたちが居た時に食べてたけど、他の日は?
「遥さん、ご飯って……。」
 心配になって聞けば。
「心配するな。ちゃんと食べてたから。」
 私の目を見て答える遥さんに。
「ならよかった。」
 安心した。
 確認しないと食べない時があるから……。
「何、お前。まだ食べたり食べなかったりしてるのか?」
 お兄ちゃんが呆れた顔をして遥さんに聞く。
「ん? 最近は、三食きっちり食べてる。昼は、亜耶が弁当作ってくれるし、朝も亜耶が作るな。夜は、たまに俺が作るが、基本的には亜耶が作るから食べているな。」
 何て、最近の食事情報を口にした。
 えっ、それって、私が作るから食べてるってこと?
 じゃあ、私が作らなかったら、食べない日もあったんじゃ……。
 何て思ってると。
「そっか……。でも、亜耶が料理ねぇ……。想像つかん。」
 ってお兄ちゃんが言う。
 まぁ、そうだろうね。 
 家に居る時は、手伝いもろくにしなかたし……。
「たまに失敗するけど、頑張って作ってくれるからな。それに、美味しい。」
 遥さんがニコニコしながら言う。
 えっ……、嬉しい。
 顔が火照り出す。
「遥が惚気るのは、ここでだけだな。そんな顔他ではしたないだろ?」
 お兄ちゃんの言葉に改めて遥さんを見る。
 目尻が下がってて、トロント今にもとろけそうな甘い顔をしてる。
「当たり前だろ。好きでもましてや親しくないヤツに見せるわけないだろ。」
 子供っぽい口調で言う遥さん。
「パーティーの日、大変だろうなぁ……。」
 お兄ちゃんが染々と言い出す。
 今から、パーティーの心配しても仕方ないと思うんだけど……。
「そんなの、どうにでもなるだろ。」
 遥さんがお兄ちゃんの言葉を突っぱねた。
 正直に言うと私も不安でしかない。
「ドレス姿の亜耶を見て、デレデレになる遥は想像できるかな。」
 お兄ちゃんが遥さんを揶揄い出す。
「否定はできないだろうな。」
 遥さんも何か想像してるのか、嬉しそうな顔をしてる。
 そんな時、ドアがノックされた。
「はい。」
 私よりも遥さんが先に返事を返す。
「亜耶ちゃん。検温の時間ですよ。」
 って都さんが入って来た。
「あっ、もうそんな時間か……。どうする遥?」
 お兄ちゃんが遥さんに訪ねる。
「そうだなぁ。雅斗も車だろう?車を家に置いてから何時もの場所で飲まないか?」
 遥さんがそう提案すると。
「遥がそれで良いなら、亜耶に食べさせてからなら十九時半頃が良いか?」
 お兄ちゃんが時間を設定する。
「助かる。」
「ん、じゃあ、また後で。都さん、亜耶の事よろしくお願いします。亜耶、残さず食べるんだぞ。」
 って、余計な一言を残して帰っていくお兄ちゃん。
 その言葉に都さんも苦笑している。
「何だか、追い出しちゃったみたいね。」
 都さんが困った顔をして言う。
「気にしなくて良いですよ。ただ、雑談したかっただけですから。」
 遥さんも苦笑を浮かべて言う。
 まぁ、実際そうなんだろうけど、遥さんに何か相談したかったのだろうと思う。
「なら良いのだけど……。亜耶ちゃん、明日が退院ね。おめでとう。って言っても通院があるから、ね」
 都さんの言葉に退院して終わりじゃないんだった改めて思った。
 そう、右腕のギブスの存在を私は忘れていた。
「その顔は、忘れていたわね。」 
 都さんに図星を指されて、視線を逸らす。
「亜耶ちゃんらしいわ。外科での入院はしたこと無いもんね。」
 都さんが笑みを浮かべて言う。
 はい、内科での入院はちょこちょこしてたのであれなんですが、外科は初めてです。
「旦那様も大変でしょうけど、よろしくお願いしますね。」
 都さんはそう言いながら、手は動かしている。
「亜耶の為ですし、それぐらいはやりますよ。」
 遥さんは、誰もが見惚れる笑顔を浮かべていた。
 見慣れている私でさえ、見惚れしまっていた。
「あっ、では、私は失礼しますね。」 
 都さんがそそくさと出ていった。顔を赤らめて……。
 似非笑顔を見慣れている人だと、あの笑顔を見れば固まって当然だと思う。
「亜耶。顔が赤いが、熱でも出たか?」
 心配気に聞いてくる遥さんだけど、本人気付いていないんだと思う。
「えっと。熱はないよ。ただ、遥さんの笑顔に見惚れてただけ……。」
 私は、バカ正直に答えてしまった。
 だから、私の額に伸ばされ始めた遥さんの手が途中で止まり、顔を見れば赤くさせてもう片方の手で口許を覆っていた。
 えっ、あれ?
 遥さんのレア顔だ。
 お兄ちゃんでも、ここまで赤くなった遥さんを見た事はないだろうな……。
 だって、首元まで赤くなってるんだもの。

 再びドアのノック音に遥さんが答えて、食事が配膳される。
 入院最後の夕飯は、最初から遥さんに食べさせて貰っていた(どことなく嬉しそうな顔をした遥さんに……)。








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