180 / 183
変わらぬ味…遥
しおりを挟む注文した料理と取り皿がテーブルに並ぶ。
亜耶は目を輝かせて手にフォークを持ち、カルボナーラに手を付けようとしていた。
「亜耶。今、取り皿に分けてやるから待ってろ。」
俺はそう言って亜耶の手を止めて、手に皿を持ちカルボナーラを盛り付けて亜耶の前に置く。
「ほら、ゆっくりでいいからな。」
と声をかけた。
「頂きます。」
手を合わせるポーズ(右手は動かせないから)をして、早速カルボナーラに手をのばしたがパスタは上手くフォークに絡まりはするが、持ち上げるタイミングで、スルスルと逃げていく。
それを何度も繰り返し、仕舞いに亜耶の顔の眉間に皺が寄り始めてまた愛おしく思う。
「うっ…もう少し……。」
亜耶の呟きも耳に届き、思わず喉を鳴らしていた。
「そんなに可笑しいですか?」
ムッとした顔で俺を見てくる亜耶。
「余りにも可愛くて、つい笑みが漏れた。」
と言えば、今度は顔を赤くして手を動かし出す亜耶。
本当に見ていて飽きない。
色々な顔を見れるのは家族以外で俺だけだろうな。
何て優越感に浸る。
「……美味しい!」
と声が聞こえて、やっと口に運べたかと安堵しながら、亜耶を見ると瞳がキラキラになっていて口許は上がっていた。
そんな顔も可愛いと思いながら次のを口に入れたいのか、真剣な顔でフォークを動かしている。
「焦らなくていいから。」
俺はそう声を掛けながら、湯気が立つミートドリアを取り皿に分ける。
「ありがとう。」
亜耶からお礼を言われて、笑顔で返す。
ある程度カルボナーラを食してから、ミートドリアをスプーンですくい何度も息を吹き掛けてる姿が微笑ましい。
口に入れると。
「こっちも美味しい!!」
満面の笑みを浮かべている。
流石にスプーンの方は慣れてきたみたいで、スムーズに口に運んでいる。
そんな亜耶を見ながら、自分の分の料理を頬張る。
相変わらず、旨いな。
何て思いながら、口許を緩めていると、じっと此方を見てくる視線に気付いた。
その視線に目を向ければ、亜耶が食べたそうにしていたから一口掬い亜耶の口許に持っていき。
「亜耶も食べるか?」
と聞けば、少し戸惑ってから口にする亜耶。
「美味しい!!」
先程より更に笑みを深めて言う。
「だろ。」
俺は得意気に答える。
「なんでメニューに載って無いんだろう?こんなに美味しいのに……。」
亜耶に呟きが聞こえてきた。
「それは、これが特別だからな。」
と声がした。
声の方に顔を向けると、オーナーシェフの篠崎さんが居た。
「篠崎さん!」
俺は驚いて声を上げた。
まさか厨房から出てくるなんて思わないだろ。
「ここのオーナシェフの篠崎と言います。可愛いお嬢さん。」
この男、家の嫁を垂らし込もうとしてる。
「始めまして、高橋の妻の亜耶と言います。以後お見知りおきを。」
亜耶が食事に手を止めて挨拶を返す。
「おや、遥くん。何時の間に結婚したんです?」
何時もと違う口調と視線に観念しながら。
「先月ですよ。亜耶の誕生日の日に婚姻しました。」
この人には色々と相談にのってもらったりしてたから、嘘付けないんだよな。
「そうだったんですね。おめでとう。私から此方をプレゼントさせて頂きますね。」
そう言ってテーブルの上に出てきたのは、フルーツタルトのホールだった。
フルーツは、亜耶に好きな物で埋め尽くされていた。
何で亜耶の好物を知ってるんだ?
疑問に思いつつ。
「良いんですか?」
俺が訪ねると。
「もちろん。前に雅斗くんから聞いてたんだよね。お祝いしてあげたいのに中々来ないから、今日渡せてよかった。」
篠崎さんが悪戯が成功したような顔をして言う。
雅斗から聞いてたのなら、納得だ。
「ありがとうございます。」
亜耶が嬉しそうにお礼を言う。
「今度、友達と食べに来てね。」
篠崎さんがニヘラと笑みを浮かべて言う。
そんな篠崎さんを見て亜耶は不思議そうな顔をする。
「学校近くでしょ?何時でも歓迎するよ。」
ニコニコして言う篠崎さんを見て、この商売上手めと思った。
新の顧客増やしに亜耶を利用するとは……。
何て思ってれば。
「ごゆっくり。」
と一言残して逃げる様に去って行った。
「相変わらず良く見てるな。」
感心しながら口にするが、まだ亜耶は府に落ちてない様だ。
「亜耶、この店に来るのは何回目だ?」
俺が質問すれば。
「三回目。一回目は由華(義姉)さんと、二回目は陸上大会の時、今日で三回目。」
と答える。
それを聞いて。
「そっか、一回目の時からバレてたわけか……。」
俺の言葉に思い当たったのか、そこで納得する亜耶。
「龍哉たちとこの店に来てやって。龍哉なら"雅斗が贔屓にしている店だ"と言えば、常連になりそうだがな。」
苦笑を浮かべながら言えば、亜耶も深く頷いた。
雅斗信者の龍哉には思ってもない場所だろうが……。
0
あなたにおすすめの小説
永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる
鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳――
それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。
公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。
だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、
王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。
政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。
紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが――
魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、
まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。
「……私が女王? 冗談じゃないわ」
回避策として動いたはずが、
誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。
しかも彼は、
幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた――
年を取らぬ姿のままで。
永遠に老いない少女と、
彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。
王妃になどなる気はない。
けれど、逃げ続けることももうできない。
これは、
歴史の影に生きてきた少女が、
はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。
ざまぁも陰謀も押し付けない。
それでも――
この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。
【短編】ちゃんと好きになる前に、終わっただけ
月下花音
恋愛
曖昧な関係を続けていたユウトとの恋は、彼のインスタ投稿によって一方的に終わりを告げた。
泣くのも違う。怒るのも違う。
ただ静かに消えよう。
そう決意してトーク履歴を消そうとした瞬間、指が滑った。
画面に表示されたのは、間の抜けたクマのスタンプ。
相手に気付かれた? 見られた?
「未練ある」って思われる!?
恐怖でブロックボタンを連打した夜。
カモメのフンより、失恋より、最後の誤爆が一番のトラウマになった女子大生の叫び。
女性が少ない世界でVTuberやります!
dekoma26+ブル
恋愛
ある日朝起きてキッチンに行くとそこには知らない男性たちが! …え、お父さん⁉
なぜか突然女性の少ない世界に来てしまった少女がVTuberをしたり、学校に通ったりするお話。
※初日一気に4話投稿してから恋愛大賞エントリーしたため文字数5万これから(´;ω;`)みんなも参加するときは注意してね!
※忘れてなければ毎週火曜・金曜日の夜に投稿予定。作者ブル
生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します
桜桃-サクランボ-
恋愛
人身御供(ひとみごくう)は、人間を神への生贄とすること。
天魔神社の跡取り巫女の私、天魔華鈴(てんまかりん)は、今年の人身御供の生贄に選ばれた。
昔から続く儀式を、どうせ、いない神に対して行う。
私で最後、そうなるだろう。
親戚達も信じていない、神のために、私は命をささげる。
人身御供と言う口実で、厄介払いをされる。そのために。
親に捨てられ、親戚に捨てられて。
もう、誰も私を求めてはいない。
そう思っていたのに――……
『ぬし、一つ、我の願いを叶えてはくれぬか?』
『え、九尾の狐の、願い?』
『そうだ。ぬし、我の嫁となれ』
もう、全てを諦めた私目の前に現れたのは、顔を黒く、四角い布で顔を隠した、一人の九尾の狐でした。
※カクヨム・なろうでも公開中!
※表紙、挿絵:あニキさん
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる