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特別な料理?…亜耶
しおりを挟む注文した料理が来て、カルボナーラに手を付けようとしたら。
「亜耶、今取り皿に分けてやるから待ってろ。」
と遥さんに止められた。
う~、目の前の美味しそうな料理をお預けくらいジト目で遥さんを見る。
お腹がすき過ぎて、早く口にしたいのだけど……。
遥さんは取り皿にカルボナーラを移して、私の前に置く。
「ほら、ゆっくりで良いからな。」
と声を掛けられて。
「頂きます。」
手を合わせてから、フォークを左手に持ち普段右手で出来てる事を左手でするんだけど、上手く巻くことが出来ずに悪戦苦闘する羽目に……。
「うっ…もう少し……。」
口からも言葉が漏れてしまう。
此方が苦戦してるのに突然クツクツと声が聞こえてきて、目線を上げれば遥さんが笑いを耐えていた所だった。
ムッとしながら。
「そんなに可笑しいですか?」
と聞けば。
「悪い。余りにも可愛くてつい笑みが漏れた。」
と返されれば、顔に熱が集まってくるのも当然で、何て答えればいいのかわからなくなって、気を取り直してから再度挑戦し、何とか口に運ぶことが出来た。
「……美味しい!」
その次を早く口にしたくて手を動かすが、上手いこといかずに焦れったくなる。
「焦らなくて良いから。」
遥さんが私を見てそう口にし、ミートドリアの方も取り皿に分けてくれていた。
「ありがとう。」
私がお礼を言うとニコリと笑みを浮かべる。
湯気が立つミートドリアをスプーンで掬い何度も息を吹き掛けてから口にする。
「こっちも美味しい!!」
スプーンの方が幾分か扱いには馴れてきていたけど、細かい部分は苦戦してしまう。
チラリと遥さんを見れば、チーズオムライスを嬉しそうに口にしていた。
私の視線に気付いた遥さんが。
「亜耶も食べるか?」
そう言いながら、私の目の前にチーズオムライスを差し出してくる。
これ、このままだと間接キスでは……。
何て思いながらそれでも誘惑に耐えきれず、私はそれをそのまま口に入れる。
トロットロの卵が口の中に広がり、チーズのコクが後から押し寄せてくる。ケチャップライスとの相性がバッチリだ。
「美味しい!!」
もうそれしか出てこなかった。
「だろ。」
得意気な顔をして無邪気な笑顔を浮かべる遥さん。
余程思い入れがあるのかな。
何て思いながら。
「何でメニューに載ってないんだろう?こんなに美味しいのに……。」
口にしていた。
「それは、特別だからな。」
遥さんじゃない声が聞こえてきた。
私は声がした方に顔を向ける。
「篠崎さん。」
遥さんの焦った声に篠崎さんと言われた人が。
「ここのオーナーシェフの篠崎と言います。可愛いお嬢さん。」
と自己紹介してきたので。
「始めまして、高橋の妻の亜耶と言います。」
食事の手を止めて挨拶を返す。
「おや、遥くん。何時の間に結婚したんです?」
篠崎さんが遥さんに問い詰める。
「先月ですよ。妻の誕生日に婚姻しました。」
タジタジになりながら答える遥さん。
「そうだったんですね。おめでとう。私から、此方をプレゼントさせて頂きますね。」
そう言って篠崎さんが出してきたのは、フルーツタルト(しかもホール)だった。
「良いんですか?」
遥さんが驚いた顔をしながら聞く。
「もちろん。前から雅斗くんから聞いてたんだよ。お祝いしてあげたいのに中々来ないから、今日渡せて良かったよ。」
篠崎さんは、悪戯が成功したという顔をして私たちを見る。
「ありがとうございます。」
私は、笑みを浮かべながらそう告げる。
本当に嬉しかったから。
「今度はお友達と食べにおいでね。」
篠崎さんは私に向かって言う。
えっ、と篠崎さんを見ると。
「学校、近くでしょ。何時でも歓迎するよ。」
ニコニコしながら言う。
「ごゆっくり」
篠崎さんはそう言うと厨房に戻って行った。
「相変わらず、良く見てるな。」
感心している遥さんの言葉に疑問が浮かぶ。
「亜耶、この店に来るの何回目だ?」
遥さんの唐突な質問に。
「三回目。一回目は由華さんと二回目は陸上大会の時、今日で三回目」
と答えると。
「そっか、一回目の時に既にバレてたわけか……。」
一回目の時…あっ、制服だった。
「龍哉たちとこの店に来てやって。龍哉なら雅斗が贔屓にしている店だと言えば常連になりそうだがな。」
って、遥さんの言葉に私も頷いてしまったのだった。
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