好きだから傍に居たい

麻沙綺

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食事の前に…遥

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 ここの店に亜耶と来るのは2回目だが、高校時代から通っているから、馴染みの店でもある。

 俺は亜耶をエスコートしつつ一番奥の指定席に座る。
 ここから厨房も見れるし、外の景色も眺められるから最高の場所だ。
 亜耶の様子を見れば、気に入ってくれたみたいだ。

 席に着くと早速メニューを開き見出す亜耶。
 その様子をニンマリと見つめていた。
 ここで食べるメニューは始めから決めてあるから、亜耶が決まり次第注文すれば良い。
 コロコロと変わる亜耶の顔を眺めてるのは、楽しくて仕方ない。
 そろそろ二つまでに絞れた頃か。
「何にするか決まったか?」
 と声を掛ければ、此方に目線を向けながら困った顔をして。
「カルボナーラとミートドリアで悩んでる」
 と答えが返ってきた。
 亜耶が残したの俺が食えば良いし…。
「両方頼んで、半分にすれば良いだろ。」 
 俺の言葉に驚いた顔をして。
「それだと、遥さんが食べたいの食べれないでしょ?」
 と返ってきた。
 まさか俺の事を考えてくれてるなんて……。
 亜耶としては、ただ残すのが嫌なだけかもしれないが……。
 それでも俺は嬉しい。
「ん、俺も頼むから気にするな。」
 そう告げても疑わしげな目で俺を見てくる亜耶に苦笑を浮かべながら。
「頼むぞ。」
 店員を呼び。
「カルボナーラ一つ、ミートドリア一つ、チーズオムライス一つ、ミルクティー一つ、ホットコーヒー一つで。」
 と注文した。
 チーズオムライスと言った時の店員が一瞬驚いた顔をしたが、注文した物を復唱して去った。
「チーズオムライスなんて有りましたっけ?」
 亜耶が不思議そうに聞いてきた。
「メニューには載って無いけど、俺が何時も頼むヤツだ。」
 ここに通うようになってからチーズオムライスだけがメニューに無かったから、オーナーシェフに聞いたら”自信がないんだよ”と言われて、”じゃあ俺がここに来た時はチーズオムライスを注文するからな”って以来ずっとそれを続けていたんだよな。いまだにメニューに載せてない所を見ると自信がないんだろう。
 亜耶を見れば疑問符を浮かべていると顔が語っており、それがまた可愛くて甘やかしたくなる。
 そんなところに。  
「遥さんではないですか!」
 店内に響く声。
 その声がした方に目を向ければ、ユウキフーズの次女が此方に向かってくる所だった。
 亜耶が誰だと顔で訴えてくる。
 疑い深い顔で。
「ユウキフーズの社長令嬢だ」
 小声で伝えれば、訝しげな顔をする亜耶。
 どうしたんだ?
 今度は俺が疑問を浮かべる番。
「遥さん。宜しければあちらで一緒にどうですか?」
 彼女は、亜耶の存在に気付かずに言葉を掛けてくる。
「すまないが、妻が一緒なので遠慮しときます。」
 俺の言葉で嬉しそうな顔を見せる亜耶を見て、あ~この顔を写真に納めたい。
 何て思いながら令嬢を見る。
「妻って…。遥さん結婚されたのですか?」
 驚いた顔をしたかと思ったら、亜耶を品定めするように見て。
「お子さまの面倒を見るのも大変ですね。」
 蔑む言葉を口にする。
 自分の方が上だとでも思ってるんだろうか?
 見た目重視の考え方だなぁ。
「そんな事言っても良いのか?亜耶は、鞠山家のお嬢さんだぞ。」 
 社交デビューしてないから、姿は知らないだろうが…。
 それでも、初対面の人に対する態度ではない。
 そう思い咎めたのだが。
「何時も主人がお世話(?)になってます。遥の妻亜耶です。旧姓は、鞠山です。」
 亜耶が堂々と自己紹介する。
 なのに。
「円に山の円山さんでしょ?」
 自己紹介するせず亜耶の旧姓について追求してくる始末。
 そんな相手でも嫌悪せずに亜耶は。
「い言え、手鞠の鞠と山で鞠山です。」
 と受け答える。
 微かに動揺している彼女に。
「前会長の愛しい孫娘が亜耶だ。」
 俺は釘を刺した。
「失礼しました。知らなかった事はいえ、言ってはいけないことを口にしてしまいました。申し訳有りませんでした!」
 と頭を下げた彼女。
 顔色も少し悪いようない気もするが、そこは自業自得だろう。
 亜耶が狼狽えながら俺を見てくるから。
「頭を上げて。わかったなら、自分の席に戻るなり、帰るなりしたら。」
 俺がそう言葉にすると彼女は勢い良く頭を上げ。
「失礼しました。」
 再度そう口にして自分の席に戻って行った。

 ハァ~。
 なんで俺が行く所行く所で絡まれるんだ。
 今度お払いでもするか。
 何て思いながら亜耶を愛でていた。


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