好きだから傍に居たい

麻沙綺

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ランチの前に…亜耶

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 ここに来るのは、三回目だ。
 一回目は由華さんと、二回目は陸上大会後。
 店の雰囲気も気に入ってるし、メニューが季節ごとに変わってる(定番の物も有るけど)。
 だから飽きる事無く来る事が出きる(まだ三回目だけど)。
 席は、遥さんにエスコートされながら一番奥の窓側に座った。

 早速メニューを開き見ていく。
 目移りしてしまいどうしようか悩んでると。
「亜耶、何にするか決まったか?」
 遥さんが聞いてきたので。
「カルボナーラとミートドリアで悩んでる。」
 即答すれば。
「どっちも頼めばいいだろ。半分ずつ食えばいい。」
 と返ってきた。
「それだと遥さんが食べたい物が食べれないでしょ?」
 と言い返せば。
「ん、俺も頼むから気にするな。」
 って。
 メニュー二つ頼んで、プラス1って、絶対残しちゃうよね。
 それは作った人に申し訳ないよ。
 と思ってると。
「頼むぞ。」 
 遥さんはそう言うと店員さん呼び。
「カルボナーラ一つ、ミートドリア一つ、チーズオムライス一つ。後、ミルクティーとホットコーヒー一つずつ。」
 とオーダーした。
 店員さんは確認のため繰り返してから去って行った。
「チーズオムライスなんてメニューに有りましたっけ?」
 私は、メニュー表を確認するが、何処にも記載されてない。
 無いメニュー頼んでも大丈夫なの?
 疑問に思いつつ遥さんを見れば、苦笑を浮かべ。
「メニューには無いけど、俺が何時も頼むヤツだ。」
 得意気に言うから、更に疑問が生まれる。
 そんな事出来るの?
 遥さんだから?
 謎が謎を生んでしまう状態の私。
 そんな時に。
「遥さんではないですか!」
 との声が掛かり、そちらに向くと美女がニコリと笑みを浮かべて此方にやって来た。
 私が視線で誰?と問いかけると。
「ユウキフーズの社長令嬢だ」
 小声で教えてくれた。
 ユウキフーズって、あの優しいご夫婦の娘さん?
 疑問系になってしまうのも仕方が無い。
「遥さん、宜しければあちらでご一緒にどうですか?」
 断られる事が無いと自信満々で言う彼女。 
 その傲慢の態度からあのご夫婦のご息女とは思えなかった。
 私の事は、眼中に無いみたいで、一身に遥さんを見つめている。その目には、熱が孕んでいる。
 だけど、遥さんは私の事を見る気もない彼女に腹を立てたのか、作り笑いを浮かべ。
「すまないが、妻も一緒なので遠慮しておきます。」
 と私が普段聞かない声音で言い放つ(遥さん、恐いです)。
 彼女はその言葉に向かい側に座っている私に目線を向けて、値踏みするように私を見て。
「妻って…、こんなお子さま相手するのも大変ですね。」
 蔑むような笑みを浮かべ述べる言葉は、私の心を抉る。
 どうせ、子供ですよ。
 と心の中でやさぐれて居ると。
「そんな事言っていいのか。亜耶は、鞠山家のお嬢さんだぞ。」
 遥さんが、憐れんだ目を彼女に向けながら言う。
 彼女はそんな遥さんの事を見て何も思わないのか、それとも気付いていないのか、分からないけど。
「何時も主人がお世話(?)になっております。遥の妻、亜耶です。旧姓は鞠山です。」
 と自己紹介する私。 
 なのに。
えんに山の円山さんでしょ?」
 と聞いてきたから。
「違います。手鞠のまりに山です。」
 と答えると微かに動揺し出す。
 それでもまだ結び付かないようだった。
 そこに。
「全会長の愛しい孫娘が亜耶だ。」
 と追い討ちを掛けるように遥さんが言えば、狼狽えだし。
「失礼しました。知らなかったとは言え、言ってはいけない事を口にしてしまいました。申し訳有りませんでした。」
 と頭を下げた。
 ゆかりさんあのひとと違って、過ちを直ぐに謝ってくれた事に許せてしまう。
 でも、これはどうしたらいいんだろう?
 遥さんを見れば、飽きれ顔をしていた。
「頭を上げて。分かったのなら、自分に席に戻るなり帰るなりしたら。」
 遥さんがそう告げるとガバッと頭を上げて。
「失礼しました。」
 脱兎のごとく席に戻っていったのだった。


 
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