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中学生と婚約解消
体育祭の時の事…悠磨
しおりを挟む普段の彼女を見てれば、誰にでも分け隔てなく接する姿や、 女の子なのに頼り概があるところ。頭の回転も早いとなれば、文句言うこと無しだ。
そんな処にオレは、気が付けば更に惹かれていったのだ。
その年の体育祭。
オレは、彼女と係の仕事をしていたんだ。
そんな処に。
「亜耶!!」
と、彼女を呼ぶ親しげな男性の声が聞こえてきた。
オレは、思わずそっちに目を向けたんだ。
背の高い、顔立ちが整った男性が彼女に近付いてる。
不審に思いながら、見ていると。
「お兄ちゃん。来てくれたんだ!」
って、彼女の嬉しそうな声と顔が垣間見えた。
えっ……お兄ちゃん?
どう見ても、社会人の男の人だよなぁ……。
そう思いながら、会釈だけしておいた。
「亜耶が、誘ってくれたんだろ。来ないわけないだろ。それに、もう一人の暴走止めないといけないしな。」
意味深な言葉が聞こえてくる。
もう一人?
「遥さんも、来てるの?」
不満気な声の彼女に。
「物凄く張り切ってたぞ。」
と、苦笑ぎみに答える男性。
「じゃあさぁ、飛び入りで、百メートル走走ってよ。遥さんと一緒に。」
彼女が、悪戯っ子のように言い出す。
「待て待て、俺、運動するような格好してないぞ。」
言われてみれば、チノパンにラフなTシャツ、スニーカーだ。
「関係ないよ。遥さんにも応援してるから、って伝えて。」
彼女が笑顔で言えば、諦めたように。
「わかったよ。その辺に居ると思うから、連れてく。」
彼女の我が儘(?)、初めて聞いたような気がする。
しかし、さっきから出てくる "あの人" とは一体誰なんだろう?
首を傾げていたら。
「悠磨くん。一緒に百メートル観よ。きっと面白いことになるよ。」
彼女の弾んだ声に益々わからなくなる。
一体、何が起こると言うのか……。
取り敢えず、仕事を終わらせて百メートル走のゴール前に移動した。
『百メートル走選手の入場です。』
アナウンスと同時に入ってくる選手。
その中に先程の男性と、もう一人同じ年の男性が隣に居た。
イケメンだが、気だるげな雰囲気を醸し出している。
その男性こ格好も、運動するような服装ではなくて、ただ観に来ただけって感じな格好で、しかも運動は苦手そうに見えるのだが……。
本当に、良いのか?
不安が胸をよぎる。
横に居る彼女は、ニコニコしながら二人を観ている。
スタートラインには、二人が立っている。
そして、
バーン!!
スターター音がすると一斉に走り出したが、イケメン 二人が抜きでていた。
はっ…速い……。
えっ……何で?
他の走者が追い付けないでいる。
えっ……。
オレが驚いてる横で。
「お兄ちゃーん、遥さーん。頑張って!」
と大声を出して応援している彼女。
笑顔を浮かべて楽しんでいるのが分かる。
ちょっと待って。
何で、そんな笑みなんだ?
それに遥さんって、亜耶の兄の横にいる人の事か?
運動できなさそうなのに、何でこんなに速いんだよ。
気が付けば、周りも二人の事を応援してる。
一瞬の勝負な筈なのに、なんて白熱してるんだ。
そして、ゴールテープを切ったのは、彼女のお兄さん で、もう一人の方は悔しそうにしていた。
「流石、お兄ちゃん格好いい!!」
彼女が、嬉しそうにピョンピョンしてる。
無邪気に喜んでる姿に、驚かされる。
そして、目標が出来た。
あの人を越えなければ、彼女と付き合えないだろうという事が明確になった。
家に帰れば。
「やっぱり、鞠山さんとこの兄妹は凄いわね。」
と、リビングから母の声が聞こえてきた。
オレは、思わず。
「凄いって?」
て、聞き返していた。
「悠磨 、帰ってたの?」
母が驚いた声を出すけど、それには我関せずで。
「凄いって、どう凄いの?」
母親に食い付いた。
「あそこの兄妹ね、勉強もだけど、運動も凄いの。町内の運動会には大抵、引っ張り出されていたからね。」
母が、感心したように言う。
町内の運動会?
オレは、一度も行ったことはない。
面倒臭かったから。
「その運動会には、彼のファンも応援に来るほどだったしね。しかも、有名大学を一発合格するくらい、頭も良いしね。」
母の言葉を聞いて、さらにハードルが上がった気がする。
オレ、そんな凄い人を飛び越える事できるのか?
不安が押し寄せてくる。
「妹の亜耶ちゃんも、凄いのよね。運動能力高くってね、よくリレーのアンカーを任されてて、男の子を抜いて一位になってたし。」
その時の事を思い出していたのか、ボーとしだす母親。
「なんで、そんなに鞠山家の事に詳しいんだよ。」
オレが問いただすと。
「何でって、母親同士の交流で流れてくるからね。」
それって、筒抜けってことじゃ……。
「まぁ、亜耶ちゃんを狙ってるなら、応援するわよ。」
母の余計な一言が、癪に障り。
「そんなんじゃない!!」
つい、叫んでしまった。
そんなオレを見てクスクス笑いだす母親。
結局、オレは彼女の事を何も知らないんだと思い知らされた日だった。
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