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中学生と婚約解消
友逹以上の想い……悠磨
しおりを挟む俺、渡辺悠磨十五才。
今日は、クラスの連中とテスト勉強と称し、意気揚々と準備する。
何せ、俺の愛しの彼女も来るからだ。
少しでもカッコよく見せたいだろ。
「悠お兄ちゃん、何してるの?」
そう言ってきたのは、二つ下の妹。
洗面所のドアを開けっ放しにしてたのが、不味かった。
妹が、興味津々でオレを見てくる。
「もしかして、亜耶先輩とデート?」
妹の目が据わって、口許が僅かに上がる。
それだったら、どんなにいいことか……。
「違う! ただの勉強会。」
そう言いながら、洗面所を独占しまくる。
妹と亜耶は、部活の先輩後輩の仲だ。
そして、二人は滅茶苦茶仲が良く、部内で有ったことを逐一報告してくれる妹には感謝している。
だから、こういう事にはメチャ感が良い。
「悠磨。何大声出してるんだ?」
そこに、兄貴までが参戦してくる。
あ~、厄介なのが出てきた。
「篤兄ちゃん。悠兄ちゃん、これからデートだって」
妹の千春が要らん事を言う。
「ほう。悠磨にやっと春が訪れたんだな」
って、ニマニマしながら言ってくる。
気色悪い笑い方。
そんな兄貴を鏡越しで睨み付け。
「違う! 今から、クラスの奴等と勉強会なんだよ。」
オレは、再び叫んでいた。
「そうか? それにしては、念入りにチェックしてるじゃないか?」
オレの言葉に冷静に返してくる兄貴に、嫌気が差しが始める。
オレは、その場から逃げ出したくなり、腕時計に目を向けて。
「時間だから行くわ。」
それだけ告げて、玄関先に置いていたリュックを手にし、スニーカーに足を突っ込み。
「行ってきます。」
と何食わぬ顔で出たのだが。
「亜耶先輩に宜しく。」
妹の声に。
「彼女、ゲットしてこいよ!」
兄貴の声が外にまで聞こえてくる。
妹のは、まだいい。
だが、馬鹿兄貴のは恥ずかしすぎる。
そのまま、逃げるように待ち合わせの場所まで走った。
オレが、亜耶と出会ったのは中学入学した時。
クラス委員を決めるときに担任に押し付けられるように指名され、一緒に挨拶した時だった。
まぁ、オレは何時もの事だと思ってたし、気にしたこともなかったんだが。
隣に並んだ彼女は、凛としていて他の女子にはない気高さを持ち合わせていた。見た目も、オレの好みドンピシャだった。
とりあえず、挨拶をしなければと思い。
「渡辺悠磨です。選ばれたからには、頑張ります。」
男として彼女より先に言葉を発した。
そして。
「えっと……。鞠山亜耶です。宜しくお願いします?」
そう言って、頭を軽く下げた後の笑顔が、可愛くてドギマギしているオレが居た。
彼女の屈託のない笑顔は、クラスの誰しも魅了してたのだから。
「二人には、クラスを纏めて貰う為に頑張って貰うことで、宜しく頼むな。」
担任が、オレ達の肩を叩いた。
「「はい。」」
彼女と声が重なる。
そして、自分達の席に戻る時に。
「渡辺くん。一年間宜しくね。」
って、彼女の方から声を掛けてくれて。
「オレの方こそ、宜しくな。」
と答えたら、さっきとは違う笑みを返してくれたのだ。
何この娘、目茶苦茶良い娘なんじゃないかって、思わされたのだ。
それからだ。
オレたち二人が中心となって、クラスを纏めて行くことになった。
ある日。
「ねえ、渡辺くん。下の名前で呼んでも良い?」
突然彼女からの申し出に、驚いた。
そこまで、仲良くなった自覚が無かった所にその申し出で、オレは嬉しかった。彼女の事が気になってたし……。
「いきなり、どうしたの?」
動揺を隠しながら聞けば。
「せっかく仲良くなったのに、名字じゃ味気ないかなぁって思ったの。それに、友逹なんだし、下の名前で呼んでも可笑しくないよね。」
って、恥ずかしげに伏し目がちに聞いてくる彼女。
オレは顔が赤くなるのを自覚しながら。
「良いよ。」
あっさりと、許可してしまった。
「じゃあ、悠磨くんって呼ぶね。私の事 "亜耶" って呼んで。」
って、満面な笑顔で言う彼女。
ねぇ、これ何の拷問。
って思える程で、オレは思わず口許を隠し目をそらした。
彼女の事を呼び捨てに出来るなんて、何て特典なんだ。
内心喜び勇んでる自分。
「わかった、亜耶。」
声が、上擦ってしまったが彼女には気付かれていなかったようで、ホッとした。
この時の出来事から、彼女から目が放せなくなっていたのだ。
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