ヒ・ミ・ツ～許嫁は兄の親友～（旧:遠回りして気付いた想い）［完］

中学生と婚約解消

困惑と決意…悠磨

 亜耶と別れた後、お兄さんの後を着いて歩くと、人気のない公園に辿り着いた。
 お兄さんは、そのままブランコに枠に近付き軽く腰を下ろしこちらを見て。
「で、遥の事で聞きたい事とは？」
 と聞いてきた。
 えっ、オレさっき"聞きたいこと"としか言ってないのに何で、あの人の事だとわかったんだ？
「何で……それを……」
 呟くように言えば。
「亜耶のクラスメイトが、名前も知らない俺に声をかけるは、可笑しいだろ？ それに、君は遥とも直々顔を会わせることがある。それに、君が亜耶を思ってることを考えれば、答えは一つしかないだろ。違うか？」
 と言われれば、納得もいく。
「で、遥の何が聞きたいんだ？」
 改めて聞かれて。
「あの人の性格とか、長所とか兎に角何でもいいので教えて欲しいです」
 オレが、そう口にすれば。
「成る程。まずは、敵の弱味を握ることにしたのか……。まずまずかな。……う～ん、そうだなぁ、今は、前と違って、温厚になったのかな。長所か、気が長い。それから、文武両刀で教師の免許を持ってる。後は、高橋コーポレーションの四なんで、末っ子。亜耶と対面した八年前から亜耶を溺愛してる。そして、これは世間には知られてないが、その時から、亜耶の婚約者として内定してる」
 お兄さんは、顎に手をやり空を見上げながら、淡々と語る。
 そしてオレに視線を投げてきた。
 あの人が、亜耶の婚約者に内定者……。
 そんな……。
 でも、まだ中学生だぞ。
「あぁ、家は、一般的家庭だが、基をただせば財閥なので普通の恋愛結婚は難しいだろうが……」
 えっ……。
 財閥……。
 って、ことは本来亜耶はお嬢様ってことか……。
 淡々と伝えてくるお兄さんの言葉に、絶句するしかない。
 普通の恋愛結婚が、難しいって……なんで？
「家は、直系ではあるがそんなに畏まってはいない。けど、世間一般に知られてる跡取りではある。だから、遥かとの婚約は上（お爺様）の了承を得ているんだよ」
 えっ……、それって……つまり……。
「亜耶と遥は婚約者同士。只、亜耶はまだ中学生だから、婚約の発表はせず『今は、亜耶のやりたい様に過ごす事を望む』とも仰られている。遥の事を知って越えようとする努力は買ってやる。だが、それを覆す事は、容易では無いと心得ておくといい」
 真顔で言うお兄さん。
 そして、亜耶にはあの人が居るのだから諦めろとも言ってるようなものだ。それでいて、オレを試すように言っても見える。
「まぁ、まだ正式に発表されてないから、今は、亜耶の気持ちが最優先なんだが、な」
 って……。
 亜耶には、婚約者は決定しているが、本人  次第では覆すこともあるって事？
 それなら、オレにもチャンスがあるってことか？
「少年よ。まぁ、頑張れ」
 立ち上がると、オレの肩をポンと軽く叩いて行こうとする。
 そんな背中に。
「有り難うございます」
 お礼を言い、お辞儀した。



 亜耶は、あの人の事なんとも思っていないんだ。
 だったら、オレにだってチャンスがあるんだ。
 亜耶が、オレの事を好きになる可能性はゼロじゃない。
 オレは、彼女との時間を充分にとって、彼女に自分の事をもっと知ってもらい、好きになってもらう努力を怠らなければ、行けるんじゃないかって思う。

 こうして入られない。
 今直ぐ自分がやれることをやらねば。
 そして、絶対に亜耶を手に入れるんだ。



 その思いだけで、突き動かされた。