ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺

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中学生と婚約解消

見合い…遥

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 はぁ~。
 結局、スーツに着替えさせられた俺。
 そのまま、ホテル内に在る一室に連行させられた。

 室内に入ると、見なれない夫婦とケバケバシイ女性が座って居た。
 どことなく、俺の苦手な部類の女だと嫌気がさす。
 自分が一番だというタイプは、一番嫌いなタイプなんだが……。

 俺が席に着くと。
「遥。此方のお嬢さんは、細川商事の社長令嬢のゆかりさん。」
 多香子姉さんが、席に着いた俺を見計らって紹介してきた。
「初めまして、高橋遥です」
 一応、挨拶は大事だからするが、それだけだ。
「細川ゆかりです。お目にかかれて、光栄ですわ、遥さん」
 って、最初からなで声で言ってくる彼女に嫌気がさす。
 本当にダメだ。俺は、彼女を受け付けられない。
「その"遥さん"呼びは止めてくれませんか。初対面で名前呼びは許可出来ません。って言うか、一生言わないで欲しいですね」
「何故ですか? 夫婦になるんですから、名前呼びの方がいいと思うんですけど」
 は?
 こいつバカか。何時俺がお前と結婚するって言ったんだ?脳内お花畑の方か?自信過剰も良いとこだな。
「あのさぁ、私はあなたとの結婚は望んでいないので、勝手に夫婦にされても困るんですがね」
 隣に座る姉を見れば、同じように唖然としてる。
 それに、家の両親が来てないってことは、この話は姉と細川商事のお嬢さんだけで決めたことなんだろうと推測できる。
「結婚を望んでない人が、お見合い何てします?」
 ってさっきから、目許が朱いのだが、大丈夫だろうか?
 このお嬢さん、最初の印象のままだ。
 やっぱり、受け付けられねぇわ。
「姉の顔を立ててるだけです。それに、俺自身公表されてはいませんが、八年前から婚約者が居るのでお断りさせていただきます」
「婚約者って……。多香子様からは、居ないと伺ってますが?」
 うっすらと気味の悪い笑みを浮かべて、俺に問い詰めてくる。
 こいつ、裏表激しくないか。
 まぁ、姉さん達には今しがた話したばかりだしな、知らなくて当然だ。
「差し障りがなければ、その婚約者の名前をお聞きしても?」
 あ~あ、こんなことで亜耶の名前を出すのは嫌だが、目の前の彼女と縁を切るためなら、致し方ないか……。
「鞠山財閥唯一のご令嬢、鞠山亜耶さんです」
 もう、こんなお見合いすっぽかして、亜耶をギュウギュウト抱き締めて、癒されたいよ。
 俺は、馬鹿正直に言ったにも関わらず。
「えっ、あんな中学生と婚約してるんですか。私との方が年も近くて、遥さんにピッタリだと思うんです!!」
 亜耶を馬鹿にする態度といい、自分が一番を崩さないあたり俺には印象が悪すぎる。
 こんな女と一緒になったって、ろくなことにならない。
 姉さんも人を見る目無いなぁ。
「あのさぁ、年齢差何て関係あるのか? 俺は、関係ないと思ってる。それに唯一の癒してを馬鹿にされるのって、無償に腹が立つ。俺は、亜耶としか結婚を望んでいないんだ!!」
 俺は、亜耶さえ傍に居てくれればいいんだ。
 今は、一方通行の想いだが、な。
「私だって、幼い頃から遥さんの事をお慕いしておりました。貴方のお嫁さんに成る為に努力してきたんです!」
 って、力説されたが、こればかりはしょうがないと思う。
 俺は、彼女を受け付けれないのだ。
 それに、俺は彼女と会うのは初対面だ。
 過去に会ったことはない。
 努力とは?
 何をもって努力と言うのだろうか?
 彼女は、妄想を広げる努力をしていたのだろうか?
 今だって、思考を何処かに飛ばしてるみたいだし……。
「あっそ。でも、俺は亜耶しか求めていない。君に向ける愛情なんてない」
 淡々と言葉を告げる。
「じゃあ、融資の件は無かった事にさせてもらってもいいんですね」
 彼女……ゆかり嬢が姉に視線を向けて言う。
「……それは、その……」
  って、口ごもる姉に視線をやる。
 融資って、何の事だ?
 もしかして、俺を出しに融資してもらおうとしてたのか?
 冗談じゃない!
 俺は、姉の道具じゃない!
 こうなるのが嫌で、家を出たのに結局は道具にされてたのかよ。
 姉を睨み付ける。
「……遥の思ってる通りよ。」
 姉が肯定する。
 何やってるんだよ。
「遥さん。どうしますか?」
 ニヤツキながらこちらに嫌な目線を俺に向けて聞いてくる。
「姉さん。先にそれ言ってくれたらよかったのに……。俺って、頼りになら無いのか?」
 呆れた目線を姉に向ける。
「そうじゃないの。遥は、家を出ていった人でしょ。だから、頼っちゃいけないと思ったの……」
 力無く言う姉。
「あのさぁ、だからって騙し討ちみたいに呼び出して、見合いして融資を受けるのってお門違いじゃないか?」
「遥の言葉は、ごもっともです。だけど、仕方なかったの……。それに、遥が鞠山家と繋がってるなんて思いもよらなかったし……。」
「わかった。経営が軌道に載るまで、俺が手伝う。それでいいだろ。融資の話も無し。ということで、この見合いも無かったことにしてくれ。」
 俺はそれだけ言うと席を立つ。
「遥、何処へ?」
 姉が挙動不審になりながら聞いてきた。
「何処って、鞠山財閥に交渉するんだよ」
「えっ?」
「私も一緒に行きます」
 ゆかり嬢が、俺の腕に胸を押し付けながら絡んできた。
 この女、自分が何してるのかわかってるのか?
 娼婦みたいなことしたって、俺が靡くわけないだろうが!
 あ~、鬱陶しい。
 俺は、無理矢理彼女を引っ剥がすと、あからさまにムッとしだす。
「遥、待ちなさい。私も行くから」
 姉まで着いてきた。
  
 俺は、部屋を出てロビーに移動し社長に直接電話を掛けたのだった。


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