52 / 145
中学生と婚約解消
初デート①…亜耶
しおりを挟む今日は、悠磨くんとの初デート。
よく皆と一緒に遊びに行ったりはしてたんだけど、二人だけでってのは初めてで、何を着ていけばいいのかわからなかった。
「う~ん。どうしよう?」
悩んでいたら。
コンコン。
って、ドアがノックされた。
「はーい。」
私は、ドアを開けて確認する。
「亜耶。これからでかけないか?」
って、お兄ちゃんだった。
「ごめんなさい。これから、悠磨くんと会う約束してて……。」
私の言葉に。
「そっか……。それなら仕方ないな。」
お兄ちゃんの残念そうな顔。
そうだ!
お兄ちゃんに服決めてもらおう。
何故か私は、それが得策だと思った。
「ねぇ、お兄ちゃん。ちょっと相談があるんだけど……。」
私がそう言うと。
「何? 小遣いか?」
と怪訝そうな顔を向けてくる。
くれるの?
心持ち足りないかなって思ってたんだけどね。
何て首を傾げ、お兄ちゃんが少し出してくれるなら心配ないかなと思いながらも。
「違うよ。何を着ていけばいいのかわかんないの……。だから、お兄ちゃんに見立ててもらおうと……。」
慌てて否定した。
「それなら、由華に相談しろよ」
お兄ちゃんが、そう言って私にスマホを貸してくれた。
エッ……。
いいのかなぁ、迷惑じゃない?
「勝手に掛けてもいいの?」
疑問に思った私に。
「うん。由華、亜耶に頼られるの待ち望んでるからな」
お兄ちゃんが、クスクスと忍び笑いする。
頭の中で、疑問符が飛び交う私に。
「リダイヤルの一番最初に由華の番号があるだろ」
お兄ちゃんの言葉。
携帯画面を触り見れば、リダイヤルの一番上に由華さんの名前があった。
私は、そのまま由華さんのところをタップして電話を掛けた。
『はい。雅くん、どうしたの?』
って、由華さんの元気な声が聞こえてきた。
「由華さん。私、亜耶です。」
応答する私。
『えっ、亜耶ちゃん』
由華さんが驚いた声を出す。
そりゃあ、そうだよね。お兄ちゃんの携帯から私の声がすれば、驚くよね。
「はい。由華さんに相談したいことが……」
歯切れの悪い私に。
『ん? 何かな』
優しい声で返してくれる由華さん。
「初デートに着ていく服って、どんなのがいいですか?」
私は、言葉も選ばず素直に聞いた。
待ち合わせの時間ギリギリだったから。
『そうね。行く場所によっては替わるから、詳しく教えて』
由華さんの楽しそうな弾んだ声。
私は、由華さんに大まかに話した。
すると、的確なアドバイスをくれたのだ。
それから、着て行く服を決めた。
上から下に向かって、淡い黄緑色から淡い黄色のグラデーション(春っぽく見えるかなって思ったから)の膝丈のワンピースに白のジャケット(襟元に小花の刺繍が施されてる)を羽織った。黒の七分丈のレギンスに少し低めの薄桃色のヒールを合わせた。
髪は、両サイドを編み込んでアップにした。
口許も薄いピンクのリップを塗った。
そこまでして時計を見た。
待ち合わせの時間ギリギリだった。
私は、鞄にお財布と携帯を突っ込んで、慌てて家を出た。
ヒールで走るのは、難しそうだったので(慣れてない)早足で駅に向かった。
時間、間に合うよね。
心なしか、慌ててる自分がいる。
駅に着き、キョロキョロと悠磨くんの姿を探した。
居た。改札口の横。
人の邪魔になら無い場所で、携帯を弄っている。
私は、悠磨くんの側に行く
「悠磨くん。お待たせ。」
と声を掛けた。
悠磨くんは、ゆっくりと目線を私に向けてきた。
いつもと違う雰囲気の悠磨くん。
何が違うのかな?
首を傾げながら、マジマジと彼を見た。
あっ、服装がいつもと違うからか……。
普段、カジュアル系の服で、髪も下ろしてるから、幼く感じてたのが、前髪を後ろに流してて、普段は着ない黒のジャケットが、少し大人っぽく見えるんだ。
「否、オレも今来たとこ。で、亜耶は映画、何が見たい?」
突然聞かれて、悠磨くんが携帯画面を見せてくれる。
その画面には、映画のタイトルとストーリーが並んでいた。
う~ん。そうだなぁ。
あっ、このSF面白そう。
私が画面から顔を上げて、悠磨くんを見るとボーと私の方を見ていた。
「悠磨くん?」
思わず声をかけたが。
「……。」
返事がない。
「どうかした?」
悠磨くんの顔を覗き込むようにもう一度訪ねると、吃驚して仰け反り。
「亜耶が、可愛すぎて……。」
って、言葉が返ってきた。
その言葉によって、ボフンって顔から音が出るんじゃないかってくらい熱くなりお湯が沸かせるんじゃないかって思ってた。
顔を隠すように俯いてしまった私に。
「亜耶。観たいの決まった?」
って声がかかる。
「う……うん。これ。」
私は、画面に出てるタイトルを指で示した。
そこから、悠磨くんが映画館での開始時間を検索しだした。
「上映時間まで時間があるから、お昼を食べてから行こう」
悠磨くんの提案に。
「うん」
私は、素直に頷いた。
すると、悠磨くんが、スッと手を差しのべてきた。
戸惑ってる私に。
「はぐれるといけないから……。」
少し照れてるのか声が上ずってる悠磨くん。
私は、オズオズと自分の手を彼の手に乗せると歩き出す。
映画館の近くにあるファミレスに入ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
先生
藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。
町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。
ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。
だけど薫は恋愛初心者。
どうすればいいのかわからなくて……
※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します
縁 遊
恋愛
幼い頃から可愛いあまりに知らない人に誘拐されるということを何回も経験してきた主人公。
大人になった今ではいかに地味に目立たず生活するかに命をかけているという変わり者。
だけど、そんな彼女を気にかける男性が出てきて…。
そんなマイペースお嬢様とそのお嬢様に振り回される男性達とのラブコメディーです。
☆最初の方は恋愛要素が少なめです。
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
お嬢様は新婚につき誘惑はご遠慮します
縁 遊
恋愛
初恋の人との恋を実らせて結婚したお嬢様の高宮 菫(たかみや すみれ)。
新婚の菫奥様には悩みがいっぱい。
旦那様には溺愛されてどう対応して良いかも分からないし、結婚してから地味な化粧を止めたらいろんな人から誘われる様になってしまって…こちらも対応に困ってしまう。
天然で憎めないお嬢様(新婚奥様)の何気ない日常のお話です。
溺愛いえ…激甘にする予定です。
苦手な方はご遠慮下さい。
作品は不定期更新になります。
これは『お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します』の続編です。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる