ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺

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高校生編と再婚約の条件

距離感…亜耶

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  散々楽しんだカラオケ(途中変な雰囲気になったが……)を出て、近くにあるファミレスに入った。
  六人掛の場所に案内をしてもらい、互いの彼の前に座る。
  私の右側に姫依ちゃん、左側に留美ちゃんが座る。

  メニューを見ながら、何にするか考える。


  そう言えば、今日はお兄ちゃんと食べに行くって言ってたっけ……。だったら、ドリンクだけの方がいいか……。

  何て思いながら、メニューを捲っていくとデザートのページに辿り着いた。フと目についたのが、季節のフルーツタルト。フルーツが、これでもかってふんだんに盛ってあって、食べてくださいって言ってるみたいで、誘惑に負けそのタルトと紅茶を頼むことにした。


  各々決まったようで、店員さんに注文すると喋りだした。


「亜耶。学校での悠磨くんってどう?」
  姫依ちゃんが聞いてきた。
「どうって?」
  逆に聞き返しちゃったよ。
  何を知りたいのか、わからなかったのだ。
「中学と同様で、人気あるでしょ?」
  う~ん。
  人気あるのかなぁ?
「今のところわかんないな。クラスかなり離れちゃったし……。唯一の接点が、委員会と部活ぐらいだから……。」
  私の言葉に二人が驚いた顔をする。
  そんなに驚くこと?
「今度の球技大会でわかるんじゃないかなぁ?」
  クラスでは、誰も悠磨くんの事言う人居ないし……。
「ちょ、ちょっと亜耶。そんな呑気に構えてていいの?」
  姫依ちゃんが焦りながら言う。
  エッ……。
  なんで、焦る必要があるんだろう?
  焦ったって、何にもなら無いし、今更悠磨くんが人気者であろうと付き合ってるのは私なんだから、姫依ちゃんが焦るのは可笑しいと思うんだけど……。
「別にいいんじゃない。悠磨くんが亜耶大好きなの一目瞭然なんだし……。」
  留美ちゃんが姫依ちゃんに言う。
  ん?
  そんなにベタ惚れしてる?
  私には、わかんないや。
  ベタ惚れって言うのは、遥さんみたいな……。
  って、また比較しちゃってる。
  何でだろう?
「部活って、陸上?」
  留美ちゃんが話を変えるように聞いてきた。
「……うん。マネージャーだったんだけど、今回の大会だけ人数不足でリレーの選手。」
  私は、そう二人に告げる。
「今回だけって?」
  不思議そうに訪ねてくるから。
「ん。女子部人数足りなくて、出ることになったの。」
  嫌々だけど。
「亜耶、足早いもんね。」
  留美ちゃんが思い出し納得したように言う。
「うん。そういやそうだったね。混合リレーやスウェーデンリレーに選ばれてたもんね。」
  姫依ちゃんも思い出したように言う。
  うん。そうだったね。気付いたときには、リレー枠に入ってた。

  そういや、あの時の体育祭時、お兄ちゃんに無理言って百メートル走に出てもらったっけ(遥さんも道連れで)……。
  あの二人、必要以上に人を引き付けていたっけ……。

  思いに耽っていた。
「亜耶。さっきから携帯鳴ってる。」
  留美ちゃんが小声で言ってきた。
「……あっ。」
  私は、慌てて鞄の中を探って携帯を開く。

  ディスプレイには“お兄ちゃん”と表示されていた。
  私は、それを手にして。
「ちょっと外すね。」
  一言言って、店の外に出た。


  外に出ると着信が切れて、直ぐにかかってきた。
「もしもし?」
  私は、そのまま通話ボタンを押して出た。
『もしもし、亜耶? 今何処に居るんだ? 迎えに行くから、場所教えて。』
  お兄ちゃんの優しい声。
「駅の近くにあるファミレス。前、お兄ちゃんと行った場所だよ。」
  私がそう言うと。
『あそこか……。今、近くに居るから準備しとけよ。』
  お兄ちゃんはそれだけ言って、通話を切った。
  
  私は店の中に戻り。
「ごめん。私この後、用事があるから、先に帰るね。」
  椅子に置いておいた鞄を掴んで、財布を取り出して、自分の分の支払いをテーブルに置く。
「じゃあ、また遊ぼうね。」
  それだけ言って店を出た。


  店を出ると入り口で由華さんが立って居た。
「亜耶ちゃん。久し振り~。」
  元気な声と笑顔に迎えられた。
「お久し振りです、由華おねえさん。」
  私も笑顔で返した。
  一瞬驚いた顔をして、ムギュっと抱き締められてた。
「何。この可愛い娘。」
  って、頭をワシャワシャとメチャクチャに掻き回された。
「由……お義姉ちゃん……。」
  由華さんにされるままで居る私。
  どう抵抗しようとしても、無理だと思いそのままで居た。
「由華。いい加減やめてやれよ。」
  苦笑交じりのお兄ちゃんの声がし。
「えーっ。もっといじりたい。」
  由華さんが、駄々をこねる。
「うん。わかってるけど、ここ店の入り口だからね、移動しよ。」
  お兄ちゃんの言葉に由華さんが
「はーい。」
  由華さんは、素直に頷いて、私の腕に絡み付く。
「行くよ、亜耶ちゃん」
  って、引っ張り出す。
  私は、目でお兄ちゃんに助けを求めたけど……。
  “ごめん、無理”って口パクで言ってきた。
  うっ……。
  今日も、由華さんに振り回されるのか……。



  心の中で溜め息をついた。










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