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高校生編と再婚約の条件
別れの時…悠磨
しおりを挟むとうとうこの日が来た。
入院中、亜耶が泉に話してた想いは、本物だろう。
彼女が高橋の話してる時の愛しそうな顔が、忘れられない。
結局、今日まで亜耶の口からは別れの言葉を告げられる事はなかった。
その間に、泉にも変化があって、オレは戸惑うばかりだ。
今日は、始業式。
授業も部活もなくて、少しでも亜耶と居たくて亜耶の教室で話していた。
教室内には、オレ等しか居なくてたわいの無い話で盛り上がっていた。
「なぁ、亜耶。」
オレは、何となくだけど嫌な予感がしてたんだ。
だからかな。
少しだけ、焦ってたんだと思う。
彼女がオレを少しでも好きでいてくれたらって……。
その時は、あの人から奪おうと思ってた。
「何?」
亜耶が、オレの方を見る。
その顔が、可愛くてじっと見つめていた。
すると、亜耶が不思議そうな顔をして。
「どうしたの? 私の顔に何かついてる?」
って、問いかけてきた。
「ううん、何でもない……。」
何て言いながら、どうしたらいいのかわからなくて、ふと外を見たら、正門の所に人だかりが出来ていて、あぁオレの予想が的中したんだと思った。
あの中に、あの人が居るのだろう。
あの人、見た目からカッコいいから周囲を惹き付けてしまうんだよなぁ~。
オレは、亜耶に最後の思い出として。
「亜耶。キスしようか……。」
って声をかけた。
「……う、うん。いいよ。」
想いもよらぬ返答に嬉しくなり、亜耶を正面から向き合う。
オレは、亜耶の顎に手をやり、上に向かせゆっくりと顔を近付けて亜耶の唇に触れそうになったところで。
ドンッ!!
身体を突き飛ばされた。
「ご、ごめん。」
亜耶が、慌てて謝ってきた。
「……何だよ。やっぱり亜耶は、オレを見てくれてなかったんだな。」
オレは、思わずそう口にした。
亜耶が、哀しそうな顔をしてオレを見る。
そして、どうしたらいいのか戸惑いの顔をする亜耶。
そんな顔させてるのは、オレなんだな。
そんな亜耶に。
「亜耶の胸の内に居るのは、オレじゃないんだろ! オレは、高橋の代わりなんかじゃないよ。オレの事ちゃんと見てくれよ。」
オレの胸の内を明かした。
亜耶の事、本当に好きだから自分の事を見て欲しいって思ってるのに、何で上手くいかないんだろう。
「ごめん。悠磨くんの事利用してた訳じゃないの。ちゃんと好きだった。……でも、何時の間にか悠磨くんよりもあの人の存在の方が大きくなってて、あの人じゃないとダメだって最近になって気付いたの。ごめんなさい。」
亜耶が、涙を流しながらオレに謝ってくる。
泣かせたい訳じゃないんだがな。
もう、亜耶の気持ちは、オレに無いって事くらいわかる。
だって"好きだった"って過去形になってるじゃんか。
「行けよ…。」
オレの言葉に、亜耶がビクリと肩を揺らす。
「行けよ! オレの事なんか構わず、あの人の所に……。」
言葉尻が、小さくなる。
オレは、両拳を握りしめるが顔は、上げれなかった。
見せたくなかったんだ。
涙してるオレなんかを見て、幻滅させたくなかった。
「ごめんね、悠磨くん。」
その言葉を残して、彼女は教室を出て行った。
これで、よかったんだよな。
優しい亜耶が、自分から話すことはないと思ってたからオレから、突き放すしか無いと思ってた。
どれが正解なんかわからない。
ただ、オレは君に傍で一緒に笑ってて欲しかったんだ。
君の笑顔を守れるくらいの強さがあればよかったよ。
この半年間、楽しかったよ。
ありがとう。
オレは、心の中でお礼を言うと、携帯を取り出し義之に電話した。
『もしもし、悠磨。どうした?』
不思議そうな声の義之に。
「オレ、亜耶と別れた……。」
その一言だけ言って電話を切った。
とんだ、道化師だよオレは……。
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