優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々

文字の大きさ
26 / 85
第二章 猫耳事変

第10話 エピローグ

しおりを挟む
 ――とても頭がぼんやりする。寝過ぎた時のような、軽い頭痛を覚えて織理は目を覚ました。

「織理、体は平気? 変なとこない?」

 目の前には心配そうに覗き込む弦の姿。そして少し横を見ると攪真と在琉もいた。囲まれている、何故。

「……えっと?」

 弦の心配気な顔に織理は困惑する。はて、何かあっただろうか。ここ最近変わったことなんて無かったはずなのに、と首を傾げる。今だってただ起きただけだ、外に目を向けても空は明るい。別におかしなことはない。精々心地よい夢を見た気がする、くらいだろうか。
 そんな織理のとぼけた様子に攪真は眉を寄せた。

「……まさか記憶が抜けとるんちゃうか?」

 攪真が近づいて織理の頭をぽんぽんと叩く。なんとなくむず痒い感覚だ。違和感を感じるが嫌ではない。
 しかし記憶とは一体? 依然として状況を飲み込めていない織理を在琉が鼻で笑った。

「めっちゃ無様で可愛かったですよ織さん。いやー、アンタにも見せたかったなぁ。畜生織さん」

 在琉はいつもの調子を取り戻したようにせせら笑う。――畜生織理とは一体なんのことだろう、初めての呼ばれ方だと織理はやっぱり困惑した。これまでの暴言の中でもトップクラスに失礼だ。
 困った織理は弦に視線を向ける。少し困惑した顔の弦は小さく笑いながら答えた。

「まぁ、猫だったんだよ。織理が」
「俺が? 毛玉だったってこと?」

 ――何それ楽しそう。織理はちょっと自分が羨ましくなった。あのふわふわの毛玉、身軽でどこにでも行ける自由な身体能力、そしてそこに居るだけで可愛い最強の生き物……そんなものになっていたのかと。だから畜生なのかとも納得がいく。猫を畜生扱いすることには異論があったが。
 少し思い馳せている織理に誰も真実を告げられなかった。――お前に猫耳が生えてたんだよ。それだけは言わなかった。本人に知らせることでもないと思ったので。

「あんなに耐えとったのに無意味で可哀想やなぁ、先輩?」

 攪真は小声で弦に耳打ちする。弦は困った様に笑い返した。それが聞こえなかった織理は、何の話? と首を傾げた。

「いやー、でもよかったわ。これで遠慮なく織理に触れるってもんやし」

 空気を変えるかのように軽く茶化す攪真。しかし笑う攪真の頭に何か見えた気がした。

「攪真、それ何……」

 織理が指差すと攪真は手を頭に当てる。それに釣られて弦と在琉も視線を送った。何やらふわふわする感覚、攪真は顔を青ざめさせた。

「猫……」
「いや誰得だよやめようよ」

 織理の呟きを聞いた弦がすぐさま反応する。流石に攪真の猫耳は全く嬉しくないと。

「あんの……野郎……!!」

 これはきっとあの犯人の報復に違いない、最後になんか仕掛けてやがった! 攪真は行き場のない耳をとりあえず動かした。

 この後どうなったかはまた別の話。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

気づいたらスパダリの部屋で繭になってた話

米山のら
BL
鎌倉で静かにリモート生活を送る俺は、極度のあがり症。 子どものころ高い声をからかわれたトラウマが原因で、人と話すのが苦手だ。 そんな俺が、月に一度の出社日に出会ったのは、仕事も見た目も完璧なのに、なぜか異常に距離が近い謎のスパダリ。 気づけば荷物ごとドナドナされて、たどり着いたのは最上階の部屋。 「おいで」 ……その優しさ、むしろ怖いんですけど!? これは、殻に閉じこもっていた俺が、“繭”という名の執着にじわじわと絡め取られていく話。

オメガだと隠して魔王討伐隊に入ったら、最強アルファ達に溺愛されています

水凪しおん
BL
前世は、どこにでもいる普通の大学生だった。車に轢かれ、次に目覚めた時、俺はミルクティー色の髪を持つ少年『サナ』として、剣と魔法の異世界にいた。 そこで知らされたのは、衝撃の事実。この世界には男女の他に『アルファ』『ベータ』『オメガ』という第二の性が存在し、俺はその中で最も希少で、男性でありながら子を宿すことができる『オメガ』だという。 アルファに守られ、番になるのが幸せ? そんな決められた道は歩きたくない。俺は、俺自身の力で生きていく。そう決意し、平凡な『ベータ』と身分を偽った俺の前に現れたのは、太陽のように眩しい聖騎士カイル。彼は俺のささやかな機転を「稀代の戦術眼」と絶賛し、半ば強引に魔王討伐隊へと引き入れた。 しかし、そこは最強のアルファたちの巣窟だった! リーダーのカイルに加え、皮肉屋の天才魔法使いリアム、寡黙な獣人暗殺者ジン。三人の強烈なアルファフェロモンに日々当てられ、俺の身体は甘く疼き始める。 隠し通したい秘密と、抗いがたい本能。偽りのベータとして、俺はこの英雄たちの中で生き残れるのか? これは運命に抗う一人のオメガが、本当の居場所と愛を見つけるまでの物語。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

死神に狙われた少年は悪魔に甘やかされる

ユーリ
BL
魔法省に悪魔が降り立ったーー世話係に任命された花音は憂鬱だった。だって悪魔が胡散臭い。なのになぜか死神に狙われているからと一緒に住むことになり…しかも悪魔に甘やかされる!? 「お前みたいなドジでバカでかわいいやつが好きなんだよ」スパダリ悪魔×死神に狙われるドジっ子「なんか恋人みたい…」ーー死神に狙われた少年は悪魔に甘やかされる??

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

処理中です...