知らぬはヒロインだけ

ネコフク

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二十七話

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 聖夜祭の事件が話題に上がる事も無くなり、アリサも修道院へと送られたとある日。クエスフィールは王族の居住エリアにあるミハエルの部屋へと来ていた。

 明るい青と白で統一された部屋は重厚感や豪奢からはかけ離れ、王族らしからぬ機能性を重視した造りになっている。

 同性なので問題はないと侍従を締め出し、部屋にはクエスフィールとミハエルのみ。用意された紅茶とお菓子を挟み互いに貴族らしからぬ体勢でどっかりとソファーへ身を沈めている。

「ふあ~自分の部屋でしかダレられないのつらぁ・・・」

「仕方ないでしょ。今は王子様だからね」

 クエスフィール以外部屋にいないのをいい事に、ミハエルはソファーに横になりながら菓子を口へ放り込む。王族として公私共に四六時中人の目にさらされるのは仕方ない。だからこそ超プライベートゾーンは好きにしていいとミハエルは思っている。

 それを知っているからクエスフィールも何も言わない。というか同じゴロ寝スタイルである。

「やっと面倒な事も終わったし、これからはあーたんとイチャイチャするだけの世界・・・・・・」

「どんな世界なのさ。おい、何を持ち上げるシミュレーションしてるんだよ。お前転生してもエロいのな」

「はあ~?男はみんなエロいんですぅ!」

「ホント見た目詐欺は変わんないよね。エロ伸二」

「優だって見た目チャラいのにコミュ障のガリ勉とか詐欺だったじゃん。俺瓶底メガネかけてるヤツ初めて見たし」

「だから普段はコンタクトだったじゃん」

 ぷっくりと頬を膨らますクエスフィールとガハハと歯を見せ笑うミハエルをマナー講師が見たら卒倒してしまうだろう。

「いやぁ結局アリサあいつ俺と優の事気づかなかったな」

「あれだけ前世でストーキングしてたのにね」

「うへぇ、思い出させんなよ」

 身震いし大げさに両腕を擦るミハエルに苦笑する。

 たまたま行った映画館で逆ナンされ、映画を観ている時にも話しかけてきてあまりのうるささに誰か呼んだのか従業員に引きずって強制退去。更に家まで特定しようとつけられる。毎回撒いて逃げて家までは特定されなかったけど、かなりの間周りをうろちょろされて迷惑していた。
 バレンタインの時も押し付けられた手作りチョコなんて怖すぎて捨てる一択。

 半年過ぎた辺りからパタリと見なくなったと思っていたら、ミハエルとクエスフィールの声をあてていた声優に過剰な接触や家に乗り込もうとして、逮捕されたニュースをネットで見かけた時はガッツポーズをしたなぁ、とクエスフィールは他人事のように思い出すが、当時は神経をすり減らす日々だった。

「でもアイツ思ってたよりミハエルとクエスフィールに執着してなかったな」

「最終的に自分のものになるって思ってたからじゃない?」

「大してストーリー通りに動いてないのに?」

「強制力があると思ってたとか」

 無いのに気付かなくてこっちは助かったけどなーとクッキーを上に放り投げ口でキャッチし、サクサク食べるミハエルを見てクエスフィールも同じくして食べる。

 この会話で分かっただろう。ミハエルもクエスフィールとアリサと同じ転生者なのである。
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