知らぬはヒロインだけ

ネコフク

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六話

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 さて、学院においてどうしても違う学年と関わらなければいけない行事がある。

 その一つが入学式から1か月後にある学生参加のパーティーだ。

 新入生の歓迎会を兼ねたこのパーティーは、全学年の学生が必ず参加しなくてはいけない催し物で、交友関係やコネを広めたり、婚約者がいない者は相手を探したりとかなり皆活動的になる。

 ドレスコードも緩いがあり、ドレスを用意出来ない生徒には貸し出しもしている。
 婚約者が在籍している生徒はエスコートをして会場に入るのも通例だ。

 それに倣いクエスフィールはシスティアを、ミハエルはアラベラを伴い会場入りしている。

 クエスフィールはアスコットタイピンやカフスに、システィアはネックレスやイヤリングに互いの瞳の色を入れただけだが、アラベラは先にいくほど青くグラデーションがかかったゴールドのドレスを纏っている。もちろんネックレスやイヤリングもゴールドにブルーダイヤモンドとミハエルの独占欲丸だしのコーディネートだ。

 ミハエルもクラヴァットを留めるどデカい宝石とイヤーカフがアラベラの瞳と同じガーネット。コートとウエストコートには金糸で刺繍がしてあり、公式の夜会に出るような出で立ちである。
 緩いドレスコードの場だが、王族とその婚約者なので装いを下げられないらしい。

 ガッチガチに互いの色を入れた衣装を身に纏う2人を見て、前世なら恥ずかしげもなくペアルックを着るタイプだと密かに思うクエスフィール。そういえば親友がそのタイプだったとちょっと遠い目になる。

 今回のパーティーは新入生がメインなのでダンスホールの近くに新入生が、他の在校生は壁際のテーブルに集まっている。4人もクラスメイトと一緒に壁際のテーブルに移動するが、見た目が華やかなのでかなり目立ち注目の的だ。

 本人達や周りも慣れたもので気にすることなく談笑していると、入り口の方が騒がしくなる。

 何事かとそちらの方へ視線を向けると同時にクエスフィールとミハエルは飲み物を吹き出しそうになる。

「あれはダサヨン嬢ですわよね?」

 さっと扇を広げ口元を隠し顔を顰めるアラベラに固まるシスティア。周りの生徒も驚いている。

 (あー、僕の知ってるアリサで確定だな)

「アイツ中々やるな」

 眉間をぐりぐりほぐしながら嘆息するクエスフィールにミハエルが肘で突く。

 知り合いでも話の分かる人なら良かったのだが、全く話の通じないタイプの人間が同じ世界に転生していた事に絶望しか感じない。

「俺、嫌な予感がする」

「ミハエル様もですか?わたくしもです」

「やめて。それフラグって言うんだよ」

「フラグって何ですの?」

「言った事が現実になる事ですよ」

「あー・・・・・・」

「あらまあ。やってしまいましたわね」

「ほらー、見つかった!」

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