知らぬはヒロインだけ

ネコフク

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五話

「名前、アリサ=ダサヨンって言ってたよね」

「そうですわね、確認の為聞きましたが前もって聞いていた名前と違いましたわ」

 クエスフィールが腕を組み唸る。

「アリサってまさかあのビッチじゃないよな?」

「ビッチ?」

 ボソリと言った「ビッチ」と言った言葉にアラベラが首を傾げる。

「ああ、こっちの世界に無い言葉か。うーん、誰にでも股を開く?交わるみたいな?」

 それを聞いたアラベラとシスティアは真っ赤になり、ミハエルはニヤニヤしている。
 この世界の貞操観念は高い。特に女性貴族に至っては結婚に処女性を求められる事も多い。付き合えど行為には至らずキス止まりだ。
 ただ男性貴族の場合は性欲を持て余し娼館に通う者も少なからずいるが、婚約者とは初夜まで我慢するのが一般的だ。クエスフィールやミハエルは婚約者を溺愛しているし、種をまき散らして子供が出来たと迫られると困る立場なので閨の講義すら座学のみである。

「前世の世界ではここより貞操観念が低かったからね。婚前交渉は当たり前。それでも交際相手とだけが普通なんだけど、そのアリサってヤツ誰とでもヤッてたんだよね。それこそ彼女や奥さんがいても関係なく」

「なななな・・・そんなはしたない事を!」

 こちらの世界では考えられない行為にアラベラとシスティアは手を握り合い寄り添って絶句している。

 それを見て「前世で経験があるんだぜ!」とは言えないなぁと心の中で苦笑いをする。言ったら嫌われる自信しかない。

「ヒロインがデフォルトの名前である「マイ」であれば転生者の可能性が低いから、イベントにはち合わせしなければ良かっただけなんだけど、名前が違うから転生者の可能性が高い。しかも僕の知ってるアリサだとかなり厄介だよ」

「厄介とは?」

「見目の良い生徒は確実に狙われる。婚約者がいようと構わず手を出すから学院内が乱れるだろうね。それにこの世界を舞台にした乙女ゲームをやっている話を聞いた事があるから、イベントを必ずこなそうとすると思う。そして僕とミハエルを優先して狙うだろうね」

 自分の名前が出てビクリと肩を揺らし嫌そうな顔をするミハエル。口パクで「い・や・だ!」と言っている。

「フィーは何でそんなにアリサ様の事に詳しいのですか?」

 不安そうに見つめるシスティアに、そんな顔も可愛いと頬を緩ませ頭を撫でる。

「前世で親友と一緒につき纏われた経験があるんだよ。その時ベラベラと勝手に話していたのを覚えているだけ。ティアが心配するような事はなかったよ」

 安心させるように額や頭にせっせとキスをすると、システィアも少しホッとしたようだ。

「でもまだ本当に本人か断定できないから様子見かな」

「そうだな。避けれるものは徹底的に避けて1人で行動しないように」

 4人で気を引き締め学生生活を過ごそうとするも、一切関わらないという事は出来ないわけで。

 1か月後、全学年合同の授業で関わる事になる。
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