知らぬはヒロインだけ

ネコフク

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十四話

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 ダンジョン踏破を経て夏休みも終わり、秋深くなる頃に行われる学院主催の芸術祭の準備が始まった。

 もちろ乙女ゲーム言うイベントであるがクエスフィール達はフラグというフラグを折りまくるつもりだ。


 この芸術祭は音楽・絵画・彫刻・魔法芸術の中から1つ選んで披露する催し物だ。しかも芸術の単位や評価がつくので皆力を入れるイベントで絵画以外数人で組むことを許されており、ゲームではヒロインが攻略対象者と組んで魔法芸術を披露するイベントになっている。準備から当日まで一緒に行動する為、好感度がかなり上がるイベントだ。

「ちょっと!何で魔法芸術に出れないの!?」

 ちょうど書類を提出しようと参加申し込みの教室へ行ったクエスフィール4人は、アリサが受付の実行委員に食って掛かっているのに気付き教室の外から隠れてそれを眺める。

「魔法芸術は失敗すると事故に繋がるから魔法鍛錬の先生のサインが無いと受付けられないんだ。1年はまだ魔法技術が未熟だしよっぽどじゃないと許可はおりないと思うよ。それと組む人と一緒に来ないと書類は受付けないからね」

「こんなのゲームでは無かったわよ!何で!?」

「前に人気がある生徒の名前を勝手に書いて提出した生徒が多数いてね。本人が居ないと受付けられなくなったんだよ。だから君もここに書いている人を連れて来て受付けしてくれるかな」

 受付けの生徒が書類を突き返すも、それを受け取らずアリサは教室から出て行ってしまった。教室のすぐ外にいた4人は隠れる事も出来ずに壁に向かって張り付く事しか出来なかったが、怒りで視野が狭くなっていたアリサに気付かれる事はなかった。

「危なかったー」

「うん、でもこれでフラグは2つ折れたはず」

 クエスフィールの言う2つのフラグとはヒロインが魔法芸術に出る事と攻略対象者と参加する事。
 魔法芸術に関しては安全を期す為に元々先生のサインが必要だったが、参加については本来代表者が書類を提出すればいいだけだったのを王族ミハエルの名前を書いて勝手に出す生徒がいるかもしれないと掛け合い、揃っていないと書類を提出出来ないようにしてもらったのだ。ついでに大げさに話すように実行委員に頼んでおいたのは、納得しないながらもアリサを撃退するのには役立ったようだ。

「彼女先生からサインを貰ってきてミハエル様やフィーに迫ったりしないでしょうか」

 不安気なシスティアをクエスフィールは抱き寄せ安心させるように腕を擦る。

「授業をサボっている人に先生はサインを書かないよ。もし迫ってきても芸術祭は1人1種、書類を出して受理されれば堂々と断れるから」

「そうそう、登下校さえ気をつければ棟が違うから普段会うことは無いからさ」

 クエスフィールとミハエルの言う通りアリサはサインを貰えず、高位貴族と下位貴族の授業を受ける棟が違い会えず、かつ魔法芸術を練習している場所に突撃しようにも危ないからと入口から入れず結局どれにも不参加になり芸術の単位を落とすことになった。
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