何やってんのヒロイン

ネコフク

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番外編(王子側視点)

さらばヒロイン

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 学園も卒業し、侯爵家の仕事を覚える為という理由をつけ速攻前もって整えていた侯爵家の部屋に居を移す。勿論マユリカの隣の部屋である。

 もう結婚式も近いしちょっとだけ味見してもいいかなー?と思ったが、使用人が必ずマユリカの側にいて過度なスキンシップをしようとすると咳払いが聞こえてくるのでサリエルは諦めた。

 どうやら侯爵が指示しているようだと察し。

 サリエルが臣籍降婿して甥が5歳になったら王位継承権を返上予定だがまだ王族。王子の婚約者が結婚式前に妊娠してしまったら同じ家に住んでいても、不貞を疑われてしまう。

 何で同じ家に住んでるのに不貞?って思うかもしれないが、王族の婚姻には未通が絶対条件だからだ。相手が婚約者でも周りはそう見ないという事なんだよ。貴族だとそこまで厳しくない。

 3ヶ月後には結婚するしそんな危険を侵す必要ないし、王子としての残りの仕事をさばくのと結婚式の準備で忙しすぎる日々を送っているから、無理矢理隙を見つけて・・・・・・とはならない。

 婿入りして一臣下になるサリエルは王族としての機密仕事はしなくなる。仕事の申し送りで王太子である兄の所と細かな調整が大変で週の半分は王宮に登城している。

 サリエルの分を王太子であるティリエルがやらなくてはいけなくなるが、サリエル付きだった文官がそのままティリエルの所へ行くので大丈夫だろう。サリエル自身も当分サポートするつもりでいる。

 そんな忙しい中でも時間を捻り出して週に数回マユリカとお茶の時間を過ごし、結婚式や領地経営などの情報の共有をしている。その時にそう言えばマユリカに話をしていなかったなと話を切り出す。

「そういえば2年連続入学出来なかった令嬢が、今年やっと入学したようだよ」

「あら、入学出来たのですね」

 ティーカップを優雅に置いたマユリカが目を軽く見開き驚いている。今までの事を聞いていたらそんな反応になるだろう。ただ自分達は卒業してしまったし関わらないからそこまで気にはしていなかったようだ。

「しかし彼女凄いね、入学して1か月で北限の修道院に送致する事が決まったよ」

「あー・・・・・・」

 北限の修道院、別名『花園』。脳内花畑令嬢が詰め込まれる場所だ。

 大抵の花畑はそこで過ごし教育を受けると枯れるのでそこから出る事が許されるが、今回修道院に送られるユリヤは男爵令嬢になってからの生活の乱れと、入学試験でのやらかしや入学してから「何で攻略対象が誰もいないのよ!」や「王子は!?公爵子息は!?ワンコ系子息は!?逆ハーレム出来ないじゃん!」など意味不明な事を言い、「てか高位貴族の男誰もいないってどういう事!?」という言葉で花畑令嬢認定され修道院送致が決まった。

 勿論ユリヤを引き取った男爵家への迷惑と不利益も上乗せされている。ユリヤの処分を言い渡しに行った者が「やつれた夫妻共に泣いて喜んで感謝されました」と言っていたので、かなり限界だったのだろう。後で効率が良い仕事を回してやろう。

「ちなみに例の令嬢、S級お花畑として一生修道院から出られないから」

「ブフォ!」

 あ、噴いた。S級って・・・とナプキンで口元を拭きながら肩を震わせている。どうやら『S級お花畑』というワードがツボに入ったらしい。

「これでマリーの憂いもなくなったでしょ」

 にっこり笑って言うとマユリカはバツが悪そうに目を逸らす。

 多分この一言で色々バレていたのを察したのだろう。ユリヤの不可思議な発言や、マユリカがユリヤを注視していたかなど分からない事もあるがサリエルは聞く気はない。

 理由は分からなくてもマユリカが不安に思っている事を知ってそれを取り払うだけ。敵意あるものは排除するのみ。

 全てはマユリカののんびりまったり生活の為だ。

「サリーのそういうトコ好きよ」

 自分の黒い部分を知ってもなおそう言ってくれるマユリカの事をサリエルは好きだ。

「じゃあご褒美ちょうだい」

 隣に座ってマユリカの手をにぎにぎして期待の眼差しを向けると、チュッと触れるだけのキスが。

 は じ め て マ ユ リ カ か ら の キ ス

「後は結婚式の後でね」

「あ~~~早く結婚したい!」

 もう辛抱たまらん!と抱きつき額を肩にぐりぐりすると、クスクスと笑いながら抱きしめ返してくれる。

 早く結婚式!初夜!初夜!と逸る気持ちを抑え込むサリエルだった。





 ーーーーーーーーーー


 これで番外編(王子側視点)は完結です。

 次に少しだけ小話を載せて終わりです。
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